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昭和デカ

作者: 黒楓

今朝、通勤途中でふと思い付き


大急ぎで調べました。

目が覚めると…テレビが刑事ドラマを流していた。


しまった!


昨日、ケーブルのファミリーチャンネルで…昔の日本映画を観ていて…その緩い展開に寝落ちしてしまったんだ…


っていうか…


えっ?!!


8時過ぎてんじゃん!!


やばっ!!遅刻!!!


私、布団無しのコタツの上のカピカピ食器を流しにぶち込んで湯沸かし器のお湯を掛け、

パジャマを脱ぎ捨て白のチノに足を突っ込み、黒のざっくりTシャツをスポン!と被る。


メイクは会社ですりゃいい!!


ウルフカットの私は髪も梳かさずに…

コロナ禍と夏の日差しを“これ幸い”とマスクにサングラスで部屋を飛び出した。



--------------------------------------------------------------------


私の勤め先は野村ビルの中。


JRの西改札を出て地下交番の横を抜け、まずセンタービルを目指す。

地下道の人の往来はせわしなく、人波を縫って駆ける私はスニーカー履きだ。


と、いつもは普通に見る…壁一面に大きく広がっている“新宿の目”が、不気味に光っている気がして思わず速度を緩めたら…誰かに追突されて私は前のめりに投げ出された。


ドサッ!!


顔がぶつかったのは大理石状のタイルではなくガサガサの土くれだった。


身起こすとそこはモウモウと土埃が舞う…


工事現場??


「おめえ!! すったらとこで何やってンべや!!」


訳の分からない方言をぶつけられて、よろよろと身を起こす。


なんだか…どこもかしこも変だ…


チノの太ももがパツパツして…七分丈???


胸、苦しくて身をよじると…

ブラ外れた!!

えっ!!!?


でも胸ない!!


板ある!!!


私、“検証”の為、うっかりとブラを手で引き抜いて茫然としてしまっていたのだが…


“方言”の工事の人が…さっきの交番で見かけたお巡りさんじゃなく、昨日の映画で見た古い制服のお巡りさんを引き連れて戻って来た。


「ほれ!あそこ! チンピラの不法侵入!! 間違えねえ ブラジャーまで盗んでる!!」



冗談じゃない!! これは私のだ!!


私を取り押さえようとする二人を跳ね除けて

よろけながら立ち上がると…


私、二人を見下ろしていた…


「えっ?!」


私の身長って!!??


その瞬間、警棒で膝を思い切り殴られ、私は“確保”された。

私の“持ち物”らしき革のカバンと共に…



--------------------------------------------------------------------


朝、寝過ごして遅刻しただけなのに…


私は今、()()の中!!


留置場と言うヤツだ…


きっとまだ…長い夢を見ているに違いない…


“夢の中の私”はオトコで(なのに…パツパツのチノパンの下はショーツ履きで…バレたらチョーヤバいんだけど…)高身長!!(さっき183cmと分かった) 黙って凄めば(すごめば)結構イケメンかも…

とりあえずこのオリに留置されている他の二人よりは強そうなので私はちょっとホッとしている。


人の気配がする!


さっきの係官が誰か連れて来たようだ…


「おい! 刑事課の係長さんだ!」


オリの向こうに立っている人は…


『ボス』じゃん!!


私だって()()()“ファミリーチャンネル”を視聴しているわけではない。各番組の基本スペックは押さえている!


という事は…ここは昭和の…高層ビルが立ち並ぶ少し前の時代!!

刑事ドラマだ!!


係官が私の持ち物の中にあったと言う書類を読み上げる。


「ええっと!『柴門淳(さいもんじゅん) 殿 貴殿を7月20日付けをもって 淀橋警察署 刑事課強行犯捜査係勤務を命ず』この辞令!ホンモノですか?」


ボスは…“オレ”をジロリと一瞥した。

「そのようだな」


オレは“それらしい演技を”と、ボソリと頭を下げた。



-------------------------------------------------------------------


ボスがガチャリ!とドアを開けると『あの』刑事部屋だった。


地獄に仏ならぬ異世界で刑事の面々がそこに居た。


「こいつが今日からウチに来るヤツだ!」


“オレ”はこの世界で付けられた名前を名乗る


「柴門淳です。よろしくお願いします」


「オレは石原って言うんだ」

ガタイのいい先輩格の刑事が…

って!!

『イシハラ』なの?? じゃあ!ボスの名前は??


「石原刑事はムリ押しの“ムリさん”って呼ばれているよ」


―いやそれ聞いていないって…


「で、今、タバコに火を点けたのが警部補の谷山刑事…タニさん」


―山が谷山になったのね…


「それからこちらが刑事長の篠崎刑事…チョーさん」


―これはそのままなのね…


ここで“ムリ”さんが口を挟む

「で、こいつが強捜係のプリンス。鳥刑事だ」


―ああ…『(やまどり)』じゃなく本当に『鳥』なのね…


「あの…『ボス』のお名前は…?」


「渡警部だ!」


―って事は…ここは“渡”軍団なんだ!!…


で、このパターンからすると…この後、私は…いじられる。


「しかし留置場からご出勤の刑事とは初耳だね」とタニさん。


それに和して頬杖ついて()()()()“プリンス”

「しかも女性の下着ドロ容疑とは…オトコの面汚し。」


―いやいや“中身”はオンナだって…


「こりゃあだ名は“ブラジャー”かあ?」


―そりゃあんまりだ!!(泣)

でも“オレ”、今、オトコだから…両手をポケットに突っ込んでノソっと頭を下げた。


「おい、そのくらいでいいだろう! 柴門! 装備課行って一式貰って来い! こいつが書類だ!」

とボスが書類を渡してくれる。


えっ?! ひょっとして拳銃装備!!?? そりゃいい♪



-------------------------------------------------------------------


「あの、コルトパイソンとか無いんスか? 『蘇る金狼』の…」


「勤労?? 何を訳のわからん事を!! これだから今の若いモンは…とにかく今はコルト社の物は配備されていない!! 国産の『ニューナンブM60』一本!!」


体の大きさに合わずピチピチパツパツの服の上から下げたショルダーホルスターはなんだか不格好だ。刑事部屋に戻ると

「今日からお前のあだ名は“チノパン”だ」と

皆から笑われた。


「お前!今日はもう上がれ!」

と言われて


ままよ!と言ってみる。


「オレ! 火事で焼け出されて住む家もなにも無いんですよ」

すると皆は一斉にどよめいて…


「そう言う事は早く言え」とボスは10万円(聖徳太子の1万円札だった)貸してくれるし、取りあえず“ムリさん”のアパートに居候する事になった。


ゴリラみたいなムリさんの部屋かぁ~


BLみたいなことにはならないだろうけど…クサそう!!…


こんな“状況”でなけりゃ絶対ムリムリだよなあ…


でも仕方ない…


“装備”を返してから署を出て東口側へ移動


ずいぶん勝手が違ったがジーンズ屋を見つけ上下揃えた。


当時のニッポン人って…やっぱり背が低かったのか…183cmの身長だとベルボトム?の裾を切らずに済んだ。


問題はパンツ(下着の方だよ)!!


ホント!昔のマンガみたいのしか無くて…恥ずかしい上に…泣けた。


でも『インフレ』って単語はあちこちで見たけど…

物価、安かった。!!


ムリさんから新宿コマ前の“噴水”って待ち合わせ指定で…


私、“ファミリーチャンネル”に感謝したね!!


あれ観てたから場所分かったもん!



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「チョンガーの部屋ってどれもこんなもんだろ?」

って言われて

意味あんま分んなかったけど…


ムリさんの部屋! その外見の割にはキチンとしていた。女っ気はゼロだけど…


「ほぼ、オヤジの上京の時の為だけ」と言う客用のお布団も綺麗だった。



「ムリさん! フロ無いんすか?」


「ない! 今から銭湯行くか!」



エーっ!!!!!


どうしよう!!!!!!


私は男の裸の群れに叩き込まれるのかあ!!!!!


私、今は乙女じゃないけど!!.


乙女のピンチだわ!!!!


万一、ウケたら…続きを書こうかな…


でも…色々調べるのが大変そう…(^^;)



ご感想、レビュー、ブクマ、ご評価、いいね 切に切にお待ちしています!!<m(__)m>

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― 新着の感想 ―
[良い点] 昭和ですね。でもこういう刑事ドラマが好きです。最近の刑事ドラマはスマート過ぎるので……あれも嫌いではないですが、もっと目力半端ない系の作品が好みです。それこそ石〇軍団が出てきそうな [気に…
[良い点] この発想はなかった! [一言] すごく面白かったです! 主人公はこれからどうなっていくのか?! 続きも読んでみます♪
[良い点] 怪奇作……(^.^; [気になる点] もしかして『太陽に吠えろ』? [一言] 日本人の身長も伸びたんだなあ……
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