今度こそ
俺たちは盗賊戦のあと、戦後処理をしていた。このゲームではNPCは死体が残る。その死体を街道に残したままだと、迷惑になる。
「なあなあ、戦後処理ってどうやってやるんだ?」
が、あいにく俺たちは普通のプレイヤーしかいない。どのように戦後処理するか分からないのだ。だから俺は馬車の御者に聞いてみた。
「あー、普段は魔術師がいるなら燃やして、いないなら山に土葬って感じなんだが・・・」
「え、この死体埋葬しちゃうの?勿体無い!」
土葬したり、燃やしたりすると言うことにエナが反論する。
いやいや、普通はどんなに美味しくても人間は食べないものなんだよ?わかってる?・・・わかってなさそうだな。
俺は半ば諦めながら、エナに問いかける。
「じゃあ、どうするんだ?」
「私がもらってもいい?結構人間美味しかったんだ!できればストックしておきたいって思うほどには」
やはりエナは盗賊の死体を食べるつもりのようだ。俺は周りのプレイヤーと御者に目線を向ける。
「まあ・・・いいんじゃないか?」
「どうせ止めても食べそうだし。むしろここでストックさせることで被害を減らせると考えるとまあ・・・」
「俺は別になんでもいいぜ。助けてもらった身だからな」
満場一致でエナが盗賊の死体をキープすることが許可されてしまった。
「わあ!やったー!ありがとう!」
盗賊のNPC7人の死体全てをエナがアイテムボックスに入れていく。
この場所で食べるとかではなく、ストックするという判断をしてくれたのは不幸中の幸いだったか。割と早く出発できる。
「やっぱりスライム少女だけ、群を抜いて変人だな」
「変人というより、もはや人の枠に収まってるか分からないよな」
「え、まさか人の皮を被った魔物だったりするのか?」
と、他のプレイヤーたちがボソボソと話し合っているが、俺たちの耳には入らない。
「それじゃあ、出発するぞ」
御者の人がそういい、また馬車が動き始めた。どうやら今回の戦闘と、エナの変人っぷりという共通の話題ができたおかげで6人組の仲が良くなったようで楽しそうに談笑していた。
・・・別に俺もあの中に入って話をしたいとか思ってない。べ、別に俺が仲間外れにされてるみたいなんて決して思ってないが?
「ジンさんが相手していた盗賊はどんな感じだったの?」
と、しょうもないことを考えていたらエナが話しかけてくれる。隣にエナが相変わらずちょこんと座っているのを失念していた。
そうだ、俺にはエナがいる。別にあの中に入らなくたって俺は孤独じゃないんだ。
「別に?そんなに強くなかったぞ?」
俺は孤独ではないことを噛み締めながら、エナに返事する。
「へぇ、そうなんだ!この世界の盗賊って皆あれくらいの強さなのかな?」
「それはどうだろうな。やっぱり・・・」
と、俺とエナは街に着くまでの間雑談を始めた。
◇◇◇◇◇
「おーい、そろそろ街だぞ!」
1時間ほどだろうか。馬車の中でエナと喋っていたら、御者が馬車の中に向かって話しかけてきた。
「ん?どれどれ?」
俺たちプレイヤーは馬車の窓を開けて街を確認する。
「おぉ!街だ!めちゃくちゃでけー!」
俺の目に飛び込んできたのは、初心者の街とは比べ物にならない頑丈そうな壁。それと明らかに賑わっている門の前の屋台と、その買い物客。
門の前なのにすでに賑わいを見せているイルンに俺は驚愕しながらも、中はこれよりもすごいんだろうなと期待が膨らんだ。
ん?エナとの雑談は何を喋ったかって?そりゃあ、人間の食レポだよ。せっかく食べて美味しかったんだから人に言わないわけないよね。
人間は驚くことに部位ごとに味が違うようで、例えば腕は馬刺し、足は焼き鳥みたいな味がするそうだ。それ以外にも居酒屋に出てきそうな肉の味がしたそうだ。
おい、運営。絶対に人間を食べる奴なんていないだろって適当に作っただろ。それに部位ごとに味を変えるとか無駄に凝らずに他のところを調整しろよ。
と、思わず突っ込んでしまうほどにはぶっ飛んだ話であった。当然人間の死肉を渡されたのだがこれも魔物の時同様丁重にお断りさせていただいた。
流石に人肉を食べるのはちょっとな。ゲームとはいえ流石に超えてはいけない一線のような気がしてならない。
それと、他に驚きだったのがエナが実は俺よりも年上だったということだ。俺が16で、エナは17だそうだ。俺はてっきり小学生くらいかと思っていたので、この事実を知った時、今までしてきたことを思い出して急に恥ずかしくなって、謝ってしまった。
年上の女性を手でかざして守っちゃったよ。それに付き合い方も明らかに年下の女の子と関わる感じで付き合ってたよ。
エナは元々年齢をかなり間違えられるたちで現実でも普通に小学生と見間違われたりするそうだ。それである程度慣れてしまってるのと、気まづい雰囲気になるのも嫌だということで俺は特にお咎めなく、口調もそのままでと釘を刺された。
いやー、まさかあの喋り方と仕草で俺より年上だとは思わんだろ。完全にしてやられた。今回は不満に思われなかったから良かったが、人によってはこれが地雷だったりするからな。
俺は今回のことで人は見かけによらないと再認識し、今後他の人と関わるときは気をつけないとと頭の中のメモに書き込んだ。
と、そんなことをしていると馬車が止まる。
「よし、着いたぞ」
どうやら街に着いたらしい。俺はこの2時間運転してくれた御者の人にお礼を言い、馬車から降りる。
「鶏肉一本150コインだ!安いぞー!」
「こっちは中級ポーションが一個300コインだ!冒険者には必需品だ。買ってけ買ってけー!」
俺が馬車から降りると至る所から自分たちの商品をアピールする声が聞こえた。
すげーな。最初の街と比べるとめちゃくちゃ都会だ。外壁も分厚くなってるし、門の装飾も豪華だ。とても栄えているように思える。
俺は早速街に入ろうと思ってエナの方を見るが、いない。あたりをキョロキョロと探すと、焼き鳥の出店の前でワクワクしながら待っているエナの姿があった。
エナを置いて街に入るのもなんか申し訳ないと思い、俺はエナに話しかける。
「その焼き鳥買ったら街に入るぞ。ここで買うのもいいけど、中はもっと美味しい未知の食べ物があるかもしれないぞ?」
「え!本当に?わかった!これ買ったらすぐに戻る!門の前で待ってて!」
ここですぐに列から逸れないあたり、エナは本当にエナしてる(動詞)。が、街の中に未知の食べ物があるかもしれないってことを指摘したらすぐに俺についてくると言うのもエナしてる。
・・・それにしてもチョロすぎないか?そんなんだから小学生と間違えられるんじゃないか?俺はエナが将来悪い人に騙されないか心配だよ。
そしてなんで俺はエナの保護者みたいになってるんだ?ソロで楽しんでいたはずなんだけどな。エナと出会ってからなんかなあなあで一緒にいる。
それに、周りの人からの目もなんか暖かいし。なんだ?俺たちのことが兄弟にでも見えるのか?元気な妹とそれに振り回される兄、みたいな感じか。
「ん!モゴモゴモゴ!」
と、なんで俺がエナと一緒にいるのか疑問に思っていたらエナが焼き鳥を3本口に咥えながらこちらに走ってくる。
「焼き鳥を食べながら話さないでくれ。俺はエスパーじゃないんだ」
「うん!この焼き鳥美味しい!じゃあ早速街に行こう!いざ、未知なる食材へ!」
エナは目をめちゃくちゃ輝かせながら、次の食材のことを考えている。
はあ、エナと一緒にいるとツッコミどころが多すぎて疲れるな。流石に攻略が始まってからは一緒にいられないとは思うが。
うーん、それにしても疲れたな。
後書き
ゲーム開発部「どうせ人間食べるやつおらんから、酒のつまみの味にするか。忙しくて酒を飲む余裕がないからこれで気晴らしたる」
エナちゃんは相変わらずです。
エナの現実世界の話は要望があれば早めに書きたいと思います。




