幕間<いまではないいつか>
幕間だから仕方がない
ある暗い部屋の一室。
「神よ!なぜなのです!」
彼はそう言って叫び泣きわめいた。
「私はこんなに彼女のことを愛しているのに!」
彼の目の前には妻の死体があった。
「なぜだ!なぜこんな事になってしまった!」
愛しい愛しい妻、今も目をつぶれば楽しかった日々が蘇ってくる。
「神よ!なぜこんな残酷なことをするのですか!」
もう妻は帰ってこない、その事実が彼を打ちのめす。
死因は撲殺。
彼女の顔を見れば明らかであった。
ひどく乱暴に殺されたようで、美しかった彼女の面影はもうない。
「なぜ・・・なぜ・・・」
涙がポタポタと彼女の顔に降りかかる。
「なぜ!私は!彼女を殺してしまったのですか!」
そうだった。妻を殺したのは彼自身だった。
そしてその行為はまだ続いている。
「なぜ止められないのですか!」
彼は自分の手が腫れるのもいとわずに妻の顔を殴り続ける。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
彼は慟哭する。
彼は泣きながら殴る。
殴る
殴る
殴る
殴る
殴る
もう彼女が死んでから四半時は経っただろうに行為はまだ終わらない。
そして、彼の命も、もう長くはなさそうだった。
彼の青白い顔色と、何よりも彼に突き刺さったアイスピックが物語っている。
「どうしてですか神よ!」
妻が死んだ理由は理由は何よりも明らかであるのに彼はそれを直視できない。
そうして彼は妻を殴りながら失望の中事切れた。