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何でこのオネエとの別れがこんなに寂しいんだ。

「ま、魔獣の熊ですか!?」


ギルドのお姉さんは驚いているようだ。


え?この熊そんなに強いヤツだったの…?


サチコさんにボコボコにされていたけど…


サチコさん無双やばすぎ…


「こ、こちらが報酬の52万コインです。」


52万!?


兎と狼のクリア報酬が2万だったから、


この熊50万!?


「アラっ。凄い大金ね。じゃあタロー君。はい。26万コイン。」


「い、いやいやいや。アレ全部サチコさんが倒してたじゃないですか!それなのに半分なんて、貰えませんよ!」


「それは違うわタロー君。いい?私たちは出発前に依頼の報酬を山分けという約束で出発したわ。それはこの熊にしても同じよ。」


ギルドの受付さんもサチコさんを援護する。


「サチコさんのおっしゃってる通りです。タローさん。冒険者とはそういうものです。結果で報酬分配を変えるのは良くない行為です。」


「そ、それなら…遠慮なく半分もらいます。」


ま、マジか!いきなり大金を得てしまったぞ!?


「よろしければギルドバンクはいかがですか?大金を持っていると盗賊に襲われる可能性もあります。」


こんな時も商売上手な受付さん…


流石です…



2万コインずつ残し、殆どの金をギルドバンクに預けた俺とサチコさんは武器屋へ行く。


武器屋はギルドの隣に設置されており、初心者武器~上級者武器までいろいろ置かれている。


「ん~。私は今日借りたのと同じ武器にしようかしら。」


「じゃあ俺はこの初心者用の剣にします。」



「どっちも5000コインだよ!毎度あり~。」


店のドワーフから商品を受け取り、店を出る。


言い忘れていたが、この世界には人族、獣人族、魔族など、様々な種族がいて、魔族以外は同盟関係にあるらしい。


「サチコさんはこれからどうします?」


「そうね。もう夕方だし、今夜の宿を探しましょう。」


「そっすね。」


この世界ではお湯で身体を洗うのが基本だが、貴族や金持ちなどはお風呂に入れるらしい。


羨ましい。


そして街を歩いていると、空部屋のある宿屋を見つけた。


「はい~。2部屋なんで、それぞれ2000コインになります~。夕、朝の食事付きだと+1000コインになりますがいかがいたしましょう?」


「じゃあつけてください。」


「まいどです!ではごゆっくり~。」


宿に入った俺は久しぶりの一人の空間を堪能する。


思えば、異世界に来てからずっとサチコさんと一緒で一人の時間ってなかったなあ~。


ちなみに、これまで制服のシャツで過ごしていた俺だが、さっき服屋で動きやすい服を購入した。


そして、夜まで時間がある。


俺は鞄からラノベの本を取り出す。


森で殆どの荷物は捨てたが、ラノベとシャーペン、推しのグッズだけは持っていた。


「まだ読めてなかったんだよなぁ~。新刊…」


夕食の時間まで読む事にした。



時間は過ぎ、外は真っ暗だ。


「「かんぱーい。」」


サチコさんと俺は乾杯する。


さて…人生で2度目の酒だ…


初めて酒を飲んだのは小学生の時に父親が飲んでいたので欲しくなり、1口のんで不味さで吐いた時だ。


とりあえず1口。


旨い…な。


なんか旨い。


こ~。


なんか旨い。


小さい時は苦くてたまったもんじゃねえ!


と、思っていたが、イケるな。


「タロー君もお酒の旨さに気づいちゃったみたいね。」


サチコさんの大人オーラが凄え…


料理も美味いし、この宿を選んだのは正解だった。



その日から1週間。


俺とサチコさんは一緒にクエストの依頼を達成していった。


危ない時はサチコさんが助けてくれ、怪我をした時はサチコさんが手当てしてくれ、気絶した時もサチコさんが運んでくれ…


あれ…?サチコさんに頼りすぎじゃね?


まあ、それは分かりきっている事だが、ある朝、いつも部屋にノックしてくれるサチコさんのかわりに、扉の下から1通の手紙が残されていた。



『タロー君。私と貴方のクエストではいろいろあったわ。私は初め、森で戸惑っているタロー君を見たとき、大人として貴方が自立できるまで守ってあげなきゃって思ったわ。でも、貴方は私の予想以上に大人で、賢くて、もう他の冒険者にも受け入れられる存在になっているわ。これ以上大人の私がいたら貴方はもっと上に行くことができない。私は貴方の成長の阻害になりたくないわ。だから、ここで貴方と私のの旅は終わりよ。大丈夫よ。タロー君。貴方ならきっと最高の仲間と巡りあって最高の冒険ができるわ。貴方のことを陰ながら応援しているわ。

私も資金が貯まったらこの街のどこかでお店を開こうと思っているから、その時にまた成長した貴方をみせてちょうだい。

貴方の友人。サチコ。』


「さサチコさん…」


やばい。涙が止まらねえ…


サチコさん…


あんたはイケメンすぎるよ!


そして、あんたがいなきゃ俺はここまで来れなかったよ!


サチコさん!


次に会う時までに絶対最高の仲間と出会って、一人前の冒険者になってやる!


次に会う時はサチコさんの半分くらいには強くなっていてやる!


またな!サチコさん!


俺は涙を流しながら友の幸運を祈った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 異世界に来て、美少女とではなくオネェのオッサンと友情を育む展開が最高です。 [一言] 是非とも続きを楽しみにしてます!
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