第一章 日の当たるこの場所で-7
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とある通信記録より抜粋。
「へえ、そう。アンタ、そんなこと言われたんだ。なかなか面白いじゃない、その、レイフ・クリケットって人」
『……』
「そりゃ知ってるわよ。超越者序列二位。治安維持隊最優の兵士。鉄壁の不沈艦。人間を超えし人間。みんな、それらしい二つ名を考えるのに必死なのね。二位でこれなら一位は神か」
『……』
「そんなこと言われても困るわよ。噂は噂よ。でも……『救世主』、ね。随分と的確じゃない」
『……』
「うーん。予想通りというよりは、言われてみればよ。確かにそんな感じがする。不思議じゃない。ようはね。アンタは、真面目過ぎるのよ。あー、色々とスッキリした」
『……』
「だってそうじゃない。アンタの自分に対する異様な厳しさも、他者に対するよそよそしさも、身内に対するお人好しさも、全部説明できるじゃないそれで」
『……』
「ま、そうね。気がつかないわよ普通。というか、『救世主』なんて堅苦しく考える必要はないんじゃない? つまりアンタは、大切な人を守りたいヒーローだった。そういうことでしょ?」
『……』
「違うの? 面倒くさいわね、アンタ」
『……』
「う。いや、五月の件は悪かったわよ。本当に。……てか、話逸らさないの! 何にせよ、そんな夢を追いかけるのはお勧めしないわ」
『……』
「そうね。世界を救おうなんて奴は、詐欺師か悪魔のどちらかよ。あんまり深く考えず、目の前のことに集中することね。うん。それじゃ。……と、最後に一つだけ」
『……?』
「ちゃんと帰って来なさいよ。死んだら顔面焼いて身元不明にしてやるんだから」
『……』
「うん。約束よ。それじゃ、おやすみなさい」




