作戦立案
吐いて気絶して目覚めてから更に1週間が経った。
この間、僕はローラン達に『しばらく1人にさせてほしい』と伝えてほとんど狩りにも行かず、ひたすら付与系創造の力をより円滑に使えるようになるため想像力を鍛えた。
勿論一切の飲まず食わずは逃げる時の事も考えると避けたかったから、見張りのアクセロとルキアス以外が寝静まった夜中に、アジトを『ちょっと外の空気を吸いたいのと水とか補給しに行く』と伝える事で脱け出して夜の森の中を走り回った。
この時にそのまま街に行っても良かったけど、それだと見付かった時の報復が色んな意味で恐かったから、彼等を僕1人で圧倒出来るだけの力を手に入れるまでは素直に戻る事にした。
そうやって夜の森を走り回って、動物やモンスターを狩ったり川に行って水を水嚢に入れたりして準備をする。食べ物も水も1回に持ち運び出来る量と保管しておける量に限界が有ったから、ポシェットと水嚢に付与系創造の力でそれぞれ『容量大拡張』と『劣化完全阻止』と『重量大幅軽減』の3つを付与した。
これ等の能力は全部、あの有名な、アニメを観なかった僕でさえ知ってるような国民的アニメのお腹のポケットを再現するために頑張って付与した能力。だから全ての効果が合わさった事であのポケットとほとんど一緒。ただ、『容量大拡張』と『劣化完全阻止』の能力を優先したせいで『重量大幅軽減』は効果が弱くなってしまった。というのも、100キロをなんとか10分の1である10キロになるぐらいの効果しか付けられなくて、元の重さにすることは出来なかった。だから持ち運ぶ事を考えると、やっぱり限界が来るようになってしまった。
ポシェットに狩った動物やモンスターの肉を焼いただけの物を放り込み、水嚢には限界まで入れれるだけの川の水を入れる。それでアジトまで戻って来たら、それ等を隠れて食べながら付与系創造の練習。こんな生活を1週間続けた。
そう、1週間。ここに来てから最低14日間。この世界に来てからと言うなら15日間。つまり約半月が経った。半月もの間、僕は彼等『カラス』に軟禁状態にされてる。監禁ではないだけマシなんだろうけど、僕の精神衛生的に限界が近い。だから是が非でもそろそろ此処から脱出しないともたない。
焼いただけの肉は最低でも10日分は有る。水も節約すれば15日分は有る筈。武器と革鎧は…無いしこの際諦めるとして、荷物類はポシェットの中に全部詰めた。狩った動物やモンスターの牙とか爪とかもしまってある。
あとは『カラス』のメンバーが寝静まった頃か、略奪に向かった警戒が手薄の時に逃げ出すだけ。
………脱け出すだけって言ったけど、今のままだと不安だな…。何か、例えばお香のような、嗅いだらリラックスじゃないけど何かしらの効果が有るような何かを用意しないとな……。油断させるか完全に無力化させるかしないと。それに、よくよく考えてみればただ逃げるだけじゃ駄目だ。彼等が自然に自分達から見棄てるように見せないと、たぶん連れ戻される。
彼等の前で『足手纏い』と判断されるような状態になるのも危なそう……。たぶん普通に、文字通り切り捨てられる。
となると……、…………。
こういうとき、マウンテンフォレスト君はなんて言ってたかな…?
『乱戦だと敵も味方もある程度混乱する。だから多勢に無勢な時は第三勢力を呼び込むとか何でも良いから場を掻き乱して乱戦に持ち込んだ。勿論それで自分や仲間がより危なくなる事も有るかもしれないけど、少なからず生存率は上がると思うぞ』
……確かこんな事を言ってたかな?
場を掻き乱すか……。うん。案としては良いけど、現状では難しそう…。他に何か言ってたかな?
『知ってるかホープ!異世界には誘蛾灯みたいにモンスターや動物なんかを意図的に引き寄せるお香みたいなのが有るらしい!しかも、虫除けは無いらしいのにモンスターが寄ってこない匂袋なんかが有るらしいぞ!
これが有れば、素材も一杯!報酬も一杯でお金ガッポガッポだぞ!お前と俺が組めば、異世界で楽に金稼ぎ出来る!』
…………思い出したマウンテンフォレスト君の発言はともかく。コレだ。求めていた情報はコレだ。
………うん。よし。脱け出す算段が出来た。この作戦で行こう。たぶんこれで『カラス』から逃げられる。
作戦は決まった。あとはその準備をするだけだ。
僕は彼等から脱け出す為の最終準備に取り掛かった。
『容量大拡張』
ある程度密閉された空間が能力の対象。物理限界をある程度無視して付与された空間内の集積容量を大拡張する。
『劣化完全阻止』
対象または対象内の物の劣化を完全に阻止する。この能力が付与された対象または付与された空間内の物の風化や劣化は阻止されるが、物の時間だけは経過する。
『重量大幅軽減』
対象または対象内の総重量を大幅に軽減する。あくまで大幅に軽減だけなので重さが無くなった訳ではない。