山間部:上層2
俺はホワイトウルフを倒した後、さらに深みを目指していた。
ある一定のラインを超えてからは景色も雪まみれで対して変わらず、特に面白みのない探索になっていた。
流石に雪でテンションが上がるとはいえど、何十分も見ていたら飽きてくるものだ。
さらには、俺のスピードが遅いというのもまた面白みのない探索の要素を強めていた。
うーん、ステータス振り分け自体には後悔はないんだけど、スピードだけは問題だな。何かAGIがなくてもスピードが上がるようなスキルとかないだろうか?
俺は一度立ち止まり、休憩するついでにスピードの上がるスキルはないか探してみることにした。
幸い俺はマザーフロッグ一行を倒したおかげでスキルポイントは大量にある。欲しいスキルがあればほぼ間違いなく取れるだろう。
数分ほど探してみると、まさに俺が求めていたようなスキルを見つけた。
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スキル名:歩法[初級]
レベル:1
説明:歩くのが上手になる。AGIに依存せず、AGIが低くてもこのスキルのレベルを上げればある程度までは移動速度が速くなる。
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歩法という剣の道を極めた人が使いそうなスキルだ。このスキルを持っていることで歩くのが上手くなる。さらにAGIに依存せず、歩き限定で速度をある程度まではあげることが可能らしい。
俺は迷わずこのスキルを入手する。
《スキル【歩法[初級]】を入手しました》
それにしてもこのスキル初級とついてるが、もしかして進化したりするのだろうか。もし、進化できて極めれるのなら極めてみたいものである。
ほら、相手の後ろにフッと移動して『遅い』とか言ってみたいのだ。
おじいちゃんの剣士キャラがよくやっているイメージがあるが、それはこの際どうでもいい。俺は男なのだ。かっこいいことができたらそれでいいのである。
と、俺はこのスキルを取ってからもう一度歩き始めてみる。
すると、先ほどとは微妙に進むのが速くなっていた。
まあ、言われてみればって感じか。流石に取ってすぐに速くはならないよな。
俺はちょっと残念に思いながらも、歩き始める。
とはいえ、なんといえばいいだろうか。歩いている時の無駄な動きが少しだけわかるようになった気がする。
まあ、あくまで気がする、程度なのでわからないが。もう少しレベルが上がればわかるかもしれないな。
が、流石にレベルを限界まで上げるほどスキルポイントを使うのは怖い。それで全然変化が今と変わらなかったら絶対後悔するだろうからな。
・・・そんなことを言っていたらスキルポイント使うの忘れそうだな。
確かにスキルポイントは貴重だ。とはいえ、エリクサー症候群になってしまってはいけないのである。
俺はとりあえず、このことは頭のメモに書いておいてとりあえず山を攻略してから考えることにする。
そんなことを考えながら進んでいくと、天気が変わり始めた。
先ほどまではかなり気持ちの良い快晴だったのが、徐々に雲が厚くなり始めていたのだ。
そして、その違和感に気づいてからは天候の移り変わりは顕著だった。
最初の1分ほどは、今にも雪や雨が降りそうな分厚い雲が空を覆っていたのだが、すぐに吹雪になってしまった。
それに伴って視界も悪くなり、3m先ほどまでしか見えなくなってしまった。さらには、俺の体に払っても払っても雪が積もるようになってしまった。
おぉ、これがホワイトアウトってやつか。テレビでしか見たことがないから新鮮だ。確かに視界がめちゃくちゃ悪くなるな。
そんな呑気なことを考えている間も、天候はどんどん悪化していく。
結局最終的には視界は1m先がギリギリ見えるくらいまで狭まってしまった。
山の天気は変わりやすいとはよく言うが、まさかここまでとは。
俺はその急激に変わった天気に驚きながら、移動を止める。こういう時は無理に行動したらいけないと、どこかのネットで見たことがあった。
うろ覚えだが、無理に動いてもぐるぐる回転したり、変な方向に移動して遭難したりするはずだ。
とはいえ、ここでぼーっとしていても降り乱れる雪によってすぐに埋まってしまうだろう。
幸いにもルーンの効果によって寒さは感じない。こういう時は寒さも敵になるのだろうが、今回はそれは考慮しなくても良さそうなので助かる。
俺はなんとか、埋まらないように常に動き続ける。
・・・果たしてこれが正解なのかは分からないが。
いや、多分正解ではないのだろう。とはいえ、ここはゲーム登山用の装備でこの山に挑むプレイヤーは少ないだろう。
このゲームは別にリアルな登山をするゲームではなく、敵と戦うゲームだ。
それを考慮すると、おそらくだがこの天候の悪化もすぐに終わるだろう。流石にこのまま続くとは思えない。
◇◇◇◇◇
えー、あれから20分くらい経ったが、いまだにホワイトアウトは続いている。
マシになるとかいった雰囲気は全く感じられない。俺も疲れてきて、今は膝くらいまで雪が積もってきている。
まじかよ。このゲームRPGのはずだよな?本当にこのゲームの運営はこういったどうでもいいところばかり凝るんだから。
運営はこのような環境系は妥協せずにしているということを完全に失念していた俺は、予想を外して非常にまずい状態に陥っている。
自力ではすでに抜け出せそうにない。もはや、今すぐ雪が止むことを祈るしかないだろう。
詰んだか、と思っていたら声が聞こえた。
「おーい、大丈夫か?」
後書き
ジン、運営のリアル性への執着を見誤る。




