18
巣の目の前に森は広がっている。
森まで行く道は簡単だが、森の中は禁忌になっていたため過去に森に行った者の経験談を聞くことはできない。
「ついにこの中にはいるんだな……」
数馬はゴクリと唾をのむ。
鬱蒼とした木の塊が目の前に広がり圧倒される。
「いくぞ」
「わっ。ちーちゃんひっぱるなよ」
尻込みする数馬を見ていられなくなり、先手を打つ。
その後ろで、険しい表情をする染がいた。
(ちーちゃんを守るって決めたのに大丈夫なのかな……こんな禁断の地に入るって……)
心の声が顔に出ており、眉間にしわが寄る。
「怖い?」
隣にいた忍が顔を覗き込む。
「ううん。自分で決めたことだから」
忍と目を合わさずに千尋の後姿を真っ直ぐ見ながら答える。
「そっか…………」
染は自分を見ていない。その事実の虚しさ。
でも、ここで染と共に行かなければ絶対に後悔する。
独りよがりの想いだとしても、突き進む。忍はそう決めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
森の中は少しでも道を間違えると暗闇に吞まれてしまう。
「森の中に入った記録が見つからなかった。何か手がかりになるものはあるのか?」
「……ないね」
「だよな………でも、ただ闇雲に歩いているだけでは海様がいる場所にたどりつけないだろ」
千尋は上着のポケットから金色のコンパスを取り出した。
「天眼来訪」
呪文を唱えながら、袋に入れていた毛のようなものをコンパスの上に落とす。
毛は吸い込まれ、一筋の光が森の国へと差し込む。
「あれ……このコンパス……」
数馬は目を見開きながら呟く。
「そう姉ちゃんの。ちゃんと使うのは初めてかな」
「凄い! これで海様のところに迷わずに行けるね!」
染が明るく答える。
「迷っていられないからな。使い方間違えるのが怖くてなかなか使えなかったんだ」
「……ちーちゃんの本気をかんじたぜ! 絶対父さんを助ける! ……道がわかれば相棒で行った方が早いね。起動」
数馬の体全体が光に包まれ若草色の戦闘服に変化し、同じ色の機体が現れる。
「「起動! 」」
千尋と染は同時に叫び、服は戦闘服に変わり、機体が現れる。
「魔獣来光」
右手の人差し指、中指以外の指は折り曲げ、右腕を前に突き出しながら忍は唱える。
象のように大きい金色の鷲のような幻獣が舞い降りる。
4人は顔を見合わせ光の導く方へ進んでいった。