15
海様がいなくなった。
最近人が憎獣化したり物騒な事件が多い。
何かしらの事が起こってもおかしくない。
戦士の千尋が戦場に行くのも時間の問題だと感じていた。
「千尋……」
広間で朝礼を待っていると数馬が壇上に上がり話し始めた。
「海様が憎獣に!?」
想像できない事態に、胸が痛くなる。
「……もし俺たちと一緒に来てくれる方がいたら、この後残ってください」
染も起動を使える。
千尋や数馬と違い、染は防御や回復の魔法を主としている。
攻撃は、染の戦闘機から繰り出される銃弾が、メインだ。
(私が一緒について行って、千尋の足を引っ張ることにならないかな……)
彼の力になりたい。でも、自分の存在がお荷物にはなりたくない。
「千尋と話したい」
染は俯いていた顔を上げて千尋の部屋へ向かった。
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ドアを叩く音が響く
「千尋。私、染」
ドアを開くスイッチを押すとドアが開く。
「染。遅くにどうした。今、夜は巣の中でも危険だ。部屋が1番安心だから部屋にいてくれ」
意外な訪問者に目を見開いた。
「わっ私も、海様を助けに行きたい」
「染の魔法は戦闘向きじゃやない。回復の薬屋食料は十分に用意するつもりだ」
「でもっ」
「もう遅いから……部屋まで送るよ」
背中を押され部屋から出される。
「だから聞けって!!!!」
染は、大声を出し千尋の胸倉を掴んだ。目の前には緋色の瞳。
「私はっ、千尋の事が心配なんだよ! いつも私に何も言ってくれない。今、一緒に行かなければ千尋がいなくなってしまう気がして……」
いつも引き下がってきた。その度に千尋の安否が気になり眠れなかった。
千尋の戦闘のときは、なるべく染も出動していた。
「私、千尋だけは死なせたくない! 死なせない! 」
「……今回の敵は予想不能だ。染のことも守れるかわからない」
「私が千尋を守る。」
緋色の瞳に真っ直ぐに見つめられて吸い込まれそうになる。
「今回憎獣の核心に触れられる可能性もある。そしたら灯さんの手がかりも見つかるかも」
「…………無理は、するなよ」
染の固い決意に、千尋は身を委ねることにした。