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ー八城科学棟食料プラントーAM0時ー
「今のところ順調なようだな。何か困ったことなどあるか?」
「仁様のおかげで全ては順調であります」
ずり下がっている眼鏡を直しながら睡蓮の父、槐が笑った。
「栄養がいいのだな」
片頬を上げながら答える。
「ありがとうございます」
「期待しているぞ」
長い髪を揺らし仁は去った。
「もう1年になりますか……」
水槽のような水が入った縦長の巨大な容器に手を触れ話しかける。
ガタッ
後ろから、何かが落ちた後が聞こえた。
「誰だ!」
振り向くと棚からファイルが数冊落ちていた。
無言でファイルを拾いに行く。
「はて? これは何でしょう?」
桃色の髪の毛を摘みながら槐は自分の席に戻った。
「どこまで見られましたかねえ……」
長い髪に隠れて表情は見えない。
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「どうしようどうしようどうしようどうしよう。」
冷や汗が顔から滴り落ちる。
水槽の中にいた人は………
睡蓮の母様だった。
華は桜色の髪を振り乱してひたすら走る。
夜の砂漠は真っ暗で何も見えない。
当然暗闇の中に紫の閃光が走り肩に痛みが走る。
「ックッ……妖か。起動!」
桜色の光が飛び散ると光と同じ色の鎧が華を包む。
「舞桜!」
手を振る操作に沿って花が舞い散る。
「キュウウウウ」
現れたのは兎を人型まで大きくしたような外見の生き物で、目は釣り目で大きくて赤い。
口から覗くする鋭い歯が狂気を感じる。
妖は昔からこの星に住みついている生き物で日中は小さく大人しい姿だが夜になると狩猟形態になり
巨大になり狂暴化する。ここ最近日中でも妖が狂暴化しオアシスで狩りをし暴れている。
何かしらの生態変化が起きているのだ。
「避けられたか」
華は、目の前に現れた妖の姿を見て、後ずさりをした。