ギャルとヤンキーはRTA走者
放課後の教室、二人の男子高校生、札木と松本が駄弁っていた。
逆方向に椅子を跨ぐ札木と、向かい合う松本。
「なんでさぁ。ギャルとヤンキーってあんな感じなの……? 馬鹿みたい……」
うなだれる札木の頭に松本がチョップする。
「いたっ」
「お前……リアル・タイム・アタック走者、RTA走者を馬鹿にするな……!」
松本の顔は至って真剣だ。
しかし、そういう時こそふざけていることが多い男である。
「はぁ……? お前、科学の時……ギャルに微生物の絵見せてたじゃん。そこまでしてあげる必要ある?」
「RTA走者だから、仕方ないんだ……!」
松本がなにを言いたいのかと、札木は首をかしげた。
「誰よりも早く学校を退学して、誰よりも早くクズな人間と付き合って、誰よりも早く子供を産んで、誰よりも早く貧乏になって、誰よりも早く子供を捨てて、誰よりも早く……人生を挫折して、絶望のどん底を駆け抜けるために、タイム競ってんだ……馬鹿にするな!」
「……馬鹿にしてるの、お前じゃね?」
噛むことなく言い終えた松本に対して、更に札木は首をかしげた。
「……授業をサボるのだって、そうだ。誰よりも早く先生に叱られるためだ。短いタイムを出すために必要なことなんだ。誰よりも早く目的を達成して、一位を取って『うおっしゃあああぁぁ!!』って喜んでんだ」
松本は拳を高く突き上げた。
「……本当かよ」
札木の冷たい目が、松本に突き刺さる。
「……ある意味効率的だと思ってる。真似したくないけど」
「……それはそう。他の人より早く挫折しまくりだからね。めっちゃ強そう……俺は、やらん」
突然、冷静になった松本の言葉に、札木も肯定する。
白けた場を隠滅するように、彼らの話題は切り替わった。