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ST200年。
ここは、惑星CR53にある、犀という国。
自然が多く、暮らしやすい穏やかな国だった。
この国には、二つの組織があり、その組織は100年前から対立していた。
夜叉と鵼
この二大組織が人々の生活に大きく影響していたのであった。
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風の音だけが聞こえる。
晴れた日に、原っぱで寝ることが好きだ。
何も考えずに風の音だけを聞けるからだ。
肩にかかるくらいの麦色の髪と空色の瞳。
彼の名は、千尋。
千尋の耳元で、機械が音をたてる
「……おい!ちーちゃん! サボってんじゃないだろうな?」
「……はいはーい……サボってないですよ……」
気怠そうに答え、通信を切る。
千尋はまた、再度目を閉じようとした。
「ちーーー、ひーーー、ろーーーくーん!」
空から声が聞こえた。
純白…だったが、今は薄汚れた、小型戦闘機に彼女は乗っていた。
凛とした声、長い漆黒の髪に芯の強い緋色の瞳。
彼女の名は、染。
「なーにサボってるんだよー! 働け! 働けー!」
そう言いながら、染は去っていった。
「うーん……みんな俺の眠りを邪魔するのか……」
千尋は、大きく伸びをすると、おもむろに頭の上にあげていたゴーグルを装着した。
「これをつけるとシャッキッとする……」
千尋が歩きだそうとした、そのときだ。
ドバババババババババババ!
耳を切り裂く爆音と共に,上から光の弾が降ってきた。
「んー戦闘開始のようだね……でも、やる気の出ない相手っぽいけど」
「ちひろおおおおおおおおおお!」
桜色のウエーブのかかった肩までの髪。
藍色の瞳は意思の強さを感じさせる。彼女は、髪の色と同じ桜色の戦闘機に乗っていた。
「華。ごっこ遊びは終わりにしよう。いつもいつも俺のこと狙ってるけど、実は、俺のこと好きなのか?」
「ち、違うわ! 馬鹿者! お前のことは、華も兄様も疎ましいと思っているわ!」
「怪我しないとわからないみたいだから……」
千尋はゴーグルの右横にあるスイッチを押す。
衝撃音と共に黒い小型戦闘機が出現した。
その姿、まるで鴉
「悪いけど俺、死ぬ気ないから」
千尋は、鴉に飛び乗った。
「舞桜!」
桜の花びらのような刃が千尋めがけて牙を剥く。
「ブラックシールド」
鴉の周りに黒いバリアが張られる。
無数の刃を全て跳ね返す
「小癪な!!」
「華。お前はまだ甘いよ。黒水!」
黒い水が、華の戦闘機を取り囲む。
「わっ!なんだこれは!! 得体の知れない技!」
「その水に囲まれると、相手の動きを止める」
「くっっっっ。ふざけるな!また新たな魔術か!! 兄様にご報告せっ、せねばばば。」
華はそう言い残すとをしてその場を去った。
「ほんっと。落ち着かねーよなー……」
千尋は、華の残像を見送った。