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明星白亜のX‐レポート  作者: 月讀
レポートNo.0 再開
2/5

 いきなりやらかした。入学式はとっくに始まっている。

 士門が目を覚まし、スマートフォンで時間を確認すると既に11時を回っていた。

 別に入学式だからと言って参加しなくても大したことは無い。……と強がってみるが、適度に何でもこなしてきた士門にとって入学式に出席しないのは適度の範疇を越えている。とは言っても入学式は11時半には終了してしまう。今から出向いても無駄足になるだろう。しかしせめて午後に開催される文学部の説明会には参加しなければならない。とりあえず風呂に入ることもなく寝落ちしたことを思い出した士門はシャワーを浴びることにした。


 一通り家の用事を済ませた士門は昼食をとるため大学の食堂に向かった。アパートから大学までは五分もかからない。大学がド田舎にあるため大学周辺は田園風景が広がっている。夏になると大量の昆虫が湧いてくるであろう近い未来を想像すると嫌な気持ちになる。でも田舎の春の日差しは心地よかった。

 歩いて移動している内に明星学院大学の正門にたどり着く。入学式が終わって間もないキャンパスは新しいスーツに身を包んだ新入生で溢れていた。数人のグループができ、男女入り混じって会話を楽しんでいる。男子は女子にアピールするため自慢混じりの自己紹介と遊ぶ約束を取り付けようとする。女子はしっかりメイクをキメて男子たちを誘惑し、他の女子を出し抜こうとする。もちろん新入生全員がそういった人たちだけではないのは理解している。半分くらいは違うだろう。ただ、今このキャンパスの雰囲気は大学デビューした新入生に飲まれていた。輝かしいスーツに身を包んだ彼ら彼女らが一人で歩く普段着の士門を見て同じ新入生であると想像できる者は限られるだろう。士門自身も同じとは思えなかった。まあどうでもいいことなのだが少々煩わしい。

 キャンパス内の地図を便りにたどり着いた食堂に入ると人口密度は一層高まる。新入生だけでなく普段着の学生もそれなりに多い。そのため雰囲気は外に比べて幾分大学らしくまともに感じる。夕食朝食を立て続けに食べなかった士門は道中お腹を鳴らしながらここまで歩いてきた。なのですぐに学生の列に並び、手ごろなラーメンを注文し見晴らしのいい窓際のテーブルを確保する。

 あまり美味しくないが食べれないわけでもない。生きるための食事。母親の作る実家の飯は意外にも美味しかったことが一人暮らし二日目で分かってしまった。

 静かに麺を啜っていると食堂内が少し静かになる。そして誰かの噂をするようなひそひそ声が周りから聞こえ始めた。気になった士門が食堂の入り口の方向を見ると一人の女性が立っていた。

 誰もが認める美女。金髪でエキゾチックな顔つき、でもどこかアジア女性の優しさも感じさせる。ハーフだろうか。背は高めで季節外れのロングコートを着ているため余計に目立っていた。その美女は食事が目的ではないらしい。学生たちが食事をとるテーブルを縫うように食堂の中へ進んでいく。歩き方もいちいちエレガントで士門は思わず見入ってしまう。他人への興味が薄いはずの士門は自分に対して驚いた。そしてなぜか美女は士門の方向に向かって来ていた。

 やがて目の前まで来た美女は立ち止まった。その瞬間食堂中の視線が士門に集まった。まるで漫画やドラマの世界の主人公の様に感じた。勝手に士門と美女をハイライトしている。たぶん気のせいだが。そして目の前の美女は士門に告げた。

「待ってたわ士門。プロファイリング通りの動きであなたって単純ね」

 アメリカかぶれの言い回しだが見た目通りで違和感がなかった。


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