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第四幕-7

「祐美!}

「えっ?」


突然名前を呼ばれて不思議そうにこちらを見つめる祐美。

 祐美を千敦はただ真っ直ぐ見つめる。

 互いの距離が少しあるのと、何より作戦の内容をバラせないので一切口にしない。おまけに戦闘中なので見つめ合っていた時間は僅か数秒。


 でも祐美は外さない、と確信を持った。

 千敦はフェンリルの爪を体を捻ってかかわすと斬りかかった。

刃の部分を下に向け、ただの棒である柄の部分で。


「バカか! あいつは!?」


 後方で朱梨の野次らしきものが聞こえたが、気にせずに千敦は柄の部分を振り下ろす。


「何やってるんですか? もしかしてあまりの絶望に気でも触れました?」


 フェンリルは呆れた顔ちをしながら軽々と爪の間で柄を受け止める。

 よし、かかった! と千敦は表には一切出さず、心の中で密かにガッツポーズした。Odinを弾かれても攻撃を避けられてしまっても、この作戦は成功しない。


爪の間で受け止めてもらうことが第1段階。

 

「さぁて問題です。俺は一体何をやろうとしているんでしょうか?」

「そんなこと分かるわけないじゃないですか!?」

 

理不尽な質問にフェンリルから抗議の声が上がる。

千敦はそれを無視すると、押さえつけられている部分から振り子のように長い刃先で下腹部の辺りを狙う。

  けれども反対の爪で刃はまたも受け止められてしまう。

 

これで第2段階も成功。

 

「もしかしてこれのことですか? これなら読めてましたけど」


 つまらなそうな顔をして溜め息を吐き出すフェンリル。

 その質問に千敦はすぐ答えずに、Odinを押し付けるように手を前に突き出す。


 「それでは……真後ろにいる松任谷祐美さんから、正解の発表して頂きましょう!」


 フェンリルはすぐさま振り向こうとする。

 それから反射的に右に飛ぼうとするが、Odinの長いの柄の部分が爪の間で引っかかり、ほんの少しだけ回避行動が遅れる。

 

これで最終段階が完了。

 

「いっけぇぇぇぇぇ、祐美!」

 

千敦が叫ぶ前に、祐美は既にトールを振りかぶっているのがフェンリルの肩越しに見えていた。そして今は槌の部分がフェンリルの腹を捉えようとしている。

 

「ぐぎゃっ!」

 

フェンリルの小さな体は吹き飛び、壁に思い切り叩きつけられる。

 

間。

 

ロキが嬉しそうに笑いながら口笛を吹く。

 千敦は祐美に近づき拳を上げる。

 

「さっすが幼馴染み。あれだけで本当によく分かったな」

 

祐美もまた拳を上げるとそのまま軽くぶつけ合う。 


「まぁ幼馴染み+女の勘ってやつ?」

 

 Thorを肩担ぎながらドヤ顔をする祐美。なぜだか少しイラっした。

 ともかくこれでこちらのペースに少しでも持っていきたい。

 

 「痛たたた……さすがに今の一撃は痛かったですぅ」

 

 脇腹の辺りを擦りながら、拗ねたように唇を尖らせたフェンリルがゆっくりとこちらに向かってやってくる。

 すると莉穂が真っ先に駆け出してフェンリルにFreyrで袈裟切りする。

 

 「本当に容赦しないんですね」

 

 Freyrを爪で受け止めながら苦笑するフェンリル。

 

 「お前達を容赦する理由なんて1つもない!」

 

 2人は押し合いをしていたが、Freyrが燃えているため熱に耐え切れなくなったのか途中で後ろに飛ぶ。

 ちょうどその先、いつの間に移動したのか朱梨がValkyries待ち構えていてを突き出す。

 だが同じ手は二度も通用しないらしく、フェンリルに避けられてしまい腕を掠る程度だった。

 

 「惜しい!」

 「いや……案外関岡は良い点に気づいたのかもしれないな」

 「へっ?」

 

 莉穂の予想外の言葉に千敦はつい腑抜けた声を出してしまう。

 

 「あいつは予想外の攻撃に弱いぞ!」

 

 莉穂はフェンリルをしっかりと見据えると、良く通る声でみんなに聞こえるように叫んだ。 

 その言葉を聞いたロキの口元が微かに歪む。まるでそれに気づいたことが嬉しい、そんな顔だった。

 でも火魅の性格を思い返すと、仲間がピンチになっているのを楽しんでいても不思議ではない。

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