始まりはいつもあの店で
朝の光が真っ直ぐに、しかし優しく射し込む喫茶店内。
私は一人で静かにコーヒーを飲んでいる。
ふと店の前の通りに目を向けると、まだ朝早いからだろうか、決して多くはない数の人たちが行き交っている。
季節は冬。
歩いている人たちの吐く息は白く、時折通る自動車も白い尾を引いて走っていく。
そろそろあの人が来る時間だろうか、と店内の時計を見ると時刻はまだ指定した時間の30分も前だった。
やはり早すぎたか、と思わず頬が緩む。
それもそうだ、彼女とはもう三ヶ月も会っていないのだから。
気持ちも行動も逸ってしまう。
それにしても早すぎたな、と再び窓の外に目を向けると先ほどとは様子が違う。
外の通りの人たちが皆、足を止め空を見上げているのだ。
車から降りて空を見上げる人までいた
店内からでは何があるのか見えず、外に出ようと椅子を引いたその時、大きなサイレンが響き渡った。
不安な気持ちが掻き立てられるような音だ。
もしかして国民保護サイレンとかいうものではないか?
もしそうだとしたらこのまま店内にいた方がいいのでは?と思ったが好奇心には抗えず店外に出た。
冬の冷気が肌を刺す。
空を見上げた。
そこにあったのは。
…世界は核の炎に包まれた