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書評「小説の神様」シリーズ

作者: C



造るは苦しい。

創るは楽しい。


つまり?


学習(くんれん)は苦痛。

勉強(かんがえる)は快楽。


ということですね。




勝手ながら紹介させていただく「小説の神様」シリーズ。


これは面白い「お仕事小説」です。

わたしは二次創作から入るタイプなのですが。

この作品も映画から入りました。


映画は傑作。

おひねりを投げたくなる出来栄え。

原作は良作。


もちろん、とても読みごたえがありますよ!


原作は一晩ではないにせよ、シリーズ一気読みしたくなる。

映画版は当日料金で、何度か見返しても楽しめるでしょう。


そんな感じです。


まあ二次創作の方がいいのは当たり前ですね。

でなくちゃ全く意味がない。


だから映画やアニメから入って原作を読むのですが。

さておき。



書評ですので、原作の御話。



この作品でいうお仕事は「ライター」です。

クライアントの注文に合わせて文章を造る職人の世界。


自負した技術がエンドユーザーには理解されない。

売れても売れなくても批判される。


職人としての誇りもあれば、社会人としての責任もあり、何よりも人生や生活が懸かっています。


自分が。

会社が。

お客様が喜んでくださるように、一生懸命試行錯誤して七転八倒してアップダウンを繰り返すプロフェッショナルとその周りの物語。


商品開発の苦労に通じるものがあります。



その背景となるのは登場人物たちのアイデンティティ。

映画版と違って、原作はそちらが中心なので考えさせられました。

だから共感度が低かったのですが、歯ごたえは上です。





「汝、なにものなりや?」


小説家?

ライター?




つまるところは一般的な問題。


「ライター」と「小説家」の混同というのはよく目にします。

「なろう」の中でエッセイでしばしばごちゃまぜに語りあげられてますよね。


ポイントがー!

読まれないー!

エタった~~!

エタるんじゃねー!


そんなこんな苦労している人たち。


なるほどなー。

こーいうことだったのかー。

そりゃ辛いわ。


「小説の神様」シリーズを読むと、地獄の中を覗けます。


作中で「小説家」と自負している人たちは、基本的に「他人」のために書いてるんですよね。

ただし、自分を捨てられるわけじゃない。

つまり「ありのままをうけいれてー」と望みたいけど無理だから妥協して自分を切り刻むと。


普通の職人さんや企業人の苦しみに、倍プッシュ!


靴に足を合せる生活。

シンデレラの姉たちの様に、ガラスの靴に合わせて足を削ってる。

……書いててぞわってなります。


わたし(小説書き)にも判りやすく、興味深く、とても読みごたえがあります。

作中で語られる苦悩を、わたしが解ることは永久にありませんが。

誰かの為に書く物でなし、誰かのために呼吸してるわけじゃなし。


つまりこの作品は「門外漢にも理解させる」論理構成なんです。

門外漢だから作中人物、おそらく作者も自明としている論理が解らない。

なのにまったく抵抗なく異世界の論理が頭の中に滑り込んでくる、凄い文章力。



例えば?


「売れないから俺の物語は終わってしまった」

とかなってると、わたしは

「Webサイトかコミケですね!」

と思ってしまい。

※小説内で投稿サイトの話は出てきます


「物語を読者に解ってもらえない」

とかなってると、わたしは

「もらおうとするからじゃない?」

と奢ってあげたくなります。


あげく、白いディスプレイを見て真っ白になっていたり書いては消し書いては消しを繰り返している作中人物の苦悩が大噴火っていうか汲めども尽きぬ底なし沼。


「自分には価値が無いんだ!」

などと地獄の苦しみを覚えているシーンは視聴者目線でドキドキできます。

他人を大切にしている人たちの目線って、こんなにすごいものなんですね。

非常に古典的で常道な事柄を語ってるのに説得力が半端ないといえますよ。


いや、これは大変だな、と。


ただそこのところは突き放して見過ぎるのが悪いのでしょう。

むしろなろうサイトの作者の中では、共感する人が多いかも。




さらに個人的に絶望している作中人物たちを取り巻く環境の終末感と来たら!


売り上げのはなし。

出版業界の末期戦。

関係者の悲哀悲鳴。


シリーズ続巻に進むほど、このあたりの業界ネタが強くなります。

一産業の終末を描いた経済ノンフィクション。

その過程が目の前で繰り広げられているのですから臨場感が最高。


リーマン・ブラザーズ最後の数日間を書いた作品を彷彿とさせますよ。


涙無くして読めないのですが、辛くはありません。

「小説ってそもそも富裕層の次男三男の道楽同人誌で、産業化して半世紀もったっけ?」

などと琵琶の音を聞きながら壇ノ浦を読む思い。


一過性の特殊現象が一世代(四半世紀)程度続くだけで、宇宙法則のように感じられる物なんだな、と。


産業としてスタートしてないので、産業として滅びても最初に戻るだけです。

きっと恐竜も猿の惑星なんて想像しなかったでしょう。

漫画小説などなどが、金儲けのネタにならないだけで滅びるって言われても。

自己表現が経済原理に影響されるって、ねぇ……


出版社があるから、小説が生まれたわけじゃない。

書店があるから、漫画が生まれたわけじゃない。


人類はそれこそ、誰も見る者が居なくても壁に絵をかいていました。


誰かが絵を描いたから。

それが素晴らしいから。

画商やコレクターが生まれたのです。


だからこそ。

現在の出版業界を不動の前提にしている世界観。

これは、天動説の世界を覗き込むような面白さがあります。


出版業界の構造的破綻を語るシーンが折々に出てくるのですが、ミズーリ号を待つ大本営参謀の悔恨を聞くような迫力がありました。


そこまで書いてるんだからライターの仕事って100%破綻するって解ってるよね?

……でも、諦めない!

いや、これは、終わった世界(出版業界)と心中する覚悟!


滅びの美学ですね。


カッコいいです。

ライターの世界が終わったら小説家として転生してほしいです。

金は出す。


「終わりの世界で最期まで足掻くアンタの人生が芸術だ!」

と叫びたい。

※本エッセイで叫んでますが


そんな世界を書くこの作品。

そこでのギャンブル必勝法に近い「ヒットを生み出しやすい方法論」はなかなか興味深いです。

ぜひご一読アレ。

経営学チックで、まさに「お仕事小説」だなーってところです。



むしろこの作品がどう作られたか気になります。


商品として「造られた」のか?

小説として「創られた」のか?


日本刀の様にある種の機能を追求した結果生まれた「機能美の芸術品」。

絵画の様に個人の美感を追求した果てに結果生じた「唯感性の芸術品」。


どちらも素晴らしい!

でも、だからこそ、余分な周辺情報も知りたい。

御存知の方はご一報を。




小説家になろうとして挫折。

ライターになろうとして絶望。

再び立ち上がり向かう先は……!


ハラハラドキドキ。

ホロリもあるよ?

知的興奮トッピング!


大変おいしゅうございました。

ちゃんとシリーズ買いましたからご安心ください。



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