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おまけ





※世界観及びキャラの崩壊が苦手な方は、この先読むべからず。





















NG集




Moment 1


 誰かが、何かを否定した。


 全てを諦めて、大切な物を捨て、理不尽に屈し、心臓が止まる瞬間までを惰性的に過ごしていくのが人生だと、それを受け入れることが成長なのだと、そう断言した。


「当然のことだけど、僕はそれに納得しないよ。だって、まだ子供だからね」


「……」


「君には夢があったはずだ! 透明人間になって、女湯を覗くんじゃなかったの!?」


「そんな浅ましい夢しか持たない主人公がいてたまるか!」




プロローグ


「さっさと要件を言いなさい。今仕事中なの」


『そうなのか。学生警備ってのは大変だなあ、オイ。じゃ、手短に済ますとするか』


 御影はそこで急に真面目な顔つきになると、エボニーのことをまっすぐに見つめて言った。


『たった今、ヒロインっぽい奴を手に入れたんだけど、どう思う?』


「ぽいだけじゃないの?」


「だよな!」




Memory 1


 後ろからささやき声が聞こえた。振り返ると、エボが頬杖をつきながらこちらを見つめて、にやにやと笑っていた。


「授業がつまんなくても、それを態度にだしちゃだめじゃん。そんなんだから、カナタはバカナタって呼ばれるのよ」


「違うよ。僕は……先生がカツラかどうか考えていただけだよ!」


「バカね。カツラに決まってるじゃない」


「二人共廊下に立ってろッ!」




一章





 しかし彼は、そのどれも選ばなかった。選ぶことが、できなかった。


 代わりに彼は、自分でもなぜそのようなことを聞くのかもわからないままに、一つの、なんとも間の抜けた、単純な問いかけをしていた。


「おい、お前。……一体、何を読んでいる」


「送り狼と三匹のメス豚」


「作者誰だそれッ!?」





「でも、君がノゾムをどうにかしようと考えていなかったってことは、すぐにわかったよ。だって、普通攫った相手を拘束もせずに放置はしないでしょ。誘拐犯失格だよ。少年探偵団にいつも逃げられる、怪人二十面相よりも無能だよ」


「ああそうだな。本当に、お前を縛り付けとけばよかったと後悔しているところだよ、俺は」


「嘘! マジ!? 今からでもやってよ!」


「どんなマゾだよお前!?」





 お客様のお望みどおりに超能力者である御影奏多は、目を瞑った状態で、ホログラムのルークに対し少し早口で屋敷周りの状況を報告していた。


「この家を中心として半径二百メートルの距離に四名。均等に分散して屋敷を包囲している。全員棒状の何かを手に持っているが、これは虫取り網とみて間違いないだろう。」


『……何だって?』


「首から下げてるのは虫かごだな」


『ただの興味本位で侵入してきた子供じゃないか!』





『加えて、君は命令と受け取ったようだが、君に対する要望を、強制力のない『依頼』であると定義づけるものとする。私たちの意思に関係なく、彼女を助けるか否かの判断は君に任せよう。そして、君が見事彼女を守り切った暁には……』


 ルークは椅子に深々と腰かけると、いたずらな表情となって言った。


『オオクワガタをあげよう』


「俺を外のガキと一緒にするな!」




Memory 2


 何とも言えないけだるさが不意におそってきて、彼は思わず目を閉じた。昼寝日和だな、と、彼はぼんやりとした頭でそんなことを考えていた。


「いや! やめて! 死なないで、カナタ!」




……DEAD END.




「はい、終わり。解散。御愛読ありがとうございました」


「待ちなさい! 終わりでいいわけないでしょ! ……でしょ!?」


「だってさあ。このまま生き続けたところで、僕の人生ハードモードのような気がしてならないんだけど」


「主人公なんだから、そこらへんは諦めなさいよ」




第二章





 既に普段着に身を包み、髪型から何から何まで完璧に整えてある彼女は、右手で紅茶らしき液体の入ったカップを手にすると言った。


『御影奏多について、聞きたいことがあるのですが』


「腋の下のくすぐりに弱いわ」


『……恩に着ます』





 ジミーはそう、わかったようなことを言って、胸ポケットから煙草の箱を取り出し、一本口にくわえた。エボニーの目がさらに尖るのを無視して、彼はライターで煙草の先に火をつけると、至福の表情を浮かべて宙に紫煙を吐き散らした。


「隊長に、私の何がわかるというのですか?」


「野球部がよく着ている黒いピチピチしたアンダーウェアが大好きなんでしょ?」


「ノリで公式設定にされそうな嘘やめてくれませんかね!?」





 もっとも、バイクに乗っている間、始終隣のサイドカーで騒いでいたとある少女に、いい加減耐えられなくなったというのも理由の一つだったが。


「ねえ、御影。ノゾム、遊園地行きたいんだけど駄目かな?」


「駄目だ」


「どうして!」


「俺が嫌いだからだ! 何だあそこ! 遊ぶ時間より待ち時間の方が長いとか意味わかんないし、お化け屋敷は怖いし!」


「あ、後半が本音っぽいね」


「違うからね! お化けなんて怖くない!」





「うわあ! 馬鹿だアイツ! エボちゃん、人死にを出したことに対する上層部への言い訳は、君に任せたよ!」


 とんちんかんかつ大問題なことを宣う上司はとりあえず無視することにして、エボニーは唇を噛みしめ、高速道路出入り口で燃え盛る炎を見つめた。


 バイクが爆発、炎上した。


「……」


「……あの、エボちゃん? マジでどうすんの、これ?」


「知りませんよお! こんなのプロットに無かったもん!」





 ウィンドウが、再び通信用の画面に切り替わる。その中心で椅子に腰を掛けて、長い足を見せつけるように組んでいるその男の姿に、ジミーは思わず息を呑んだ。


「……」


『やあ。久しぶりだね、ディラン君』


「誰だっけ?」


『ちょっと! そういう反応されると、私の黒幕役としての威厳というものがだね!』


「ああ。あの、全身黒づくめだった」


『それは別なルークの父親だ!』





「ついさっき、僕はある人物からの通信を受けた。その男の名前は……」


「…………」


「今回の事件において、芸術的なまでに精巧な計画を練り、そのカリスマ性をもって御影奏多を自陣に引き入れた男の名は……」


「…………」


「黒い鎧を着ていて、呼吸音が正直うざ――」


「名前忘れたのなら、素直にそう言ってください」




Memory 3


 学生警備室は、一階の昇降口に近い場所にあった。エボニー・アレインがこの場所を活動の拠点としていたことは今まで全く知らなかったが、登校回数が少ないからだというよりは、灯台下暗しと言った方が正しいように彼には思えた。


 棚の隣に隠れるように置いてあった自販機の内容にざっと目を通す。


 全部紅茶だった。


「おい! 何だこの自販機は!?」


「どれでも好きなのを選んでいいよ。ストレートティーにミルクティーにアップルティーに……」


「その紅茶に対する熱い情熱を、もっと別な飲み物にも向けてくれ!」




第三章


 なし。


「……なし!?」


「第三章はいじっちゃだめだろエボ。シリアスだからノータッチで」


「そんな馬鹿な! 『――飛っべぇぇええッ!』を、『――助けてぇぇええッ!』にするという、渾身のネタを用意していたのに!」


「お前本当に容赦ないな!?」




エピローグ


 ルークは眼鏡越しに籠の中身を覗き込んで、だいぶ下の方にあった桃を慎重に取り出すと、バナナをその上から適当に置いた。


「正直に言うとだ。御影奏多という人間は五日前に死んだ」


「…………んん?」


「なぜそこで意外そうな反応を」


「いや待て! 俺今立派に生きてるんですけど!」


「幽霊だね」


「幽霊? 近未来SFで!?」


「第二部で、魂が異世界に飛ばされてハーレム生活を送ることになる」


「やめろ! 無理やり流行りに乗っかろうとするな!」




……Thank you for reading!!



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