始まり
第一話 始まり
ピーピーと目覚ましがなっているのに気付かず、ぐっすりとイビキをかいて寝ているのは、今年から小学6年生になった正太だ。正太は身長が低く痩せていて髪の毛は長く、耳の下のところまで伸びている。正太は目覚ましに気が付き、あわてて目覚ましを止めた。正太は、とっさに時計を見たが、まだ学校に行く準備が充分できるぐらい時間があった。正太は準備を済ませ、朝食を食べ始めた。テレビでは、めざましテレビが流れていて、キャスト達が笑いながら、話をしていた。朝食を食べ終えた正太は、ランドセルを背負い、玄関で母親に「いってきまーす」と言うと母親はにっこりと「いってらっしゃい」と言ってくれた。正太は練馬区にある小学校に通っていて、正太のクラスの担任の田中先生は、何でも教えてくれて、優しいので正太はそんな先生が好きだ。6時間目が終わって、今日はクラブがないので、正太はそのまま家に帰った。家に帰ると、母親が明るく「お帰りなさい」と言ってくれたので、正太は嬉しかった。今日も無事一日が終わり、正太はその夜ぐっすりと寝た。この時は、まだこれから自分が恐怖に陥るなど正太は知るよしもなかった。
第二話 謎の生命体
学校が終わり、正太は帰り友達のじゅん(幼稚園のときから仲が良くて遊んでいる)と一緒に歩いていた。じゅんは、背が正太より少し高くて、幼いときから人に優しく、勉強ができる方なので、正太はじゅんのそういう所が好きだ。正太とじゅんは同じ住宅街に住んでおり、家が近いのだ。正太はじゅんと話しているときが、他の誰と話しているときよりも楽しくて、好きだ。今日も帰りの道を笑いながら、正太とじゅんは歩いていた。正太は話していると、突然じゅんの表情が険しくなるのが分かった。正太が「どうしたの?」と尋ねると、じゅんは表情をもとに戻し「いいや、大丈夫。気のせいだから」と答えた。二人の間にしばらく沈黙が走り、それから最初に口を開いたのはじゅんだった。「今日は楽しかったよ、また今度一緒に帰ろうぜ。」正太も「おう、またな!」と言って、二人は住宅街の分かれ道で正太は右に、じゅんは左へと別れていった。正太はさっきじゅんが言っていた「気のせい」というのが気になっていたが、もうじゅんは遠くを歩いていて、聞くことはできなかった。
夜になり、正太が漢字ドリルをやっていると、携帯がチャリン チャリンと音をたてて振動し始めた。正太はじゅんからだと分かると、電話に出た。
それから数分後、夜の9時を回っている中で正太は親に内緒で家を抜け出し学校の裏にある、裏山まで走った。外は暗くて、人通りもないので正太は少し怖かった。でも、大切な友達が裏山で待っていると思うと、行くしかなかった。裏山へ着き、家から持ってきた小型のライトをつけながら山道を登っていくとじゅんがこっちに向かって手をふってるのが見えた。(じゅんも手には小型のライトを握っていた。)正太はじゅんの方へ駆け寄るとなんとそこには、よくSF映画で見るような円盤が倒れていて、高さは2m位あった。正太はこれがじゅんが仕込んだイタズラだと思った。(じゅんは、ドッキリが昔から好きだった。)第一、こんな円盤が本当にあるはずがないと正太は思っていた。「どうだ?驚いたろ?」じゅんはそう言うと正太から、円盤に視線を移した。「悪い。良いリアクションがとれなくて、、。」正太は申し訳なさそうにそう言った。するとじゅんは「いや、これ俺がやったんじゃないんだ。」と言った。正太はそのことを聞くと、目を丸くした。今この状況がじゅんの作ったものではなく、現実のものだということが信じられなかった。「ちょっと中見てみようぜ。」とじゅんは言うと、入り口を探し始めた。正太はさっきまでじゅんの手のこったドッキリかと思い、うまく反応できず申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、いまはこの円盤が何処から落ちてきたのか? 中に何かいるのではないか?と妙な好奇心が湧いてきたので、じゅんと一緒に入り口を探すことにした。
10分ぐらいは経ったような気がする、じゅんがようやく何か発見して声をあげた。正太が見てみると、それは入り口ではなく円盤が地面に叩きつけられた衝撃で開いた穴だった。穴の中は暗く、じゅんはさっそく小型のライトを握りしめながら、そこに入ろうとした。正太もじゅんの後に続いた。ピッピッと何かの機械の音が暗闇の中から聞こえた。きっと壊れかけの機械がなっているのだろうと二人(正太とじゅん)は思った。奥に行くにつれ段々と狭くなってきた。前を照らすライトが唯一の救いだった。とうとう行き止まりまで来てしまい、戻ることになった。すると「グゥウゥ、、」と声が後ろから聞こえてきて、正太はじゅんに「今なんか、聞こえなかった?」と聞くと、「いや、何も。」とじゅんは返した。正太はふと何かの動物かと思ったが、その考えは次の瞬間頭から消えた。じゅんの、ライトを握っている手が震えているのに気が付いた正太は「どうしたの?」と尋ねると、じゅんの視線を追っていった。すると、そこには正太がいままでに見たことのない姿があった。それは同時に、正太を恐怖に陥れた。
第三話 逃げなきゃ
二人(正太とじゅん)は、その場から動くことができなかった。じゅんが持っているライトはちょうど前にいる、得体の知れない何かの足を照らしていた。じゅんは「に、、にげ、、なきゃ。」と怯えた声でそう言うと、正太の手を引っ張り全速力で走った。正太はその勢いで転びそうになったが、うまく体制を崩さないようにして走った。後ろから「グーゥグアーー」という恐ろしく、高い声がした。正太が後ろを振り向くと、すぐ後ろからさっきの得体の知れないヤツが追いかけてくるのが見えた。「もっと、、ハア早く!ハア追いつかれる!」正太は息を切らせながら声を張り上げた。じゅんはもっとスピードをあげ、正太はじゅんの手から離されそうになった。
数分後、裏山を抜け出して二人(正太とじゅん)は住宅街に戻ってきた。正太はじゅんと別れると、自分の家のドアをゆっくり開け、音を立てず二階の自分の部屋まで行った。正太はその夜、またあのバケモノが自分の部屋に現れたらと思うと、なかなか寝付けなかった。
次の日学校はいつも通りあって、じゅんもいつも通り来た。クラスの皆(正太とじゅん以外)は、裏山の円盤のことにまだ気が付いていないみたいだ。チャイムが鳴り授業が始まった。授業中正太は昨日のことで頭がいっぱいだった。あの円盤は何だったのか?あの生物は何だったのか?誰も本当に気が付いていないのか?そんなことを考えていると授業はあっという間に終わってしまった。正太はまだノートに半分しかうつしていなかったので、慌てて黒板の字が消される前に残りをうつした。