初戦闘ー2
再び1番近くに居る人目掛けて駆け出す。
今度は震えによる鈍りは無い。そのまま近付いて顔面を殴りに行く。
僕が殴りに行った人はそれを大きく後ろに跳ぶ事で避けて、代わりに僕の体を斬り裂こうと剣を振り上げる。
それを2人目の時と同じように、更に一歩踏み込んで、左でアッバーカットを行う。
3人目の顎に1発入ったのを手袋越しに伝わる感触で認識したら、結果を見ずに次に1番近くに居る人を殴りに行く。
だけど、僕の快進撃がすんなり進んだのはここまでだった。
流石に3人も似た方法でやられれば、僕に懐に入られるのは不味いとわかったんだろう、すぐにボスさん(仮称)から『ガキが近付いて来たら避ける事を意識して確実に攻撃を当てられる時に攻撃しろ!ガキを取り囲め!』という指示が飛んだ。
途端に襲ってる人達の動きはある程度の統率の取れた物へと変わり、あっという間に囲まれた。
勿論僕も囲まれないように動いたけど、襲われてた人達を置いて此処からあまり離れられないのと、多勢に無勢で呆気なく取り囲まれてしまった。
「手古摺らせやがって…。大人しく殺されろ」
「御免被るね」
ボクシングの構えから中国拳法の構えにしながら答える。中国武術は全体的に1対1から1対多までを想定した武術が多い。理由はわからないけど、彼の国の歴史が武力によるものが多いからだろう。そして中国拳法に於ける組手は行くところまで行くとちょうど今のような状況になる。囲まれる前ならムエタイとか日本の古武術や合気のような動きでも良かったけど、囲まれればコッチの方が対処しやすい。
何より、僕の格闘技の経験とマウンテンフォレスト君からのアドバイスから、この後の相手の動きがある程度読める。
「!」
「読めてますよ!」
まずは狙う相手の後ろから奇襲して、
「ンなろう!」
「わかってますって!」
対処されれば次に背後を取った者がまた奇襲して、
「おい!一斉にやるぞ!」
「おう!」
「ま、待て!」
背後からの奇襲が2回連続で失敗したら、全員で攻撃する。
僕の経験的に言えば此処から更に、タイミングを少しずらしての攻撃、人数を増やして更にタイミングをずらした攻撃、それでも駄目なら一斉に、となると思ってたんだけど、どうやらマウンテンフォレスト君の予想の方が当たっていたらしい。
既に何度か実体験として実感してるけど、武術も何もしていない筈のマウンテンフォレスト君はよく相手の動きとかファンタジーの知識をよく知ってるよなぁ……。
もう会えないだろうけど、もし会う機会が有れば絶対にお礼しないと。
一斉に斬り掛かって来た人達を姿勢を低くして剣が到達する時間をずらして、足払いをすることで転倒させて完全に全員の剣の軌道をずらす。そして唯一斬り掛かって来なかったボスさん(仮称)とは逆方向にバック転をすることで間合いを取る。
不安定で危ないから出来ればやりたくなかったけど、左手の着地点は足払いして倒した人の1人の肌が露出してる胸にして。
両足で着地したと同時に、改めてボクシングの構えをする。
相手の素肌に手を当てる事を考えるのなら、やっぱりボクシングが1番効率が良い。
これで残る襲ってる人達は8人。