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僕のくノ一戦姫  作者: ぽっくん
孤独のくノ一
18/26

狂乱の坩堝(残酷な描写あり)

残酷な描写が含まれます。苦手な方はご注意下さい。

「放しなさい!」


両腕を拘束され、宙吊りの状態で持ち上げられた雪音さんはキッと獸を睨みつけていた。強がってはいるが、恐怖からか体が強張っている。


『イヤダナ』

「このっ!」


獸の四肢を蹴って抵抗しているが、獸はどこ吹く風といった体で全く通じていない。それどころか雪音さんの体を舐め回すように見つめていた。

その雪音さんは既ににボロボロで、生身を包むぴっちりした服も苛烈(かれつ)な攻撃を受けた為に限界を迎えつつあり、背中以外にも太腿(ふともも)や腕、肩や腰などの部分に焼け焦げた跡や破れた跡があった。

そんな雪音さんを足先から顔までゆっくりと眺め堪能した獸ニヤニヤといやらしい笑を浮かべる。そして最後にはなんとか気丈に振る舞う雪音さんの顔を見て口を開く。 


『オマエ カワイイ アトデ クウ。ダガ クウマエニ コワス』

「ッ! 早く放しなさい!」


より一層抵抗を強める雪音さんに対し、獸は空いている右手に小さな火球を出現させた。


「まさか…」


(あお)()める雪音さんをよそに、牙を出してニヤリと(わら)い、胸に火球をゆっくりと押し当てた。


「うわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


小さな破裂音と共に小規模の爆発が生じ、痛々しい程の絶叫が響きわたる。


『ハッハッハッ』


醜い笑みの彫りをさらに深くさせて激痛に耐える雪音さんを愉快そうに眺め続ける。


「ハァ、ハァ、ハァ……くっ、この外道! お前の目的はなんだ」


黒くなった胸元から煙を上げ、痛みに顔を歪めながらも問う。


『オレノモクテキ……オンナ クウ コト』

「そんなわけないでしょ! ふざけたことを言わないで!」

『ホントダ』

「なら、なぜ彼を狙う」

『アイツコロセバ オンナ クエル。ソウイウ ヤクソク』

「約束?」

『ソウダ』

「誰と約束をした!」

『オマエニハ カンケイナイ』

「誰と約束したのか答えなさい!!」

『スコシダマレ』

「なっ!」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


激昂(げきこう)した雪音さんに火球が押し当てられた途端、肺の空気を全て出し尽くさんばかりの絶叫を上げた。それに加え、明らかにさっきよりも威力が高かった。その証拠に服の胸部に大きな穴が空き、右乳房の殆どが露出した。


「ハァ、ハァ……うっ…くっ………………」


ドサッと地面に落とされ仰向けになり天を仰いだが、直ぐに起きあがろうとして上半身を無理矢理持ち上げる。そこで、自身の右胸が露わになっていることに気付いた。


「ッ!……忍スーツが!……おのれぇ!」


露わになった桃色の乳首を直ぐに左手で隠し、ガクガクの足で何度も倒れかけながらふらふらと立ち上がる。火球責めは雪音さんの体にかなり応えているようだった。

刃折れの刀を獸に向けるが、剣先はゆらゆら揺れて目標か定まっていない。しかし、体とは裏腹に眼光だけは一際鋭い。そこには秘部を晒された羞恥も含まれていた。


サキニ(先に) イッテオク(言っておく)オレノ(俺の) ジャマヲシタ(邪魔をした) オマエハ(お前は) タダデハ(ただでは) クワン(食わん)ダガ(だが)オレハ(俺は) イマ() キブンイイ(気分良い)ダカラ(だから)オマエニ(お前に) サイゴノ(最後の) チャンス(機会) ヤル(やる)

「最後のチャンス?」

『ソウダ』


一泊置いた獸は泰然(たいぜん)とした態度でと口を開く。


イマココデ(今ここで) イノチゴイヲ(命乞いを) スルナラ(するなら) オマエダケ(お前だけ) ミノガシテヤッテモ(見逃してやっても) イイ(いい)


この言葉の直後、空気が変わった。




「誰が…………誰が命乞いなどするものか!!」




これまでの努力とくノ一としての自尊心、更には存在価値をも無に帰す侮辱(ぶじょく)的かつ屈辱(くつじょく)的な提案。それは今の雪音さんを興奮させるには十分すぎる火種だった。


「おのれぇぇえええ! 私もろとも貴様を//」


"ボコッ"


「ぐはっ!」


雪音さんは怒髪天(どはつてん)を衝く程の怒りを(あらわ)にし、我を忘れて獣に突っ込んでいった……が、生々しい音と共に体が深くくの字曲がったーー獸が常軌を逸したスピードでお腹にパンチを繰り出していた。


反応することすら出来ずお腹に破壊的なパンチをモロに喰らい、目を見開いて悶絶する。握っていた刀も手放してしまって、一瞬だけ意識も飛びかけた。だが、歯を食いしばり意識を必死に繋ぎ止める。



「…げほっ……くっ……私…は負ける…わけにはいかな//」



"ボコッ"



「くはっ、…っはぁっ」


獸は狂気を孕んだ目と共に二発目を打ち込んだ。雪音さんの体が再びくの字に曲がり、獸の大きな拳がお腹に深く食い込む。雪音さんは耐えられず嘔吐(おうと)して胃液を撒き散らす。

前のめりに倒れ込む雪音さんを獸は受け止め、再び両手の自由を奪った。

雪音さんはもう抵抗することもなく、体を小刻みに震わせ、集点の定まらない目を獣に向ける。それでも意識はあった。


「……や……めっ//」



"ボコッ"



「んぶっ…けぽっ」


「やめろ…」


三発目が雪音さんに叩き込まれた時、雪音さんは尋常じゃない量の血の塊を吐いた。そして、視線が明後日の方を向き、そのまま壊れた機械のように動かなくなる。

遂に失神したのだ。


獸はそれを見るなり、今までパンチを繰り出していた手で雪音さんの首を掴み、手に力を込めて首を絞める。

そして…


「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ」


雪音さんを無理矢理覚醒させた。


『モット クルシメ モット ワメケ』


「や………め………//」



"ボコッ"



「かはっ」


「やめろよ…」


雪音さんはまたしても気絶してしまった。股間からはジワジワと液体が染み出し、そこの部分だけ忍スーツが濃色に染まっていく。

だが、そんなことも勝手知らず、獸の狂気は収まることを知らない。

気絶してだらんとした雪音さんに、今度は右手をかざし、火球を出して、無防備な雪音さんの上半身に押し当てた。「ボフッ」という重たい破裂音が鳴り、獸の手元で発生する小規模の爆発。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」


雪音さんは一瞬で覚醒し、目を見開いて声にもならない叫びをあげる。


『イツマデ タエラレルカナ』



"ボコッ"



「ぐはっ!」

「やめろ…」


大量の血を吐血した後、直ぐに失神する。

今度は首締めではなく、右手で雪音さんの顔面をぶん殴った。

グシャッという嫌な音を立てた後、拳をぐりぐりとして顔から離した。その直後、大量の鼻血がブシュッと飛び出した。だが、その衝撃で白目を剥いていた目が正常な位置に戻った。



"ボコッ"



「ぐふっ」

「やめろ…」


また気絶。そして失禁。


「うあ゛あ゛あ゛あ゛」


爆発で強制的に覚醒。


同じことが何度も繰り返される。数回、数十回と惨たらしい攻めを受ける度に雪音さんの体は拒絶反応を引き起こす。火球攻めを受けるたびに悲鳴を上げるその様はもはや獸の玩具(がんぐ)そのものであった。

顔は血と涙でぐしゃぐしゃになり、髪の毛も解けてボサボサ。上半身は服の殆どが焼け焦げ、裸にスパッツだけの様な状態。(すす)けた体には至る所に傷と火傷の痕があり、殴られたらた腹部は見るに堪えないほど赤黒く腫れ上がっていた。濡れそぼった股間からは小水がぽたぽたと滴り落ち、靴も片方脱げて地面に転がっていた。


凛々しくかっこいい雪音さんの面影はもう何処にも無く、あられもない姿で蹂躙(じゅうりん)ないし陵辱(りょうじょく)の限りを受け続けていた。

それでも、まだ生きていたーー生かされていた。


『アキタ』


その一言の後、ゴミの様に投げ捨てられた雪音さんは震える体で何とか丸く縮こまり、解放された手で自信のお腹を抱える。


そこへダメ押しと言わんばかりに火球が放たれ、何度目かの炸裂音と衝撃波、そして閃光に包まれた。

かなりの規模の大爆発だった。


少しの後、爆発は収まり、昼間のように明るかった周りが闇に包まれる。煙だけがモクモクと立ち昇り、曇った空の一部になろうとしている。


『スコシ ネテロ。アトデ アジワッテヤル』


獸は煙に向かい濁声(だみごえ)を発した後、振り返った。狂気と猟奇(りょうき)を含くんだ赤黒い瞳をこちらに向けて、歩き出す……が.直ぐにその歩みを止め、視線を下にずらした。


『マダ ジャマヲスルノカ』


「…させ…無い… …ぜったいに…させ……ない」


獸の足元に全身から煙を出す雪音さんが手だけでしがみついていた。


『ドケ』


瀕死(ひんし)の雪音さんにしがみつくだけの余力が残っている筈もなく、造作もなく雪音さんを振り払われた。だが、それでも血を吐きながら地面に這いつくばり、身を(よじ)って獸にしがみつこうとする。


「……行かせ……ない……行かせるものか……」


『オマエ シブトイ』


"ガシッ"


獸は大きく足を振り上げ、雪音さんの右足を踏み潰した。




「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ あしがぁあ」






「やめろって言ってるだろぉぉぉおおお!」






"ガシャン"





僕の中の何かが爆発して、ドス黒い感情が僕の全身を支配した。それと同時に目の前に高速で何かが飛来して幾度も壊そうとした分厚い氷の壁をいとも簡単にぶち破る。


怒りという感情の本流が僕自身に強力な力となって体から溢れ出した。それは獸の出す黒い瘴気と瓜二つだった。そしてそれに呼応する様に僕の目の前に飛来した何かーー師匠のくれた木刀が有り得ないほどの瘴気を出しながら突き刺さっていた。

それを手に取り憎悪の対象ーー獣に向ける。



"アイツは…アイツだけは絶対に許さない"



自分が弱いことなど、戦いの経験が無いことなどどうだっていい。恐怖など微塵(みじん)も感じ無い。ただ単に目の前の敵を殺したくて仕方ない。憎くて仕方ない。骨の(ずい)までぐちゃぐちゃにしてやりたい。



"ぶっ殺す"



目に映る真っ黒な世界にはソイツの嗤う顔だけが唯一鮮明に映っていた。

後書き劇場


ニュースキャスター:速報です。○○県○○市で通り魔が発生しました。犯人と見られる男は黒のパーカーでフードを深々と被り包丁を振り回した模様。尚、「エクスカリバー」「雪音姫〜」「魔王許さん」等の訳の分からない事を叫びながら現在も逃走中との事。付近の方々は外出の際に十分に気を付けてください。

続いてのニュースです。入試の不正が〜


ぽっくん:エタリン……


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誤字脱字表現の誤り等が有れば報告よろしくお願いします。

それでは、また次のお話でお会いしましょう。

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