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第三幕‐7

 数日後。その日の放課後も、千敦は部活終わりにラグナロク部として戦っていた。


 突然授業中に呼び出されたときは、たまたま近くにいた子と組まされることが多いのだが、放課後とか時間に余裕があるときはうこと莉穂の3人で組んでいる。

 そうして3人で協力してトロールを倒していると、どこからともなく火魅が現れて一緒に戦っていれる、というのが最近のパターンだった。

 

 でも火魅が来てくれると、あっという間にトロールを片付けてくれるので正直助かる。

 

 「……ここら辺は片付いたようだな」

 

 莉穂が辺りを見回す。

 それに習って千敦も辺りを見回したが、トロールの姿も波紋の姿も目では確認できない。

 

 密かに安堵の溜め息を吐いていると、どこからか鈍いバイブ音が廊下に響く。

 どうやら誰かのギャルが鳴っているらしい。

 ポケットからギャルを取り出したのは莉穂で、通話ボタンを押したのか微かに染谷の声が聞こえてきた。

 

 「援護? 何かあったんですか?」

 

 莉穂の顔が少し強張る。

 援護要請なんて今までなかったので、もしかして祐美か先輩2人のどちらかに何かあったのかと思い、千敦は詳しい話が聞きたくて莉穂に駆け寄った。

 

 『いえ、何かあった訳ではないのですが……ちょっと敵の数が異様に多いので援護に回ってほしいんです』

 「そういうことでしたか」

 『そちらが大丈夫そうなら、左に曲がった所にある女子トイレに入って下さい。現地近くまで送ります』

 「了解です。こちらはもう大丈夫そうなのですぐに向かいます」

 

 そういうが早いか莉穂は千敦達に背を向けると、言われた場所に向かって行ってしまう。

 それを呆然と見つめている残された3人。

 

 「思うんだけどさ、廊下って走っちゃいけないんじゃね?」

 「あっ、確かに」

 「緊急事態だからいいんじゃないですか。そんなこと言ったら、火事とか起きたとき全員死んじゃいますよ」

 

 千敦の正論にあー、そうか。と火魅は笑いながら頷いて納得する。

 

 「でもそれもいいんじゃね? 規則守ってたら全員焼死とか、なかなか笑えるじゃん」

 

 火魅は至って普通に、いや少し笑いながら平然とそういうことを口にする。

 理解できない思考回路に千敦は言葉に詰まり、さすがのうこも困惑が隠せない様子だった。

 

 「まぁ理解できないか。まぁ所詮お前らと俺とでは…………が違う……存在だもんな」

 

 火魅は最後に何か言っていたが、独り言を呟くような感じだったので、千敦はちゃんと聞き取ることができなかった。

 少し気になって千敦が聞き直そうとしたが、それより先に火魅は指を鳴らす。

 

 何がしたいんだろう? とうこと顔を見合わせて不思議がっていると、火魅は満足そうな顔をして壁の方に歩いていく。それから壁に寄りかかると、楽しそうな顔をしてこちらを見つめてくる。


 千敦は火魅の行動に顔を顰めていると、突然うこに強く腕を引っ張られた。

 

 「せ、せ、せ、せっきー、あれ見て!」

 「えっ?」

 

 うこの指差す方に視線を向けると、廊下の床や壁にいくつも波紋が広がっている。

 その数、視界に入っているだけでも軽く10を超えている。

 

 「うえぇぇぇ! ちょっと待ってくれよ!!」

 

 千敦は慌てて武器を構える。

 

 「せっきー、こっちからも出てきてるんだけどぉ!」

 

 背後からうこの泣きそうな声が聞こえてきたが、それに構っている余裕はなかった。

 

 「とりあえず片っ端から倒そう! 多分染谷先生がすぐ指示を出してくれるだろ」

 

 千敦は早口でそう言うと、足の近くで頭を出していたトロールにオーディンを突き立てる。

 それから千敦とうこはもぐら叩きのように、片っ端から出ようとするトロールを倒していったが、如何せん出現のスピードが早すぎて間に合わない。

 

 最初は頭が出てる状態で倒していたが、段々と肩が出て手が出て体が出て、最終的に何体か完全な状態で出現してしまった。

 そんな状態だというのに、火魅は2人を全く助けようとしない。


 うこも千敦も何度も火魅に呼びかけたが、まるで耳にイヤホンでもしているかのように、2人の言葉は届いていないのか無視され続けていた。

 

 火魅はちょっと変わった人だし、読めない行動をとってもおかしくはない。でもそのときばかりは先輩だけどムカついた。一匹狼なのも協調性がないのも知っているけれど、それにしたってこんな危機的状況なんだから助けてくれてもいいはずだ。

 

 それなのに火魅は全く助けようとしない。たまに2人の様子を見たりはするけれど、助ける気はないのか腕を組んで傍観しているだけ。その様子を見て2人は火魅のことは諦めることにした。


 というか助けを求める暇が徐々になくなってきた。忙しなく動き回って倒さないと、トロールの出現に追いつかない。

 

 「やっべぇー、全然間に合ってねぇよ!」

 

 千敦は1体のトロールの胸をオーディンで貫きながら叫ぶ。

 だがふといつもより硬いことに気がついた。

 落ち着いて辺りを見回して観察すると、いつも倒しているトロールよりも皆少しだけ大きく見える。違う種類なのか? などとをつい観察してしまう。


 「せっきー、集中してよ!」

 

 うこに怒られてしまった。

 確かに今はトロールを観察している場合ではない。

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