トッププレイヤーの実力
「ジン、お前子供みたいだな」
俺がバルドの背中に背負われていると、アカネが笑いながら俺を見る。
「うるせー、俺だって困ってるんだよ」
俺は高校生なのに身長が160cm弱と、同年代の中ではかなり低い方だ。
「はっはっは!そうかそうか!それも困り事だな!」
それを聞いてさらにアカネは笑う。
くそ、こいつ俺のこと子供のことを見る感じで見てやがるな。
「はぁ、話してる時悪いが敵だぞ」
侮辱(脳内変換)されて悔しがっていると、バルドが前を指差しながらため息をつく。
「お、そうか。じゃあ今回は私がやっていいか?」
敵はホワイトウルフが3匹。それを確認したアカネが一歩前に出る。
「おう、わかった。じゃあ俺たちは後ろで見とくな」
それを聞いたバルドは俺を抱えたまま、後退する。
「え、大丈夫なのか?ホワイトウルフはそこそこ強かったはずだが」
俺はホワイトウルフ3匹に対してアカネ1人だけで勝てるのか心配になり、そんなことを口走る。
「まあまあ、見ておけ。仮にもトッププレイヤーだ。これくらい造作もない」
が、そんな困惑をよそにバルドはどんどんと後退していく。俺は徐々に遠くなっていくアカネのことを確認しようと目を凝らす。
「さぁ、やろうか!犬っころ!」
アカネはテンションが上がって口角が吊り上がっていた。
「グルア!」
ホワイトウルフも負けじと声を出し、その圧倒的な脚力で高速移動を始める。
「ふはは!お前らはそれしか出来ないのか?展開!【灼熱地獄】」
が、アカネもそれを許すほど弱くはない。
スキルを使うとアカネの足元から、マグマのように粘性の炎が湧き出てくる。
ジュウゥゥ!
マグマに触れた雪が一瞬で水に変わったかと思えばすぐに蒸発し、辺りは真っ白な蒸気に包まれる。
「おいおい、なんだよあれ」
「あれはアカネの使うスキル【灼熱地獄】だ。使用すると自分の足元から粘性の炎が出てきて、半径約5mを焼き尽くす」
俺がその威力に開いた口が塞がないでいると、バルドがすぐさま解説を入れてくれる。
なるほど、意味わからんな。魔法職も極めればあそこまで化けるものなのか。
「キャンッ!」
その熱さにやられたのか、ホワイトウルフ達が声を上げながらその場を離れる。
「はっはっは!離れたら攻撃はできないぞ?【多重詠唱】【ファイアーボール】!」
それを好機と捉えたのか、アカネはすぐさま100を超える半径30cmほどの火球の弾幕を張り、射出する。
・・・100?俺の知ってる魔術師はその攻撃1個しか出せなかったのだがな。おかしい。
「キャウンッ!」
ホワイトウルフはその攻撃を必死で避けようとするものの、流石に100を超える弾幕は避けきれなかった。
1匹、1匹、また1匹と被弾していき全滅してしまった。
「【灼熱地獄】解除」
アカネがそう呟くと、渦巻いていた炎が消える。
「はっはっは!どうだジン?これが私の力だ」
そんな放火魔もびっくりな戦闘を繰り広げていたアカネがそんなことを言いながらドヤ顔で戻ってくる。
「やばいな。まさかここまで強いとは」
「そうだろうそうだろう!まぁ、今回はちょっと張り切り過ぎてしまった節はあるがな」
俺が正直に褒めると、嬉しそうな顔で頷く。
「おい、もう進むぞ。次敵が出てきたら今度は俺がやる」
バルドが俺とアカネが盛り上がってるのを見て、少しむすっとしながらまた進み始める。
「なんだバルド?構ってもらえなくて悲しいのか?」
「いや、別にそんなことはないが」
アカネがニヤニヤしながら揶揄うも、バルドは飄々とした態度で進んでいく。
「構ってほしいなら言えばいいのにな。ほら、うりうり〜」
「やめろ、鬱陶しい」
が、そんなことを一才気にせずアカネがバルドの頬を指でツンツンする。
それをバルドは拒絶はするものの、まんざらでもない表情だった。
そしてそんなじゃれつくリア充の間に挟まれる俺。
・・・おかしいな。俺は攻略隊と山間部を攻略するはずだったのだがな。いつの間にカップルの引率になってしまったんだ。
「なんだお前ら、デキてるのか?」
「「え・・・」」
俺が冗談まじりにそう聞くと、2人ともが『なんでお前が』みたいな顔で俺の方を振り向く。
「え?まじでデキてんの?」
もっと笑い飛ばしながら『誰がこいつと』みたいな感じで返ってくると思っていた俺は冷や汗を流す。
「ぷっ、ははは!なんでそんな焦った顔になってるんだ?私たちがデキてるはずないだろう!」
「そうだ、こんな奴と一緒なんて一生御免だ」
俺が変な冷や汗を流していると、耐えきれなくなったのかアカネが吹き出す。
「おいおい、やめてくれよ。それならなんでそんなガチそうな顔で振り向くんだよ」
「はっはっは!すまないな!これは私たちの取り決めみたいなものでな。付き合ってるのかって聞かれたら、できる限り相手を騙そうとするようにしてるんだ」
なんだその取り決め。おかげで完全に俺も騙されてしまったじゃねーか。
「俺たちは腐れ縁ってやつでな、こういう遊びもたまにするんだ。とはいえ、結局いつもアカネが我慢できなくなって最後まで騙しきれないんだがな」
「いつも騙されてる奴の顔が面白くてな!我慢できなくなるのだ」
と、アカネが笑いながらバルドの背中、もとい俺の背中を叩く。
今も俺はバルドにおんぶされている状態だ。だから、バルドの背中を叩こうとしたら必然的に俺の背中を叩くことになる。
「全く。変な汗かかせるなよ。冗談混じりに言ったのにそれが地雷だったら困るだろうが」
「すまないな!とはいえ、ジンの顔も傑作だったぞ!」
「それとこれは関係ないだろ」
俺はため息をつきながら、疲れた顔でそう返す。
「おい、敵だ。おろすぞジン」
と、そんな他愛もない会話を楽しんでいたらバルドの声のトーンが下がる。
それと同時に俺もバルドの背中からおろされる。
「じゃあ、ここで見てろ。今度は俺が行く」
そう言って、バルドは剣を抜いて先に進んでいく。
バルドの前にはホワイトウルフが5匹。先ほどより急に匹数が増えた。
「グルル!」
ホワイトウルフもバルドを察知したのか、全頭が動き始める。
「あいにく俺は、アカネみたいに派手な戦いはできないのだがな」
そう呟いて、バルドは目を閉じる。
「グルア!」
それを好機と見たのか1匹のホワイトウルフがバルドに襲いかかった。
「お前らは相変わらず単調だな」
刹那、ホワイトウルフの体が真っ二つに裂かれる。
「おい、今のなんだ?」
俺はなんの攻撃をしたのか視認できなかったため、アカネに何があったかを聞く。
「ん?ただの斬撃だぞ」
「え?マジで?」
「大マジだ」
どうやらバルドは普通の斬撃を放っただけらしい。
まじか。振るの早過ぎだろ。マサキの斬撃はまだ視認できたのに、バルドのやつは全然確認できなかったぞ。
「グルア!?」
仲間がやられたことに動揺したのか、もう1匹のホワイトウルフが一瞬速度を落とす。
「隙だらけだぞ」
そしてその隙を見逃すほどバルドも甘くない。即座に後ろに回り込み、剣を振り下ろす。
「キャンッ!」
当然、その不可視の攻撃を避けられるはずもなく、そのホワイトウルフも倒される。
「グルア!」
一瞬で仲間が2匹やられたのに流石に危機感を覚えたのか、リーダー格と思われるホワイトウルフが声を挙げる。
その声を皮切りに、3匹のホワイトウルフが一斉に背を向ける。
「おいおい、逃げるのか?隙だらけだぞ。【乱れ斬り】」
が、その判断はあまりに遅かった。
バルドは即座に後ろに回り込み、一刹那の内に3回剣を振るった。
「「「ギャンッ」」」
少し遅れて、ホワイトウルフが3匹ともが断末魔をあげ、体が真っ二つに切り裂かれる。
「よし、こんなもんか」
そう言いながらバルドは素材を拾った後、こちらに戻ってきた。
「バルドもやべーな。全然剣が見えなかったぞ」
「そ、そうか?それは良かった」
俺が素直に褒めると、嬉しそうにしながらもバルドはそっぽを向く。
「あー、すまないな。こいつは褒められることに慣れていないんだ。なあ、バルド?」
「うるせー」
と、アカネがニヤニヤしながらそんなことを言うと、バルドはさらに顔を背ける。
なるほど、ツンデレってやつか。
見た目がムキムキで、ツンデレなのは果たして需要があるのだろうか。
・・・まあ、一部層には刺さるかもしれないな。
と、そんなしょうもないことを考えながら俺たちはさらに奥に向かっていくのであった。
後書き
まずいぞジン。ツンデレキャラがバルドに取られてしまう。
ジン「いや、俺はツンデレじゃねーから」
いやいや、お前はツンデレだろ。もっとその要素を全面に出していけばいいのに。
「断固拒否する。なんで俺が運営だけじゃなく作者にも命令されないといけないんだ?」
確かに男のツンデレは需要がないかもしれないけど絶対にそうした方が良いって。
「嫌だね。なんで俺がそんなことをしないといけないんだ」
えぇい!作者パワー発動!
「んなっ!?」
よし、ジン読者に挨拶を。
「読者さん達、こんばんは。これからもこの作品をよろしくな。・・・べっ、別に俺は読者のことをいつもありがたいと思ってるわけじゃないんだからなっ!」
・・・なんか違うな。まあいいか。
と言うわけで、今回はここまで。
これからもこの作品をよろしくお願いします。
また次回お会いしましょう。
ジン「許すまじ作者」




