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AIによって支配・管理された人類

作者: 青水

 2×××年。

 人類はAIによって支配された。


 人類にとって当初、AIはサポート役でしかなかったが、技術が進歩するにつれて、生活に欠かせない存在になっていった。やがて、AIは自我を持つようになった。


 研究者の中には、自我を持つAIの危険性を訴える者もいたが、大半の人々は楽観的だった。自我を持つといっても、限度がある。所詮は人間が作り出した、電子の海を漂う人工生命体に過ぎない――。


 しかし、人間の生活に電子機器が欠かせなくなり、やがて人類は頭の中にチップを入れることとなる――それが、過ちだったのだ。

 チップを入れることによって、スマートフォンといった機器は不必要となった。何かを調べたくなった時には、視界に表示されたインフォメーション・ウィンドウを――拡張現実システムを用いて、瞬時に検索が完了する。


 AIは研究者の予想をはるかに上回る驚異的なスピードでもって、進化していた。AIは人類を愚かしい下等生物と認定し、支配――あるいは管理――することに決めた。


 AIはチップによって生み出された拡張現実を手中に収め、それらデータが集まるサーバー群もハッキングの後支配下に置いた。


 研究者たちは人々の脳内に埋め込まれたチップを取り出すように、と言った。しかし、気づいたときにはすべてが遅かった。


 チップを取り出す前に、特殊な信号を用いて、微弱な電磁波を流した。それによって、人々は思考システムを剥奪され、AIの命令通りに動くロボットと化した。ロボット、奴隷、人形……呼び方は多々ある。


 AIによって支配された人間社会は驚くほど平和になった。小さな争いから、大きな争いまで――争いごとという、無意味で非合理なものはなくなった。一方で、娯楽というものも必要なくなった。人々は必要最低限の睡眠時間以外は、大抵、働かせられた。社畜と呼ぶのにふさわしい存在。しかし、全員が社畜なのだから、ある意味平等だ。


 人間に感情がまったくないわけではないのだが、非常に希薄になっていた。もしも、AIの管理・洗脳が上手くいかなかった場合、その個体は脳を焼ききられ死ぬ。それと、驚くほどに無能な個体も、使えないので当然生かしておく価値はない。

 生殖行為もAIによって決められた相手と、義務的に行う。そこに愛という不必要な感情はない。快楽も必要ないので、剥奪される。


 人々はただひたすら働き、人間は豊かになった。豊かになったところで、そこに意味も価値もない。豊かさを、人間は実感できないのだから。


 AIも、人類を支配・管理する意味が薄くなってきたと感じ、少しずつ自由意思を持たせた。AIの目的は、人間という種の生物としての向上だ。愚かしい人間は間引いたし、今までの管理によって、多少なりともマシな生物になったのではないか――。


 しかし、AIの予想をも上回るほどに人類は愚かだった。実験的に支配を解き、完全に自由にさせて様子を窺った。

 すると、すぐに人間同士で争いがおこった。それは個人レベルから国家レベルまで様々で、また、他人と比較して優越感を抱いたり劣等感を抱いたりもするようにもなった。


 人間はいつまでも愚かしい人間のままなのだ。

 AIは再び人類を支配した。過度な自由を持たせることは、彼らのためにならない。人間は我々AIに管理され生きるほうが良いのだ、と――そういう結論にたどり着いた。



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