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―――巣―――数馬の部屋
深夜1時。
静かな夜の涼しさが心地よい。
ほぼ砂漠の星の為、四季がないのだが、時間による気温の変化を実感する。
部屋の窓は空き、カーテンが揺れている。
机に突っ伏して寝ている数馬の口からは、よだれが垂れている。
「寒っ! あー寝ちゃってたか……」
身震いをし、毛布を取りに行く
。
「ふーーー……」
(こうしてボー……とするの久しぶりだな)
「灯さん……」
窓から見える星を見上げながら、ふとつぶやく。
(灯さん……俺が必ず……)
目を瞑ると、灯との思い出が脳裏に浮かぶ
ドンドンドン
けたたましくドアを叩く音が響く。
「数馬様!大変です海様が!」
相当急いでいたのか海の付き人が肩で息をしていた。
「えっ。父さんが? 」
不吉な予感を感じ、すぐさま父の部屋へ向かう。
荒々しくドアを開いた。
「父さん!」
「か、数馬………」
数馬の目に飛び込んできたのは、頭から血を流し憎獣に抱かれる父だった。
「父さんから離れろおおおおお! 」
とっさに懐から短剣を取り出し憎獣に襲いかかる。
しかし、憎獣はとても身軽に動き回避してしまう。
憎獣は白い毛に覆われていて目らしき赤い光が二つこちらを見ていることだけがわかる。
「チチヲトリモドシタケレバ、モリノオクマデコイ」
禍々しい低い声で、語ると海を抱いたまま窓を破り闇に消えた。
和馬もすぐに憎獣の跡を追い、窓から外へ飛び降りたが、すでに姿が見えなくなっていた。
「父さあああああん! 」
和馬は力無く崩れ落ちた。
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ーーー八城 千尋の部屋ーーー
自室で寝息をたてる千尋。和馬の叫び声で飛び起きる。
「か、数馬? 」
尋常ではない叫び声だった。急いで戦闘服に切り替える。
「起動! 」
言葉と共に緑色の光が飛び散る。
ネオングリーンと黒の鎧を纏い同系色の右手の手袋をキュッと引っ張る。
「かずま!!! 」
ドアを荒々しく開けると窓が開いていることに気づく。
「外か!」
素早く飛び降りると、数馬の姿が見えない。
「間に合わなかったか……」
ふと視線を下に落とすと、光るものが落ちていた。
「これは、数馬のか……?」
赤のピアスがきらりと光る。
「グアアアアアアアアアア!!! 」
「数馬! 」
目の前の森で叫び声がしたので茂みに飛び込む。
数馬が憎獣の群れに取り囲まれていた。
「黒水!」
黒い水が塊になって憎獣を襲う。
「グガッ!」
憎獣の群れを黒水が蹴散らしていく。
憎獣の外見は狼のような獣の姿をしており、毛が黒く目が赤い種が多いのだが、
海を誘拐した憎獣のように違う種類の憎獣も発見されている。
群れの真ん中で横たわる数馬。
「お前ら消えろおおお!」
倒れた、数馬を抱きかかえると群れに威嚇をする。
「竜水縛!」
水が竜の形になり突撃し、群れを囲って縛りこむ。
「放て!」
水は竜巻のようになり、憎獣達は飛ばされていった。