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第7話:エーギル殿、そちらのドラゴンは?


 ひとまず王都を徒歩で目指すことになった俺たち。

 

「王都まではどれくらいかかるんだ?」

 

「馬車で1ヶ月くらいかな。でも馬車が使えないからそれよりかかりそうだ」

 

やっぱり飛ぶか、と呟いたらエーギルに慌てて説得された。 

「まあまあ……歩いたほうが色々楽しめるし、街で美味しいご飯食べられるかもよ?1ヶ月ちょっとならあっという間さ。頑張ろう」


「……食前の運動だと思えばいいか。森でお前を乗せて走るぐらいならばいいだろう?」

 この世界の料理をまだ食べたことがないので、気になって仕方がない。

 

「そんなにご飯早く食べたいの?ん〜走るぐらいならいいか。……あっちの方にラルツィレの街がある。ちょうど調査依頼も受けていたから、その報告もしておきたいんだ」

 


 森を抜けたのは夕方ごろだった。

 森を抜けてすぐのところでエーギルを下ろした。

 なんだかんだでエーギルは俺とのドライブを楽しんでいた。馬よりも速いと喜んでいた。河を泳いで渡る時が一番子供のようにはしゃいでいた。早くこいつを乗せて空を飛んでみたいものだな。

  

 丘の上で夕食を食べながら休んでいると、通りすがりの旅人が俺を見て固まっていた。

 

「ドラゴンはまず平地では絶対見かけないぐらい珍しいからね。仕方がないよ。」

 エーギルが先手を打って営業スマイルで挨拶しに行く。

  

 旅人はドラゴンの後ろから現れた光の勇者の姿に、ますます口を大きく開けていた。

 エーギルが多少世間話をしてやると気がほぐれてきたのか、旅人の表情が和らいできた。

 旅人は無害そうな雰囲気の青年だった。商人の家の出で、商売の知見を広げるために世界を渡り歩いているという。


  

「あの……エーギル殿、そちらのドラゴンは?」


「俺の友達です。ちょっと色々あって仲良くなりまして……クロっていうんです」

 拾ってきたペットみたいな紹介をするな。

 もうちょっと威厳のある名前にしておけば良かったか?

  

「ともだち」旅人が形容し難い表情を浮かべる。

 

 俺は自分の姿をまだきちんと見たことがない。エーギル曰く、相当邪悪な見た目をしているらしい。

 そんな邪竜が勇者と友達なんて、にわかには信じ難いだろう。俺もこの旅人の立場だったら、同じ顔をしていたと思う。勇者が騙されていないか、ちょっと心配してしまうだろうな。

 

 どれ、エーギルの名誉のためにも助け舟を出してやるか。

 

「……我はそこな勇者と三日三晩戦い、こやつを気に入ったのだ。何か文句はあるか?」

 見た目に相応しい威厳たっぷりの口調で演技をする。夕方ということもあって迫力もいい具合に出ていると思う。……のだが、エーギルが旅人から見えない位置で必死に笑いを堪えている姿が見えた。

 

「……い、いえ!ありません!では昨日聞こえたあの咆哮はそれだったのですね。納得しました」

 旅人は納得してくれたようだ。

 

「ははは……やっぱり聞こえていましたか。近隣の方をびっくりさせてしまって申し訳ありません」

 

 昨日の俺の咆哮で近隣は大変な騒ぎになっていたという。

 幸いエーギルがギルドから魔物調査依頼を受けて向かっていった方面だったので、そうと知ると騒ぎはすぐにおさまったらしい。

 エーギルの光の勇者という肩書きに寄せられた信頼の大きさがわかる。エーギルってもしかして、相当凄いやつなのでは?顔もかなり良いし、特に女の子からの人気が凄そうだ。


「何はともあれ実りある調査になったようでよかったです。エーギル殿はこれからどちらへ向かわれるのでしょうか?」

 

「ラルツィレの街に一度戻ったら王都へ向かおうかと。クロを従魔登録したくて」

 

「なるほど、従魔契約されたのですか。なかなか頼もしいですなあ。しかしこれほど大きいと連れ歩くのも一苦労では?」

 旅人は俺の姿に慣れてきたのか、俺のことをじろじろと見ている。あまり怖がらせてもいけないし、興味がないフリをしてあくびをした。

 

「はい。人が多いところだと色々騒がれそうなので、なるべく街を避けて行こうと思っています」

 

「でしたらドワーフの国デリッツダムを経由するルートはいかがでしょう?

 土地柄ドワーフの皆様はドラゴンにさほど驚かないと思うので、街に入りやすいかと思います。地図はお持ちですか?」

 

 そうして俺たちは親切な旅人に道を教わり、めでたく王都行きのルートが決まったのであった。



 旅人と別れたタイミングで、俺はエーギルに聞いた。 

「従魔契約ってなんだ?そんな契約した覚えはないが」

 

「魔物を契約で従属させることさ。俺はあまり好きじゃないんだけどね……ひとまず俺とクロの関係はそういう事にしておこうと思う」

 エーギルはあまり気が進まない様子だ。俺が嫌がると思っているのだろうか?俺はむしろやってみたい。

 

「俺はお前となら契約を結んでもいいぞ!」

 

「その必要はないよ。聖痕の力で契約したっていう話にする」

 

「便利だな聖痕……お前がそれでいいなら構わないが」

 

「聖痕にはまだわからないことが多いから、こういうとき便利なんだ」

 

 ラノベとかで見たような従魔契約に憧れていたので、少し残念だ。主人の窮地に颯爽と登場して助けるやつをやってみたかった。

 ……まぁいつか本当に必要になればいつでも応じよう。

 

「──だって俺とクロの間には、そんな契約なんていらないだろ?俺はクロのことを信じてるよ」

 くっ……この光の者め!いや光の勇者だったか……エーギルの笑顔が眩しすぎる。


「あと、さっきの旅人の様子を見るに、やっぱり普通の人にはクロの姿は刺激が少し強いかもしれない。今のままでは街に入るのも苦労しそうだね」

 エーギルは顎に手を添えてしばらく思案する。

 

   

「……クロって人化とかできる?」

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