第四幕-2
2人してほぼ同時に足を止めると、ほぼ同時に勢い良く後ろに振り返る。
するとうこが大きく手を振りながら、こちらに向かって走ってくるところだった。目の前までやってくると、うこは少しだけ荒い息を吐き出しながらいつも通りに人懐っこそうな笑みを浮かべる。
「おはよ!」
「うこ……いや、高城さん?」
「おはよう……ござ、います?」
千敦達の対応は笑ってしまうほどぎこちなかった。
当然ふざけてやっているわけではないし、心臓はありえないくらい早く脈打っている。まさかこんなに早く会うなんて思ってもみなくて、完全な不意打ちだった。
間。
「えっ? 何それ? 新しいギャグ? それともオコ? オコ?」
うこは千敦と祐美の顔を素早く交互に見ると、不安そうに瞳を揺らして1人で焦っていた。
「オコじゃねぇよ!」
千敦は叫んだ。でもその声は少しだけ震えていた。
「ならいいや!」
うこは歯を見せて楽しそうに笑う。
いつもと変わらない笑み。3日前と変わらない笑み。
そのことがたまらなく千敦は嬉しかった。
うこは何も変わっていなかった。誰にでも壁を作らなくて、明るくてすごく人懐っこい子で、だから千敦も祐美もすぐに仲良くなれた。
「なぁ、うこ……俺達、友達だよな?」
「えっ?……いや、なんていうかぁ、ビジネスパートナーみたいな感じ?」
「バーカ。覚えたての英語使ってんじゃねぇよ」
千敦は笑いながらうこの額にデコピンする。
痛て。と言いながら額を押さえて顔を顰めるうこ。
「えっ? オコ? オコ?」
「だからオコじゃねぇーって……むしろ逆だよ」
「へっ?」
「うこ、行こう!」
呆けているうこの腕を祐美は強引に掴むと、連行するようにうこと共に正門へと急ぐ。その声はいやに弾んでいて、嬉しそうだった。
うこは千敦の方に顔だけ向けると、それじゃまた部活でね、せっきー! と言って大きく手を振るう。
その声に祐美も少しだけ後ろに振り返る。
その顔は晴れ晴れとしていたけれど、目は微かに潤んでいた。
2人は正門の方に小走りで行ってしまったが、千敦は後を追いかけることもなくその場に突っ立っていた。
何だか少し泣きたくなった。
すると冗談抜きに目頭が急に熱くなってきたので、千敦は思わず空を見上げる。眩しい光を放つ真っ白な太陽と目が合う。
今日は晴天だった。




