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――八城 華の部屋――
「華ちゃん……また妖がオアシスの近くに出たみたい……」
弱弱しそうに眉を八の字にさせ睡蓮が華に話しかける。
瞳と同じ水色をしたの涼しげな髪を高い位置で二つに結んでおり、華と同じくらいの背丈をした小柄な少女である。
妖は動物に近い姿をしているが、動物より凶暴性が高い種も多く敵視されている。
八城は砂漠にあり日中は砂嵐が吹き荒れている。なので鵺は八城にいる時間がとても長い。
夜叉の生活拠点の巣の周辺は緑豊かであり、森の動物などを狩ったりしている。反して鵺の住んでいる八城は砂漠に囲まれており食料は、長年の研究を重ね八城の中で農作物や家畜を管理している。
食料不足にならないよう管理されているのだが、薬や新たな食糧を開発するときや、不足している材料などは砂漠の中で唯一植物や動物がいるオアシスに探しに行かなければならない。
多少不便ではあるがオアシスには水と植物もあり、オアシスにしかない鉱物もあり武器を作るときなどに役立つ。砂漠の生き物もオアシスに集まるため、そこで肉を補充する。
その方法で長年生活してきたのだが、近年妖という魔物が出現するようになった。
ある程度の自給自足は八城の中で、できているのだが、オアシスでしか手に入らない資源もあり、妖と戦いをやむなく強いられている状況だ。
「妖か……先月のオアシス遠征のときに何人犠牲になったか……
」
藍色の瞳が深く沈む。
「華ちゃんごめんね。……母様のために……」
「睡蓮の母様には小さいころからお世話になった。必助けたい」
「睡蓮、母様の様子を見てくる」
華奢な後姿を見送り、華はゴーグルを装着した。
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外は暗くなり、満天の星空がとても綺麗だ。
ゆっくりと自宅の玄関を開ける。
薄暗い我が家は今日も様々な匂いが充満している。
薄暗い闇の中を進んでいく。
ドアの下から光が漏れている。
「母様?」
カードキ―を通すと母の姿が映る。
「睡蓮?こんな夜中にどうしたの?」
「母様の具合が心配で……」
母の顔色は、悪くなく、いつもと様子は変わらない。
睡蓮と同じ水色の髪と瞳は部屋の灯りに照らされて輝いている。
「最近調子がいいみたい。今日は睡蓮の好きな氷菓も作れたよ。冷蔵庫に入っているから食べてね。」
母の笑顔にホッと胸を撫で下ろす。
「でも、最近夜の発作も急に起こったりするから、心配だよ」
「睡蓮は本当に心配性だねえ。科学討論会も控えているのだから体を整えないと」
「本当に? 少しでも体調に変化があったらすぐに教えてね」
「わかったよ。早く寝るのよ」
「ありがとう。おやすみ」
いつもと変わらない母だったが、なぜか胸騒ぎがした。