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第四幕-12

 ロキは千敦達の方に向き直ると申し訳なさそうに手を合わせる。

 

「悪いんだけどさ、今日はこれくらいにしてもらえない? まぁお楽しみは後に取っておいたほうが面白いし」


 そういうが早いかロキとフェンリルの周りに波紋が広がり、底なし沼に飲み込まれるように体が床に沈んでいく。

 2人の姿が消える。

 廊下には恐ろしいくらいの静寂が訪れた。


 後を追うものはいなかった。とても追える状態じゃなかったし、正直引いてくれて助かったという状態だった。


 「……ふぅ」


 千敦はゆっくりと息を吐き出す。

 今更だが怖さを実感したのか少しだけ息が震えていた。

 

 「朱梨!」

 

 不意に沙夜子の悲鳴のような声で千敦は非情な現実に引き戻される。

 すぐさま声のした方に顔を向けると、壁に背中を預けた朱梨が腹の辺りを押さえている。


 手の隙間からは血がこぼれ落ち、顔色も血の気が引いているようにやや青白い。もはや予断を許さない状況だった。

 

 「阿部先輩!」 

 

 千敦がその傍に駆け寄ると朱梨は小さく笑う。

 

 「何だよ、みんな……そんな顔……するなよ。これから死ぬみたいじゃ……ねぇか……」

 「もう喋るな、阿部!」

 「だい、じょうぶ……あたしは、絶対に……死なねぇ」

 

 朱梨の声は息も絶え絶えでかなり弱々しかったが、その瞳は生命が燃え上がり必死に生きようとしている。魂が燃えている目だった。

 

 「先輩が生きてたら後でラーメン特盛り奢りますよ」

 「じゃぁ……義経で」

 「義経って、あの背油でラーメンの器が持てないっていうあそこですか?」

 「あぁ……あと、野菜増し増しの……餃子も……よろしく…………」

 

 痛みを堪えながら親指を立てて笑う朱梨。

 千敦達は朱梨を抱えて急いでヴァルに戻った。かすみによる応急手当の後、すぐにギムレーに入れられ、朱莉は一命を取り留めた。


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