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第二幕‐6

 それからギャルを返すと、早足で敵がいるという廊下の角向かって行ってしまう。

 

 千敦は何を言ったのかかなり聞きたかったが、敵がいるのに悠長にしている場合ではなかったので、少し慌てて千敦とうこはその後に続く。

 でもどうしても気になったので小声で横にいるうこに聞いてみた。

 

 「……なぁうこ。副部長がなんて言ったのか知ってる?」

 「知るわけないじゃん。私だって最近終末の聖少女達(アースガールズ)になったばかりだよ?」

 「そっか」

 

 などと小声でやりとりしていると、うるさいぞ、そこ! と莉穂に注意されてしまった。

 心なしかその顔は赤みを帯びているように見えたが、すぐに正面に戻されてしまったのではっきりとは分からない。

 

 そうして武器を持ったまま廊下を走っていると、千敦はふと思ったよりも武器が軽いことに気がついた。

 

 千敦が取り出したOdinは槍型の武器なので当然リーチは長く、棒の部分だけでも1m以上ある。また刃の部分も剣のように幅がありやや長めなので、それも合わせると2メートルを越しそうなほど大きなものだった。

 

 なのに金属バッドを持っているくらいの感覚で、見た目と比重した重さは殆ど感じない。

 すげぇな、これ! と千敦が1人で勝手に感動していると、角を曲がって少しいったところに化け物の姿を発見した。

 

 怪物、泥人形、パペットマン。表現は様々だが、とりあえず染谷先生達がトロールと呼んでいるものだ。そして運が良いのかそいつ今1匹だけしかいない。

 

 「関岡はそこで待て」

 

 莉穂に指示されたので千敦は一旦近くで足を止める。

 すると莉穂とうこはそのまま敵に突っ込んでいく。だが倒すのかと思いきや、2人は左右に分かれた。トロールはその動きに翻弄され、忙しそうに左右を見回す。

 

 その隙にうこがトロールの後方に回りこみ、短剣のBalderで右腕を切り落とす。それから莉穂が長剣のFreyrで両足を切り落として動けなくさせる。


 「本当はこれくらい速攻で倒してくれないと困るんだが、まぁ初戦だからな」


 どうやら莉穂達は千敦のために戦いやすくしてくれたらしい。

 トロールは体をくねらせてもがいている。見た目的にあまり良いものではない。

 

 でもこの状態で倒せなかったら、瀕死の奴でもない限り倒せそうにない。千敦は生唾を飲み込んでから、少し緊張した面持ちでOdinを構える。

 が、どうしていいか分からなくてしばらくそのままの格好で固まっていた。

 

 「……っていうかさ、これってどうしたら倒せるの?」

 「普通に胸を刺せば?」

 「とりあえず急所は人と同じだ。まずは関岡が思ったようにやってみろ」

 

 何とも頼りないうこのアドバイスと、という莉穂の力強い助言を聞いて、千敦はもう一度Odinを構えると、意を決して1歩踏み出し勢い良くトロールの胸辺りを貫く。

 

 サクッ、っと音がした。まるで土の塊に木の棒を突き刺したような感触だった。

 だがトロールは苦しそうに顔を歪めてから叫ぶように口を開く。それから砂の城が崩れ去るように溶けて、そのまま廊下の床に消えていった。

 

 こうして千敦は無事に初戦を終えた。



 それから3匹? 3体? と数え方は分からないが同様のやり方でトロールを倒し、今日の戦闘は終わりということで千敦達は一旦ヴァルに戻った。


 どういう理屈なのかはまだ分かっていないらしいが、今までの記録によると大体学校が下校の時刻になると敵は出てこなくなるらしい。なのでそれくらいの時間になるとこの密かな活動は終わる。


 そして翌日、たまに朝早く7時くらいに出てくるときがあるしいのだが、基本的には8時ぐらいに現れるとのことだった。


 親切設定というか何というか、千敦はもっといつ敵が攻め込んでくるか分からないから気を張ってないと、という緊迫した感じかと思っていたのだが、現実は定時に仕事が終わるサラリーマンのようだった。


 だからみんなヴァルに集まっても全体的に緩やかな雰囲気なのかもしれない。

 ただ染谷先生曰く、昔はこれより更に緩かったらしい。

 元々トロールを地上に出てきて倒す、という一連の流れ自体が談合ではないけれど、全て形式のようになっていたらしい。


 毎日2、3匹を夕方くらいに出しておくから倒しておいて、みたいな。でもたまにいっぱい出して混乱させちゃうよ? という程は緩くはなかったと思うが、とにかくあまりトロールの出現は多くなかったようだ。

 

 なので導かれる、つまり戦いで死ぬことも殆どなくて、案外ダラダラした活動だったらしい。それがここ3年くらいから突然やり方が変わってきて、出でくる数も5倍くらいになり、時間も割とランダムになってきたという話だった。


 「社長でも変わったんですかね?」

 「はははっ、なかなか面白いことを言いますねぇ」


 染谷が穏やかに笑う。なぜだか少し馬鹿にされたような気がするのは、千敦の気のせいだろうか。

 けれど染谷の顔がふと心配そうな表情に変わる。


 「そういえば関岡君。怪我とかはしてませんよね?」

 「はい。全然全く」


 千敦の武器は槍なので元々リーチが長いのだが、初回はビビって敵との距離をかなり開けて攻撃していたので、かすり傷1つ負っていない。


 「でも何かあってからでは困るので、一応先に教えておきますね。松任谷さん、関岡君を戦士の休息所(ギムレー)へ案内をしてもらってもよろしいですか?」


 「は、はい!」

 

 染谷の言葉に1人中央の椅子に座っていた祐美が慌てて立ち上がる。

 祐美は確か朱梨や沙夜子と一緒に組んで戦っていたはずなのだが、千敦が戻ってきたとき既に2人の姿はヴァルになかった。どうやら先に帰ってしまったようだ。

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