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第二幕‐5

「……せ、関岡のギャルホンが鳴ってるな」

 

何だか気まずそうな莉穂の声に、千敦は一瞬何を言っているのか分からなかったが、すぐに勘づいて左のポケットからさっき無視したあれを取り出す。

 

確か染谷先生もギャル何とかと言っていたし、これしか思い当たるものがなかった。ちなみに千敦のもらったやつは赤で、でも何度見てもたまご型の何かを育成するおもちゃにしか見えない。

 

「そういえば何なんですか、これ?」

「それは終末を知らせる(ギャラルホン)警報と言って、校内にトロールが出現したときにその位置を教えてくれたり、あとは単純にヴァルハラと連絡するときに使ったりするものだ」

 「みんなギャルとかギャルホンとか呼んでるよ」

 

要は携帯みたいなものらしい。でも今のスマホというよりは昔流行ったPHS、でも更に昔に流行ったポケベルってやつに見た目は近いのかもしれない。とはいえポケベルなんて小さい頃に親が見せてくれたくらいで、使い方まではさすがに千敦も分からなかったが。

 

「真ん中の赤いボタンを押せば通話できるんだよ」

 

うこに言われた通りに赤いボタンを押すと、バイブが止まって染谷の声が聞こえてきた。

 

『ギャラルホンの使い方が分かったようですね』

 「あっ、はい……まぁまだちょっと微妙ですけど」

 『それは追々で大丈夫ですよ。それより関岡君、早速武器を出してみましょう。ちょうど廊下の角を曲がったところに新たなトロールが出現しました』

 「はい!」


 千敦が気合を入れて答えると、なぜか莉穂は複雑そうな顔をしているのが視界に入った。そのことを不思議に思っていると、染谷にまずは集中してください、と軽く注意されてしまった。


千敦はとにかく今は集中しようと、軽く息を吐き出す。

 ふと、うこはさっき普通に武器出してたような? とも思ったが、それは慣れているからかもしれないしと思い直し、とにかく今は雑念を捨てて集中することにした。

 

『それでは静かにカードを置いて。心に身を任せたまま叫ぶのです』

 「はい」

 

千敦は静かにカードを消化器の上に置く。そして心に浮んだ言葉をそのまま口に出す。 

 

「……来い、俺の相棒! 共に戦場を駆け抜けるぞ、Odin!」

 

 千敦の熱い言葉に反応するようにOdinがゆっくりとその姿を現す。その柄の部分を掴んで引き抜き、1回転させて自分の肩に立て掛ける。

 決まった! と内心思ったが、1拍置いてから甲高い笑い声が辺りに響き渡った。

 

 うこは腹を抱えて笑っているし、莉穂も顔も俯けているが肩が思い切り震えている。ギャルの向こうからは染谷の穏やかな笑い声と、少し遠くからかすみのバカにするような笑い声が聞こえてくる。

 

 「えっ?」

 

 千敦は訳が分からず呆気に取られていると、染谷が笑いながら説明してくれた。

 

 『ふふっ……すみません。これも定例行事なものですから』

 「ど、どういうことですか?」

 「関岡は染谷先生に騙されたんだよ。今さっき高城のを見ただろ? 本来はただカードを置くだけで武器が取り出せる」

 「えぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

 でもこれで時折不自然だった莉穂の意味が分かった。

 うこに武器を出させるのを躊躇っていたのも、先程複雑そうな顔をしていたのも、染谷先生が千敦に恥ずかしい言葉を言わして、武器を出させることを知っていたからだ。

 

 「あはははは! 超ジャンプ! マジでジャンプに出てきそう!」

 

 うこは未だに腹を抱えて笑っている。

 

 『今のはちゃんと録画してあるから、後でみんなで鑑賞会するよ』

 

 いつの間にか染谷と変わったのか、ギャルから聞こえてくる楽しそうなかすみの声。完全にイジメだった。

 

 『まぁこれは誰もが通る道だから』

 「えっ? それじゃうこや副部長もやったんですか?」

 『やったよ。うこは確か……』

 

 千敦がうこの方に顔を向けると、突然うこの笑い声が止まった。そしてそれは途端に引き攣った顔に変わる。

 

 『震えるぞハート、燃え尽きろ何とか、みたいなこと言ってなかったっけ?』

 「もうっ! だから待ってって言ったのに……それは当時ハマってたアニメの台詞」

 

 そんなに恥ずかしかったのか、うこは顔を真っ赤にしていじけている。その様子が結構本気で可愛くて、胸とあと少しだけ下半身にグッとくるものがあった。

 

 『あとは佐渡ヶ谷だけど、これがまた傑作でな! 顔に似合わずリリカルマジカル――』

 「敵が出現しているんだ、早く行こう!」

 

 莉穂はかすみの言葉を真剣な口調で遮ると、千敦の持っているギャルを奪って強制的に通話を終了させた。

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