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ダメージ?そんなのくらってなんぼでしょう~HP極振りの行くVRMMO~  作者: まあ
第二の街イルン

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田中の苦難

 時は少し遡り、田中の部屋にて。


「ふぅ、ここ最近は激動の日々だったな」


 俺は田中。ULOの部長兼開発責任者だ。ここ最近はジンとかいう俺たちにとって都合の悪いことばかり起こすプレイヤーのせいで、2日ほどまともな生活をできていない。


 だが、今日の午前中の時点ではまだ何も報告がきていない。


 だから、俺は今2日ぶりの昼のティータイムを行っている。


 あ〜、この時だけが俺の至福の時間だ。


 そんなことを思いながら紅茶を飲んでいると、


 バン!!


 俺の部屋の扉が強く開かれる。


 俺はなんとなくこの後起きることを予想して、ため息をつきながら重たい顔を上げる。


 するとそこにはやはり、疲れた顔をしている部下の伊藤がいた。


「おいおいおい、もういいだろ」


 俺はこの後に起きることを予想して頭を抱える。


「田中さん、またジンがやらかしました」


 はぁ〜、またこいつか。何回俺を苦しませたら気が済むんだ。


「今度は一体何をやらかしたんだ?」


 俺は少しでも解決しやすい問題をやらかしていてくれ、という淡い希望を抱きながら聞き返す。


「えーっと、1ヶ月後くらいにイベントを企画してましたよね?スタンピードを起こすやつ」


 あー、そういえばそんなのもあったな。でもそれはまだ成長段階で基本的には入れないようにしていたはずだ。


「非常に言いにくいんですが、そのボスであるマザーフロッグ、倒されました」

「へぇ、倒されたのか」





 は?


 あまりにも受け入れたくない現実のために脳が理解を拒んでいたようだ。


「すまない、俺の耳ではマザーフロッグが倒されたと聞こえたのだが、聞き間違いだよな?」


 そう、これはきっと何かの間違いだ。そんなことが起こるはずがない。


「いえ、聞き間違いではありません。マザーフロッグ、倒されました」


 マザーフロッグが倒された。マザーフロッグが倒された。マザーフロッグが・・・


 俺がその言葉を脳内で何度もリピートしていると徐々にそれが言っていることを理解出来てきた。


「えーっと、一応確認なのだが、今度のスタンピードのイベントで用意していたボスが倒されたってことでいいんだよな?」

「はい、間違いないです。それにしても田中さん反応が薄いですね。大丈夫ですか?」


 その時、俺の中で何かが壊れた。


「うがあぁぁ!まじ許さんぞおぉぉぉ!おのれぇぇ!ジン!」


 俺は怒りによってわなわなと震える手で頭を掻きむしりながら絶叫を上げる。


「ただでさえお前のプレイングに翻弄されているのに、イベントまで邪魔するのかああぁぁ!!」


 俺は再度絶叫を上げる。


◇◇◇◇◇


 そして、ここから先の俺の記憶がなくなった。


 次の記憶は、部下数人に何とかなだめられ落ち着いてからだ。


「はあ、はあ、すまない。取り乱した」


 ちなみに、部下に俺が怒りに飲まれている間にどんなことをしていたか聞いてみたのだが、意味のわからない呪詛を言ったり、物を叩いたり、時折絶叫したりとかなり精神に異常をきたしていたようだ。


 まあ、このタイミングですでに俺は2徹だ。そんな時に過度なストレスがかかったことを考えれば仕方ないだろう。


「はあ、それにしても田中さんがここまで取り乱すのは珍しいですね」


 伊藤が疲れた顔をしながらそんなことを言ってくる。


「すまないな。お前にはいつも迷惑をかけてばかりだ」


 伊藤は中学校からの後輩で、今でもこのように俺に幻滅せずについてきてくれる。本当に感謝しかない。


「おじさんのデレはいらないですよ。それよりも対策をしないと」


 伊藤は少し微笑みながら、冗談まじりにそんなことを言う。


「・・・俺は30代だぞ。まだおじさんと言われるには早いはずだ」


 俺のそんなツッコミに俺の周りの殺伐とした雰囲気が少し柔らかくなる。


 俺は場の雰囲気を穏やかにしてくれた伊藤に感謝しながら返事をする。


「それもそうだな。とりあえず幸いにも今回で壊れたイベントはまだ公表されていない。また別のイベントを考えるぞ。ゲーム開発部に連絡。それと変なスキルとか称号とかを持っていないかの確認もさせろ」

「「「わかりました!」」」


 俺をなだめてくれていた数人の従業員が元気の良い返事をしてそれぞれの持ち場に帰っていく。


 俺は良い部下を持った。こんな俺にも親身に寄り添ってくれるとは。


 そんなことをしみじみと思いながら俺も各々の持ち場の監督をするべく、移動を始めた。


◇◇◇◇◇


 田中は元々25歳という若さで超大手企業であるULOを制作した会社に入り、その後たった10年で部長まで上り詰めた実はすごい人なのだ。


 しかも彼は親近感を持たれやすい性格で良くそれぞれの部署に顔を出すため、たくさんの部下から親われている。


 それは対応中の彼を見ればわかるだろう。


「すいません、田中さん。ここなんですけど、こんな感じにしてはどうですか?」

「ん?どれどれ・・・。いいんじゃないか?採用だ。それにしてもよくこんな物を思いついたな。お前はもしかしたら大物になるかもな」


 田中に話しかけたのは新卒で入ってきたばかりの社員。しかし、そんな彼の意見もしっかりと聞き、面白い情報なら採用してくれる。


 田中は部下との信頼関係は非常に大事だと気づいているのだ。


 故に、部下に好かれる。


 だから今回のような降格ものの出来事でも、特にお咎めなしになる。


 彼はその立場の地盤をしっかりと築けている。



 ・・・ちなみにこの後、ある称号の効果が一部にしか反映されていないというバグが発見され、田中がまた頭を抱えることになるのだが、それはまた別の話。

後書き

ジン「へクシッ、あー、風邪引いたか?」

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