第四幕-13
「……はぁ、マジ死ぬかと思った」
千敦は深い溜め息を吐き出すと壁に寄りかかっていた。
そのまま背中を壁沿いにゆっくりと滑らすと床にあぐらを掻く。
ギムレーは3台しかないため、重症な者から優先的に使っていくことなり、千敦と祐美は比較的傷が遅かったので、治療が終わるまで待機するしかなかった。
とはいえ何時間かかるか分からないし、突然現れた梗はかすみや染谷先生と話に行ってしまって今はいない。
「よく生きてたよね、私達」
「確かに。っうか祐美も座れよ。立ってると疲れるぞ?」
「うん」
祐美は小さく頷いてから千敦の横に座る。
間。
「でもみんな生きてて良かった……千敦が死ななくて本当に良かった」
「俺は死なねぇよ。だって死にたくねぇし」
「……うん」
長い間。
「……ねぇ、千敦」
「ん?」
「こんなときに言うのはおかしいかもしれないけど…………私、好きだよ。千敦のこと」
突然の告白だった。
千敦は驚いた。でもちゃんとそれを受け止め、そして祐美について考える。
答えはあまり迷うことなくすんなりと決まった。というかそれ以外選びようがなかった。
「……ありがとな」
何気なく顔を横を向けると、祐美の顔は真っ赤で、それでも逸らすことなくちゃんと千敦のことを見つめている。
「でも、ごめん。俺は祐美のことそういう目で見れない」
千敦は一切目を逸らすことなく、真っ直ぐ見つめ返して祐美の想いに答える。
沈黙。
「ま、まぁ…………そんな気はしてたんだけどね」
「……そうか」
心なしか祐美の瞳は潤んでいる。千敦は思わずその頭を撫でてやりたくなったが、さすがに空気を読んで止めておいた。
「千敦はさ……もしかして宮島部長のことが好きなの?」
「えっ? あー、いや……どうなのかな。ただ……今度部長に会ったらありがとうって言いたい。あのとき助けてくれて、俺に明日をくれて、ありがとうって伝えたいんだ」
そう宣言したら途端に愛に会いたくなった。
でも今の愛にありがとうと言ったところで、きっと千敦の想いの全ては伝わらない。どうせ日頃の感謝の心を伝えるなんて偉いな。なんて八重歯を除かせながら笑って、愛は千敦の頭を乱暴に撫でるのだろう。きっとその程度だ。
でも、愛に会いたい。
千敦は居ても立ってもいられなくていきなり立ち上がった。
「どうしたの? 千敦」
すると不思議そうな顔をして見上げてくる祐美。
言葉に詰まった。
間。
「あー、その、なんていうかさ…………あ、あれだよ、あれ! 今ギムレーに入ったら先輩達の裸が見れ――」
最後まで言わせねぇよ、とばかりに祐美の拳が太股を殴る。
千敦だってそれなりに怪我しているのに、容赦のない攻撃にその場に蹲った。
「…………バカ。あと変態」
俯いていたので顔は見れなかったが、祐美の声はひどく呆れていた。でもどこか寂しさも含んでる気がする。
千敦は小さく笑ってから床に寝転ぶ。
「仕方ないって。男はみーんなバカでスケベで変態なんだから」
「あぁ、そうですか」
祐美の苦笑に見守られ、千敦は今日の夜って何か面白いテレビやってたかなぁ、と思いながら静かに眼を閉じた。
が、明日提出の数学の課題があることを不意に思い出す。
千敦は慌てて飛び起きると、祐美、数学の課題手伝ってくれよ! と情けない声で叫ぶ。
答えは即答でNOだった。
理由は手伝うという名目で全てやらせようとするから。小学校から夏休みの宿題を手伝わせてただけあって、さすがに行動が読まれていた。その正当な理由に千敦は何も言い返せず言葉に詰まる。
「頑張れば明日までには終わるんじゃない?」
「あー、くそっ!! 絶対徹夜コースじゃねぇかよ……」
溜め息混じりにそう呟くと、千敦は不貞腐れたように再び床に寝転がった。
以上となります。
かなり中途半端な感じで終わっているんですが、投稿したものをそのまま載せたのでページ枚数の限界的にここで終わりになっています。
今のところ続きを書くつもりはないです、構想はそれなりに考えていますが……
とにかく読んで頂いた皆様、本当にありがとうございました。




