誕生
意識がはっきりとしてきた。
どうやら僕は抱き抱えられているらしい。
体に柔らかな感触と温もりを感じる。
うっすらと見える眼で目の前に居る人物を視る。
綺麗なプラチナブロンドの髪・凄く整った顔立ち・背丈は余り高くないみたいだ。優しくてとても落ち着く声。
僕の母さんだろうか?
「ユウちゃん。ママですよ。やっと目が見えるようになったのね。分かる?」
当たりみたいだ。
母さんの腕の中で揺られていると、
「ユウの目が開いたんだって? どれどれ」
ドタドタと大きな音を立てながら男性が近づいて来て僕の顔を覗き込んできた。
この人が父さんみたいだ。
端正な顔立ち。背も高くスマートだ。声も渋く、誰から見てもイケメンと言える。
父さんは僕の顔に頬擦りをしてきた。
スリスリスリスリスリ・・・・痛い。
段々頬が熱くなってきた。
痛い! いたたたっ!
ゲシッ!
つい父さんの顔面に渾身の右ストレートを打ち込む。 あまりにも痛かったので。
見事にクリーンヒット! 父さんの顔が後ろに仰け反る。
むむっ? 赤ん坊にしては威力のある打撃。もしかして神様のくれた力の一つ(誰にも負けない力)なのか?
しばらく父さんは顔を押さえてその場にうずくまりプルプルしていた。
貴方が悪いんだぞ。僕は悪くない。
どうやら落ち着いたらしい。父さんが立ち上がり
「凄いパンチだ! 将来が期待出来るね!」
余り驚いて無いらしい。
「貴方が悪いんですよ。頬擦りし過ぎ。ユウちゃんからの反撃を受けても仕方がないわ」
隣で母さんが笑っていた。
父親の名はトム。猟師を生業にしている。僕が生まれたリムペット村では一・二を争う腕前らしい。 端正な顔立ちなのに猟師とは・・・。
母親の名はエリナ。 元貴族で、男爵の3女だった。 ある事件がきっかけで、父に一目惚れし家を飛び出してこの村に来たらしい。 貴族の娘にしては順応性が極めて高く、猟師の妻として申し分の無い働きが始めから出来ていた。
そして僕が生まれた。
僕の名前は希望通りユウになっていた。 ありがたいです。前世でもこの名前はとても気に入っていたから。 そして何より、前世の時の父母に付けて貰った名前だから。
両親共に凄く優しそうな感じがする。
僕は絶対にこの世界では幸せになってみせる!と改めて心に誓った。