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がっこうのみんなもなかよし

がっこうのみんなもなかよしにさせます

少女がチカラを使ってから家庭は平和そのものだった。

と言うか以前には見たこともないような両親のイチャつきぶりだった。

「お母さん!お父さん!もういい加減にしてよ!」

そんなことを言いながら少女の顔も微笑んでいる。

「まあいいじゃない」

「まあいいじゃないか」

両親が仲良くて困ることはないだろう?と両方とも言う。

彼らの顔も微笑んでいた。

「まあそれはそうだけど」

「それに私達もあなたのことを大好きなのよ。ただずっと喧嘩してばかりだったから、ちょっと歯止めが・・・」

「もー」といって少女はぷりぷりと怒っているフリを見せる。

が、そんな顔も緩みっぱなしだった。

少女も嬉しくて仕方がないのだ。

こんな光景をずっと夢見ていたのだ。

顔も緩むのもの仕方ないだろう。

「そんなことよりも学校の時間は大丈夫なの?」

母親はいちゃつきながらも子供の心配は忘れていなかったようだ。

「あ、いけない!遅刻しちゃう!」

そう言って少女はバタバタと準備を再開する。

ただ、その顔には多少さっきまでなかった憂いがあった。

そう、彼女の学校は喧嘩やイジメが絶えないのだ。

平和な家庭から殺伐とした学校に行くのはちょっと憂鬱だった。

「大丈夫かい?」

父親が心配そうに声をかけてくる。

本当はあんなにイジメが多い学校になんて行きたくなかった。

私こそターゲットになっていないものの、いつその矛先が変わるかなんてわからない。

それにイジメなんて見てるだけでも嫌なものだ。

でも・・・。

「大丈夫!お父さんとお母さんも仲良くなれたでしょ?みんなちょっとしたきっかけで変われるはずよ」

「そう、でも無理はしないでね」

母親も心配して話しかけてくる。

「大丈夫!いってきまーす」

そうしてそうして子供がでかけていったあと、両親は我が子を心配しながらもまたイチャつき始めるのだった。


彼女が学校に行くといつもどおりいじめの首謀者がおとなしい気弱な子をいじめていた。

それは最近始まったことだ。

実はチカラを手に入れてからイジメを止めようとしたことはあったあったのだ。

《まさよしくんとたかしくん仲良くなれ!》

たしかにその子とその子は仲良くなれた。

これで両親みたいに平和なクラスになる、仲良くしてくれると、そう思っていたのだが、大きな間違いであることがわかった。

イジメのターゲットが変わったのだ。

しかも、よりにもよって『仲良くした二人』が、別の気弱な子を一緒になっていじめだしたときには頭を抱えそうになった。

なかよくさせるのがこんなに大変だったなんて。

イジメには先生も見て見ぬふりだ。

(私がなんとかしなくちゃ)

こんなチカラをもらっていながらこのことを見過ごすことはとても大きな罪に思えた。

ただ、これは彼の出した条件は関係なかった。

(私が望んでいたのは平和な生活だった。だからもっと頑張らなくちゃ)

そうしてしばらくは、イジメを見つけては『なかよく』させる行為を続けた。

ただ、その行為は長くは続かなかった。

なぜなら、なかよくさせた人同士の争いに発展してしまったからだ。

場合によっては流血沙汰になっていた。

(どうしよう)

争いを見つけては『なかよく』させているが、見ていない場所でコトが起きてしまうとどうしようもない。

(誰と誰をなかよくさせればこの学校は平和になるの?)

少女はちょっと途方に暮れそうになっていた。

そうやって日々を鬱々と過ごしていたときだ。


ついに争いで病院送りになった人が出た。

鉄パイプで殴られたらしい。

当然このあまりにもひどい事件で警察まで出てきた。


少女は当事者でもないのに、自分の責任のように感じた。

(私がもっとうまくやっていれば・・・)

そうしてつらつらといろいろな物事が頭を流れていたときにそれは起こった。

「学校のみんながみんなとなかよくなれたら良いのに」

無意識につぶやいた言葉だったが、その瞬間にものすごいチカラの奔流を感じた。

「え・・・」

そして何が起きたかを理解するまで時間はそうかからなかった。


殺伐としていた学校のみんながみんな『なかよし』になっていたのだ。

さっきまで争っていた人たちも全員笑い合っている。

そこには悪感情のかけらもない。

(さっきの言葉のせいなの?)

無意識に出た言葉だったが、チカラを使う発動条件がそろったようだった。

そう、何を思い違いしていたのか。

『なかよく』させるのは個人ごとなんて誰も言っていなかったではないか。

彼は『対象』と『対象』が仲良くなれといえばいいと言っていた。


このチカラは思っていた以上に凄いチカラだったのではないか?


少女は学校の中を見て回った。


学校は先程までの争いの跡が痛々しいほど残っていたが、争っている人は皆無だった。

学校の生徒はもちろん先生たちもなかよしになった。

他の生徒たちが少女に向けてくる眼差しも心なしか温かい。

そう、まるで両親のときのように。


「このチカラなら本当に世界を平和にできるかも?」

そうつぶやいた少女の目は輝いていた。


そうして学校のみんなはみんな『なかよし』になった。

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