洞窟のボス・・・洞窟のボス???
「あれが最奥ですかね?」
「あ、あぁ。多分そうだろ」
結局あの後、10分ほど魔物を殲滅しながら最奥を目指してやっと辿り着いた。
アルベリオンがめちゃくちゃ荒い移動の仕方をするから、酔いまくってかなり調子が悪い。
この洞窟の最奥には黒い装飾で飾られた荘厳な扉があった。
世界観は・・・?
さっきまで大洞窟を進んでいたのに唐突にダンジョンのボス部屋みたいな扉が出てきたんだが。
「世界観ぶち壊れですね」
運営が用意したはずのAIでさえそう言っているのだ。
おかしいのは俺の価値観ではなかったようだ。
それにしてもなんでこんなところに扉が?
・・・あれ?もしかしてここって未発見のダンジョンだった?
もしそうなら気づくのが遅すぎた。もう攻略目前なのだが。
いや、これは運営が現在地的な機能を作ってないのが悪い。それとダンジョンなんだったらもう少しわかりやすくしろ。
「それにしても作り込んでますね。こんなにも美しい扉があるなんて思ってもみませんでしたよ」
「それは俺もそうだから。あんな扉見たこと・・・あったわ」
そういえば砂漠の遺跡の最終層でこんなものを見たことがあったわ。
なんかデジャヴを感じたのはそれが原因か。
「ほら、見たことあるじゃないですか?」
「う、すまん」
アルベリオンはジト目で俺を見てくる。
・・・あれ?なんで俺謝ってるんだ?
アルベリオンは人を謝らせる天才かもしれん。
そんなことを思いながら、俺たちはその扉を開く。
途端、視界が白色に染まる。
◇◇◇◇◇
「ジン様!大丈夫ですか?」
「ああ!俺は大丈夫だ。それにしてもここはどこだ?」
俺たちが立っていたのは洞窟ではなく、ローマのコロッセオのような場所だった。
「来たか。侵入者たちよ」
キョロキョロと周りを見渡していると、正面から声が聞こえる。
「誰だ?」
焦って正面を見ると、そこに座っていたのは巨大なゴーレム。
立ち上がると25mはあるんじゃないだろうか。
今はあぐらをかいているにも関わらず、高さは15mを超えている。
・・・世界観は?(2回目)
洞窟のフィールドのボスがゴーレムってどうなってるんだよ。意味わからんだろ。
「世界観が・・・」
「うむ、それは私もそう思う。私がここに配置された理由がわからない」
おいおい、ボスですら世界観がおかしいって言ってるぞ。
このゲームは世界観は重視していたんじゃなかったのか。本当に毎回調子を狂わされる。
「あ、やっぱりそう思うよな?」
「あぁ、これでは世界観もあったものじゃないよな」
「そうだよな!」
「「なんだこのゲーム」」
うーん、こいつとは気が合いそうだ。正直これから倒すのが惜しいくらい。
だが、そんなことは口が裂けても言えない。
なんでって?
隣にいるアルベリオンが今すぐ戦いたいオーラと殺意を隠すことなく滲み出しているからだよ。
会話の節々でも巨大ゴーレムもチラチラ、体を震わせながらアルベリオンのことを見ていたからな。
その殺気は尋常ではないだろう。
「ふ、ふふふ。殴りがいのありそうな魔物ですね」
「と、ところで君の相方はどうしたのだ?様子がおかしいようだが」
「え、ああ。これは目の前に殴りがいのある魔物を見つけたからだな」
アルベリオン、実は結構バトルジャンキーなんだよな。
最奥に向かう時でも近くに魔物の反応があったら急にルート変更して狩りに行くほど。
そのせいで俺の中枢神経がボロボロになったのだが。
「ま、まじ?」
「大マジ」
「そうか・・・。先ほどからありえないほどの殺気を向けられているとは思っていたが、本当だったか」
「焦ったいですね。始めますよ。どうせ戦わないといけないんでしょう?」
「そ、それはそうだが」
最後まで言い切る前に、アルベリオンはその脚力で巨大ゴーレムに猛スピードで突っ込み、蹴りを放つ。
「うおっ!速いな!」
「っ!硬いですね!」
が、その一撃はしっかりと手でガードされる。
すげーな。アルベリオンの攻撃を手だけで防いだぞ。
一体どんな素材でできているのだろうか。
「じゃあ、今度はこっちの番・・・ってあれ?」
今度は巨大ゴーレムが攻撃に移ろうと手を振り上げたが、もうそこにアルベリオンの姿はない。
「後ろがガラ空きですよっ!」
完全にアルベリオンを見失った巨大ゴーレムは後ろから放たれた強烈な蹴りに気づけなかった。
ガラ空きになった頭を後ろから思いっきり蹴られる。
「ごへっ」
「おぉっ!ナイスアルベリオン!」
俺はその攻撃を見て大声で褒める。
え?俺は何かしないのかって?
アルベリオンのほうが強いのに、なんかすることあるか?足手纏いになる未来しか見えないんだが。
俺の役割ってヘイト管理だけだと思うのだが、相手は知性のある魔物。おそらく特に効果もなく終わるだろう。
というわけで、俺はマップの端からアルベリオンと巨大ゴーレムの戦いを見ているだけなのだ。
「なかなかやるな!」
そう言ってゴーレムはその巨大な手を高速で振り回す。
その大きすぎる質量と、素早さによって周囲に弱い竜巻がいくつも発生する。
「チッ、面倒臭い」
「いや、全部避けてそんなことを言われてもな?」
俺はこっちに来た竜巻に飲まれながら、そんな会話を聞く。
「そ、そんなことより助けてくれ〜!目が回る〜」
「「・・・」」
な、なんだよ?
なんで2人してそんな可哀想な目で俺のことを見るんだよ。
「なあ、お前の主人って・・・」
「そうなんですよ。実は・・・」
あ、こら!絶対今俺のこと貶してるだろ!
聞こえてこなくてもわかるんだぞ!
くそう。なんで俺がこんな目に遭わないといけないんだ。
「っと、こんな話してる余裕はないんでしたね」
「む?それもそうだな」
と、俺がいまだに竜巻に巻き込まれてぐるぐるしている間に、両者仕切り直して戦いを始めるようだ。
だ、誰か俺を助けてくれ〜!
後書き
ジン、寄生プレイヤーになってしまう。
お前はそれでいいのか、ジン。
お前は主人公じゃないのか、ジン。
ジン「よくねえよ!」




