表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死出山怪奇少年探偵団ニ  作者: 無名人
2/4

突然の別れ 次々と事件発生?!

第三章 突然の別れ

瞬の書斎を除くと、中は散乱していた。うず高く本や卒業アルバムが積まれ、中には開きっぱなしのものもある。瞬はその奥ですすり泣いていた。

「晴人.....、どうして、どうしてなんだよ…。」

父親がこんなに崩れるのを見るのは初めてで、卓は掛ける言葉が見付からなかった。

そして、写真の方に目を向けた。色々な本や写真があったが、共通している部分があった。

「『青山晴人』?一体どういうことだろう?」

卓はそれに触れ記憶を読んだ。

......死出山のどこかだろうか、仲良く遊んでいる二人の少年の姿があった。卓は一方の子に見覚えがあった。それは、幼少期の瞬だった。

卓は目を開けて、前を見た。瞬は自分の存在には気づいてないらしく、ずっと俯いている。卓は静かに一階に降りて行った。


一階では珍しく由香が長電話していた。

「そうですか…、晴人君が…。いえ、私の方は大丈夫なんですが、瞬さんの方はかなり応えてて…。」

卓はその声から電話の主を探ろうとしたが、見当もつかなかった。

「…近々こちらにですか、分かりました。家族にも伝えておきますね。」

そして、受話器を置こうとした時、卓に気づいてこう言った。

「卓?今ね、真海さんと話してたの。卓もよけれは」

「あっ………、」

受話器は卓の手に渡った。それを当てると何処かで聞いた事あるような声が聞こえる。

「こ、こんにちは」

「こんにちは、君は卓君?」

「三歳にあった時以来ね、お久しぶり。」

「いえ…、あまり覚えてなくて…。」

「近々娘と一緒に日本に来るからね。」

「あっ…楽しみにしてます。」

そして、電話は切れてしまった。


二日後、真海は娘のエマと一緒に風見家にやって来た。

「真海さん、お久しぶりです!」

「突然こんな事になるなんて、思わなかったわ。」

「そういえば…、どうしていらっしゃったんですか?」

卓は状況をまるっきり把握してなかった。

「それは…、私の弟が亡くなったからよ。」

「弟?」

四人はリビングに来て、話を始めた。

「そういえば、卓は晴人君の事も知らなかったわね。」

「うん…、お父さんも言ってたけど結局誰なんだろうって、」

「晴人は私の弟で、瞬君と親友だったのよ。」

「親友…、そうか、それであんなに悲しんでたんだ…。」

ついこの間、亮也に引越しの話をされた卓には、なんとなくその気持ちが分かる。ただ、瞬の場合はそれが死、なのだ。もう二度と会えない。そんな悲しみは今の卓には全く想像がつかない程に重いものなのだろう。

「その晴人さんが、お亡くなりになられたんですか…。」

「うん、突然の事だから私達も驚いてるわ。」


由香は引き出しからアルバムを取り出した。

「この写真は?」

「以前、ここにいらした時に撮った写真だったわよね?」

「これ、小さい頃の卓だよ。」

「こんなに小さかったんだ…。」

卓はその写真に触れ、目を閉じた。意識が眠りにつき、過去の映像が浮かんで来る。

真海が前にこの家に来た時だろうか、由香、瞬、卓は笑って迎えている。そして、カメラでその写真を撮った所で映像は途切れた。


卓は目を開けて由香達を見た。

「卓君、どうしたの?」

卓は自分が持つ能力の説明をした。

「俺は、物が持つ記憶を読む力があるんです。」

「力って、瞬君の霊媒体質みたいなもの?」

「…かもしれませんね。」

真海は玄関にずっと飾られている絵を見つめた。 

「あれからずっと飾ってあるんだ。」

「真海さんの絵が好きなんで、後…、志手山の風景画が珍しいからですかね。」

「へぇ……。」

その絵は山から見た町の絵が描かれていた。自然がある中に住宅街や公園が広がり、線路も見える。

「今は見る影もありませんが、確かにこんな町でしたね。」

「そうだったんですか…。」

卓はさっきと同じようにこの絵の記憶を読んだ。ずっと使い続けたせいか、最近は、最初に比べて暴走する事は少なくなった。

何処かのアトリエだろうか、真海はそこで絵を描いている。ほとんどが風景画だったが、一部には人物画もあった。

日が経つにつれて絵はどんどんアトリエから消えていったが、人物画だけは残っていた。

卓は我に返った。

「真海さん、誰を描いていたんですか?」

「えっと…たまに依頼も合ったりするけど、瞬君もあったし晴人も描いたことあったかな…。それは自分の為に描いてたけど。」

「そうなんですか…。」

その後も、話は尽く事はなかったが、二階の瞬が降りてくる事はなかった。


夕飯を済ませ、卓達は二階に上がった。

「真海さんはこの空いてる部屋使って下さいね。」

「お母さん、エマさんは?」

「エマは適当な所で寝かせるから大丈夫よ。」

エマはいつの間にか、卓に付いてきていた。

そしてそのまま部屋に来てしまった。

「年上の…しかも女の子を部屋に入れるの初めてなんだけど。」

「へぇ、男子の部屋ってこうなってるんだ。」

水色の目と金髪といういかにも外国人という見た目のはずなのに、エマはもの凄く流暢に日本語を話した。

「と、いうかベッド一つしか無いよ?!どうやって寝るんですか?」

「大丈夫だよ、」

エマは膨らんだカバンの中から寝袋を取り出した。

「?!」

卓は目を丸くした。

「なんかあったらいけないから一応持ってきた。」

そしてそのまま寝てしまった。卓は気まずいような、変な気持ちになって、それに背中を向けるように眠りについた。


そして翌日、瞬が二階から降りて来た。

「今日が晴人のお葬式だったわね。」

「死出山に行くんですか?」

「そうね…、晴人の墓はそこにあるから。」

五人は死出山に向かった。町は既に朽ち果てて見る影を失っていたが、そこが瞬達の故郷である事に変わりはない。

冥徳寺に着くと和尚さんが迎えてくれた。

お葬式はすぐに終わった。晴人の遺体は火葬され、墓に埋められた。

卓は終始何も考えてなかった。

「知らない人の死を悲しむなんて、出来ないよね。」

「うん…。」

瞬は俯いたまま、誰とも口を聞かなかった。

「ねぇ、卓君には親友は居る?」

卓はそれを聞いて真っ先に思いついたのが探偵団の優月と亮也だった。

特に亮也とは最初はそうでもなかったが今はかけがえのない存在になっている。

そんな亮也と別れなければいけないというのが卓にとって辛く悲しい出来事だった。

「あの瞬君があんなに崩れるなんて…、晴人はそれだけ特別な存在だったのね…。」

真海の一言が今の卓に響いてしょうがなかった。


第四章

翌日になっても瞬は部屋に引きこもっていた。卓はそれを横目に優月の家に行く支度をする。

「ねぇ、何処に行くの?」

隣でエマがそんな事を聞いてきた。

「何処って、友達の家だよ。」

「私も行っていい?」

卓は顔をしかめた。

「遊びにいく訳じゃないですよ?」

「知ってるよ、探偵団でしょ?」

卓は何も言ってないはずなのにエマがその事を知ってるのに驚いた。

「どうして知ってるのですか?」

「由香さんに聞いたから、」

卓はため息を漏らした。

「付いてきていい?私も探偵やりたいんだ。」

「遊びでやってる訳じゃないですからね…」

そして、エマはそのまま卓について行った。


優月の家に着くと、二人が既に居た。

「遅かったね、ってこの人は?」

「卓、お前外国人の友達居たのかよ…、」

卓は慌てて訂正した。

「いや、この人はお母さんの友達の娘さんでエマ•フースォアさん。フランスと人日本人のハーフなんだよ。」

「君達が死出山怪奇少年探偵団のメンバー?よろしくね」

優月と亮也はその口から放たれる流暢な日本語にただただ驚いていた。

「よ、よろしくお願いします…。」

「そういえば亮也、今日の依頼は?」

「それがさ、大変なんだよ」

亮也はそう言ってパソコンの画面を見せた。

「なんか知らないけど突然依頼が殺到しちゃって…。一応父さんの所にも回したけど、それでもこんなに…」

卓はその中の一文を読んだ。

「部屋の中のものが突然散乱しだす…。」

「これ、この前幽霊騒ぎだって言ってたよね?」

「そういう事、どうやら今も続いているらしいんだ。」

四人はディスプレイを齧り付くように見た。

「とにかく、行ってみよう!」

卓達は家から出て事件があった家に向かった。


チャイムを鳴らして現れたのはこれまた若い女性だった。

「私は立川楓、中学の社会教師よ。あなた達の事は彩乃から聞いてるわ。」

「緑川さんの知り合いなんですか?」

「ええ、そうよ。」

「で、現場というのは…。」

「こちらよ、」

そして通された部屋は一人暮らしであるはずなのに無造作に散乱していた。

「どうして…こんな事に…。」

「それが私にも分からないのよ。彩乃みたいに霊的な何かだと思ったんだけど…。」

「あっ…そういえばあれから緑川さんはどうされたんですか?」

「卓君、あなたの読みは当たってた。お墓参りをしてハンカチを返した後は『声』が聞こえなくなったみたい。」

卓はほっと胸を撫でおろたその時、突然何かが崩れる音がした。

「立川さんはそういう心当たりはないですか?」

「さぁ…それが分からないのよ。」

卓は崩れ落ちた物の一つを持って見たが、何も怒らなかった。

「やっぱり霊的現象じゃない?それだったら私達手に負えないわよ。」 

「霊の事に関してだったらお父さんが一番詳しいのに…。」

とにかく、今の卓達には全く持って手に負えなかった。仕方なく今日はひとまず調査を終了して、別の所に移った。


次に向かったのは、青波台の海岸沿いだった。

そこで卓は紐に絡まって動けない猫を見つけた。それはなんと、中田のおばちゃんの飼い猫だったのだ。

「こんな所に居たなんて……。」

卓がそれを解こうとして紐に手をかけたその時、突然鈍器で殴られたような痛みが走り、意識が闇に落ちていった。

……それは、首吊り自殺を図ろうとしている青年の映像だった。紐はミシミシと音を立て、それに巻き付かれてある木の枝も折れそうになっている。

「卓君?」

優月の一言で卓は我に返った。

「あっ…久々に能力か暴走してた…。」

紐は亮也とエマが解いたらしく、猫は嬉しそうにしている。

「これは僕達で連れて行くから、その間二人は調査しといてよ。」

そして二人は行ってしまった。

「ねぇ、ここも事故現場なの?」

よく見ると、山側の道のガードレールが曲がっている。

「ここで前交通事故があって…、ってあれ?」

卓は妙な感覚を覚えた。

「そういえば…、晴人さんってここで死んだっけ…。なんでこんな山道で?」

「卓、どうしたの?」

「いや、さっきの映像に映ってた人、晴人さんに似てたんだよ…。」

「えっ?!どういう事?」

卓は海辺の丘に生えている大木を見た。

「あの木『光の樹』って呼ばれてたよね?」

すると、耳の奥から声が聞こえて来た。

(ねぇ、どうしてここって『光の樹』って呼ばれてるんだろうね)

(さぁ…どうしてだろうね)

(ん?)

(フフフッ、なんか君が面白くて、な……。)

そして何処かから風が吹いてきた。

「この風は…、」

「風なんて感じないよ?」

「えっ?!」

卓にしか感じない風は何処かへ導くように吹いている。

「行かなきゃ…」

そして一目散に走り出した。

「そんな、ちょっと待ってよ!」

優月は慌てて追いかけた。その時亮也とエマに出会い三人揃って走っていく。

卓は風が吹き込む場所を探していた。


瞬は書斎でずっと晴人の事を考えていた。

幼稚園に入る前、二人は公園で知り合った。最初は真海の背中に隠れ、積極的に関わろうとしなかったが、瞬の持ち前の笑顔もあってだんだん打ち解けて来た。両親の問題で人間不信になったんだね時も、晴人は瞬を嫌いにならなかった。それからというもの二人はずっと側に居た。

…そんなある日、晴人は突然瞬に別れを告げた。それからは音沙汰もない中、それでもずっと晴人を信じて待っていた。

失って初めてその存在が大きく、かけがえのないものと気づいた。

瞬は今まで死出山でたくさんの人の死を見てきたが、大切な人を、親友を失った時は特別な感情がある。

「晴人…、どうして、どうしてだよ…。死んだ人にこんなに会いたいって思った事は無いよ。でも、今の僕は晴人どころか他の霊も見えなくなったらしい…。」

今の瞬には見えないが、その周囲には大量の霊が寄せ集まっていた。

その時、扉が開いた。

「お父さん?!」

「何これ、この部屋無茶苦茶寒い!」

冷房がないはずのこの部屋は真冬のように寒かった。

「風が吹き込んでる…、ひょっとしてこの風はお父さんの?!」

卓は部屋の奥の方に居る瞬を見つめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ