何で俺はオネエといるんだ。
俺は村田太郎。
名前が今時珍しいってところ以外は普通の高校生だ。
今日もオタク仲間と新アニメの話をして、ラノベを買いに本屋まで行って、そこから帰宅しているところだ。
「いや~新刊買えてよかった~。人気作品だからなぁ~。」
俺は袋の中から本を出して表紙を見る。
「なんとここでメイドキャラとは~。読むのがたのしみダーーー!!!」
痛ーーーーー!!!!
本に気を取られ電柱に頭をぶつけたようだ。
「痛…やべぇ痛すぎて涙出てきたわ…」
涙を袖で拭き取る。
すると目の前には緑が生い茂っていた。
ん?ここどこだ?
「え?何!?え!?さっきまで歩道を歩いてた筈だぞ!?」
見渡す限り木 木 木。
木しかねえ…
っていうかさっきまで家の近所の道を歩いてた筈だぞ!
もしや…
もしかして!
これって!
異世界転移か!
つ、ついに俺にも異世界転移が!
うおーーー!!!
俺にはどんなチート能力が眠っているんだ!?
うおーーー!!!
楽しみでしゃーねえ!!!
さて…と。
まずは森から出ないとなぁ…
森から始まる異世界生活。
うん。これ流行る。
「ねえ…ちょっといいかしら?」
隣から声が聞こえる。
とても太い声が…
「は、はい?」
「アラ。お兄さん。貴方も急にここにいたのかしら?」
隣にオネエ系のおっさんがいるんだが…
え!?
待ってくれ…
何で…?
そこには美少女がいるんじゃねえの…?
何でおっさんが!?
しかもオネエの…
「は、はい。そうですが…」
「アラ!じゃぁ仲間ね!」
「そっすね。」
え、どうすりゃいいのコレ?
「とりあえずここから出ましょう。森は危険よ。怖い動物がうじゃうじゃいるわ!」
「そっすね。」
よく分からんが確かに1人だと危険だ。
例え相手がおっさんでも2人の方が安全だ。
後ろの安全精度は下がりそうだけどな…
「ところで兄さんお名前は?私はサチコよ。」
「タローです。」
「よろしくね。タロー君。」
こうして俺とサチコさんは森を出る為に協力する事になった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「太郎君下がって。熊と遭遇して、まだ向こうが気付いていない時はゆっくりと距離を取るのよ。」
「そっすね。」
「太郎君。野犬は危険よ。可愛いからって不用意に近づいちゃダメよ。」
「そっすね。」
何この圧倒的安心感!
このおっさん万能すぎだろ!?
だが、俺は一つだけ危惧している事がある。
それは…
後ろの初めてだ。
めちゃくちゃ頼りになるが、夜となると流石に怖い。
そして、外はどんどん暗くなってきている。
「夜の森は危険よ!ここは交代で見張りにしましょう!今は私が起きているから交代の時間になったら起こすわ!」
「そっすね。」
ついに来てしまった…夜が…
やべえ…怖ぇ…
とりあえず寝たフリだ…
襲われそうになったら逃げよう…
すると、サチコさんが少しずつこちらに近いてきているのがわかる。
ガサガサ。ゴソゴソ。
やばいやばいやばいやばいやばい!
サチコさんはもう目の前だ。
逃げるか…?
いや…ここで起きているのがバレたら無理やりヤられてエンドの説が濃いだろう。
寝たフリだ寝たフリ…
ん?もしかしなくてもこれ詰んでね?
やばいやばいやばいやばいやばい!
お父さん…お母さん…弟よ…
タローはここで終わりかもしれません…
そして…
サチコさんは俺の隣に座った…
「タロー君も大変ね…こんな危ない森に連れてこられちゃうなんて…大丈夫よ…太郎君…未来ある若者は大人の私が守ってあげるわ…!だから今は少しでも休みなさい…」
サチコさんは俺を起こさないようにか小さな声で呟く。
サ、サチコさんっ…!
疑ってすまなかった…
あんたがこんないい奴だったなんて…
ちなみに隣にオネエのおっさんがいると、誤解が解けたとはいえ普通に怖くてあんまり寝付けませんでした。