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空白のエクソドス  作者: 葛城透
2/18

2


夜叉には、巣という住処すみかがある。

惑星CR53はほぼ砂漠化してしまったが、まだかろうじて、緑が残る場所があるのだ


ー巣周辺の野原ー


そめるは、ぼんやりと草を見つめていた。

何かを考えたいときに、外に出て風にあたることにしている。


そめるちゃん!」


ふと、急に声を掛けられる。


しのぶ


若草色の肩、青い瞳。中性的な風貌。

しのぶは染のことをいつも気にかけてくれる。


「ほら、今日の夕飯の材料だよ。今日の、当番僕達だからね」


「ああ! そうだったー! 忘れてた。いつもありがとうねしのぶ


「そういえば彼は元気?」


「彼? ……ああ!千尋のこと? どうなんだろうね……最近はたまにしか顔見ないしね。アイツ、無茶するから心配なんだけどさ」


「染ちゃんには、僕がいるから心配ないよー!」

 

無邪気に笑いながら、染の肩を組む。


「あはは。ありがとうね。今日のご飯何にしようか?何がいいかな……」


「前と同じでいい気もするけど、ちょっと考えようか! そういえば最近鵺ぬえの気になる噂があってね」


染と忍は、巣に戻って歩いて行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー巣 広間ー


「おっ。ちーちゃん!」


千尋に気さくに声をかける彼は、数馬かずま

額が見える短髪のチョコレート色の毛、そして毛と同じ色の瞳が、柔らかい雰囲気を醸し出している。

身長は千尋より高く、頼り甲斐のある外見だ。


「数馬!久しぶり。遠征えんせいに行っていたのか?」


「ちょっと巣の周辺のパトロールをしてたんだ。最近、失踪事件増えてるだろ?人狼に襲われたって話も聞くし、物騒なんだよな」


ぬえとも冷戦状態だしな……」


「そうそう。鵺に関しては、ちーちゃんも気になるところが沢山あると思うけど、絶対に1人で頑張ろうとするなよ」


「わかってるよ。俺はまだまだ死ねないからな」


「そんなこと言ってこの間も……」


和馬は眉間に皺を寄せ千尋に駆け寄った。


「おい数馬!」


低い声が響いた。数馬の父であり、夜叉のおさである、天霧あまぎりかい


「ち、父上……」


海は黒い長髪を一つに束ねていた。大きな黒い瞳に圧倒されてしまう。


「これから定例会議をするぞ。お前は俺の跡を継ぐ身。気を引き締めろ」


「はい……」


数馬はうつむき肩をすくめた。海様(かいさまと話すときいつも辛そうだ。

千尋は、いつも思っていた。

千尋の前では朗らかな数馬だが、まだ千尋にも言えない悩みがあるのかもしれない。


数馬は海の後についていった。


千尋は、ただ静かに数馬の後姿を見送った。

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