17
ー巣 玄関前広間 AM5時ー
朝の澄んだ空気が体に染みる。
「さて、行きますかね」
長身の数馬でも大きく感じる程のリュックを背負いながら、眠そうな2人に声を掛ける。
「鴉のメンテは終わっております。リーダー」
千尋は敬礼して見せる。
「ついに森の中に行くんだね。絶対、海様を助け出す!」
両手を握りしめ、染は気合を入れる。
「染ちゃん!」
聞きなれた声が聞こえる。
「忍!?」
「あれ……君は、花摘みの……よく染といるところを見掛けるよ」
「数馬様…僕の事ご存じだったんですね」
忍は伏し目がちに笑った。
ふと、染の後ろで荷物を担いでいる千尋に視線を向ける。
「貴方は……戦闘員の方ですか」
「え……ああ。そうだけども……」
「僕は君を知っています。染さんの幼馴染さんでしたっけ?」
「そうだよー! で、忍はこんなに朝早くからどうしたの?」
「……僕も、連れて行ってください」
「……えっ……」
「染ちゃんびっくりさせてごめんね。僕は起動は使えないけど……」
忍は、右手を前に差し出し
「魔獣来光」
と唱えた。
右手根化指の黄色の指輪が光を放ち、森の方から、大人2人分くらいの大きさの緑の目をした鳥のような生き物が忍の前に降り立つ。
「幻獣を呼び出すことができます」
3人とも目の前の幻獣を見て唖然とする。
幻獣とは、警戒心が強く人前に滅多に姿を現さない。
皆、幻獣を見るのは初めてで、その神聖さに圧倒されていた。
「幻獣は人に懐かないと聞いていたのに自由に呼び寄せられるのは凄いな」
数馬は関心した表情だ。
「人前でこれを見せるのは初めてです……あまり知られたくないので」
「そんな危険を冒してまで……確かに憎獣のとの戦闘は未知数だから幻獣の助けはとても助かる」
「数馬様にそう言っていただけるのは、光栄です」
「千尋と染はどう思う?」
「……いいんじゃないかな。戦力は多い方がいいし」
出発の準備を終えた千尋は、ぶっきらぼうに答える。
「染はどう思う?」
「………………」
染は黙り込む。
「染ちゃん、僕頑張るよ」
「……忍はもう決めたんだね……」
「じゃあ出発だな」
空には雲一つなく澄んだ青空が広がる。
4人の後ろ姿がどんどん遠くなっていく。