VS灼熱のグレン
その日、フィールドボスをなんとか倒して一次転職を行うことができたグレンは上機嫌に街を歩いていた。グレンは周囲のプレイヤーから初心者狩りと呼ばれていて、街中にいる初心者を脅して資源を取ることを生業にしていた。
「誰か良い獲物いねーかな?」
そう言って周りをジロジロと見回していた時、ベンチに座って何かのアイテムを使おうとしている少年を発見し、その少年に話しかけに行った。当然この頃のグレンはこの後どん悲劇が起きるかも知らなかった。
◇◇◇◇◇
《プレーヤー名ジンvsグレンの決闘が確認されました》
《ジンは賭けで【スキルスクロール】を提出・・・受理》
《グレンは賭けでこれまでの経験値全てを提出・・・受理》
《特殊フィールドへ転送します》
そうして俺とグレンは決闘用のフィールドに転移してきた。そこはコロシアムの様な半径15mほどの円形のフィールドで、その周りには観客席があった。
・・・なぜか満員になっているが。
「うおー!ジン!その生意気な奴をやってしまえ!」
「いやいや!グレン!今回も圧倒してくれよ!」
「ぶっ飛ばせー!」
「ボコボコにしろー!」
「「「うおー!!!」」」
大量のプレイヤーがこの勝負を見にきているようだ。こんなにグレンってやつは人気なのか?あんなチンピラみたいなやつなのに。
「おう!今回もボコボコにしてやるぜ!」
と、グレンは呑気に観客席に返事している。
「おい、そろそろ始めるぞ」
「ん?初心者が俺に口答えか?」
「いや、俺初心者じゃねえから」
「ぷっ、初心者じゃねないって?いいぜ、見せてみろよ」
「はいはい、見せてやるよ」
《決闘を開始します》
そのアナウンスを皮切りに一気にグレンが床を蹴って、距離を詰めてくる。両手の拳は赤い炎が燃えている。
「先手は俺から行くぞ!」
俺は自爆をここで切るか迷ったが、まだ喰らっても死なないと踏んでこの攻撃を受ける。
グレンは自分の攻撃を避けようともガードしようともしない俺に少し驚いた顔をしたが、そのまま腰を入れて殴ってきた。
ドォォン!
俺はそのまま吹っ飛ばされて、フィールドの壁に叩きつけられる。
「おいおい、ガチの初心者じゃねえか。俺の攻撃をガードすることも避けることもなかったぞ」
と、明らかに勝った気で俺のことを舐めまくってポーズを決めたりしていたが、アナウンスが一向に聞こえていないことに違和感を覚えたのか怪訝そうにこちらを見てくる。そして俺を見て驚愕する。
「は?なんで俺の攻撃を喰らって生きてんだよ?明らかに今のは死ぬ一撃のはずだっただろ?」
「あー、そうだな。確かにお前の攻撃は重かったよ。でも、俺は特殊なビルドでな、その程度じゃ死なないんだよ」
「でも、俺の拳についた炎でお前の体が燃えてるんだが?」
そう、こいつの攻撃には炎属性もついているようで攻撃を喰らうと物理ダメージだけではなくスリップダメージも食らうようになっているのだ。なかなかにえげつない。
「そんなことより、自分のHPでも見てみたらどうだ?」
「は?なんでだよ」
と、若干不満そうにしながらもグレンは自身のHPを確認する。そして、さらに驚愕の表情を浮かべる。
「おい!なんで俺のHPがこんなに減ってんだよ!しかも今もずっと喰らってるんだが?」
「それはお前が俺に火傷のスリップダメージを与えてるからだろ?」
「は?お前に攻撃したら俺にもダメージが入るのか?チートだろ!?チート!」
どうやらこのスキンヘッドは馬鹿そうに見えて読み込みは早いらしい。自分が反射ダメージを喰らっていることにさっきの言葉で気づいた。
「おい!このダメージを止めろ!初心者ごときが俺に勝っていいはずがないんだよ!」
「往生際が悪いな。お前は俺に攻撃した時点で死ぬことが確定してたんだよ」
と、少しドヤ顔で言ってみたものの、実はそんなにHPが残っていないのは秘密である。
ただ、スリップダメージよりも回復量がわずかに上回っているのでこの状態では死ぬことはない。なので、俺はこのままスリップダメージだけでこいつを倒しても良かったのだが、面倒なので自爆で終わらせることにする。
「【自爆】」
「あ・・・」
十分に近づいてから俺は残り少しの体力を使用して自爆を起動。これによりグレンのHPは完全に消失決闘は終了した。
《決闘が終了しました。勝者はジン》
《フィールドからの強制退去を始めます》
《敗者から賭けの対象を徴収します》
《一次転職済みなので転職前の分の経験値まで徴収しました》
《賭けの品を勝者に譲与します》
《レベルが上がりました》
《称号【全てを奪ったモノ】を獲得しました》
「あ、ああぁぁぁ。俺の、俺の、レベルがぁ!やめろ!やめてくれぇ!」
と、グレンが何か言っていたが俺はこれを無視。向こうからふっかけて来たのだからこれくらいは起きて当然である。因果応報。南無。
そうして、小さなハプニングも終わり、俺は今度こそはとスキルスクロールを使うべくその場を離れて行った。
後書き
グレンは実は現実では5歳児と3歳児の父。愛妻家でよく妻と子供と一緒に休日旅行に行ったりしている。ゲームの中なのでどうせなら現実でできない自分になろうと悪役のロールプレイングをしていたのだが、道を間違えてしまった。ジンがそれを知るのはまた別の話・・・




