潔白
たった一発の事だった。僕を裏切った妻の頭を打ち抜いたのは。
彼女が悪かったんだ、それ外有り得ない。
ブルーグリーンの生地に赤いバラのプリントが良くはえるベッドだった
見上げればしっかりとした木枠の天幕が見えて施された天使の絵柄は彼女が選んだものだった。
統一された色と柄のサテン生地の枕には
きっと赤い色だったのであろう黒い染みがドクドクと染み渡っていく
可愛い妻だった可愛い子供もいる。
でもこいつが悪いんだ。
そう正しい僕は正しい。
枕に投げ出された彼女の左手に銃を握らせた。
彼女のパソコンに遺書を書いた。
当然僕への謝罪文章だ。
灰色のパソコンに血が付かないようにゴム手袋をはめた。
ゴム特有の鼻の奥にこびりつく嫌らしい匂いの中浮気をした懺悔を打ち込んだ。
僕が正しい罰される筈はありはしないじゃないか。
白い綺麗な壁紙には赤と黒色に少しピンクがかった何かもこびりついていたのを見ない事に彼はしていた。いや彼は自分の正しさにとらわれ死の重大性に気がつく事もなかったのだ。
僕は正しい正しい。
言い聞かせた時子供が泣きながら僕の所に走ってきた。
「ママが血まみれなんだ!パパお医者さんなんだから早く来て」
そう言われて私は妻だったもののそばに駆け寄った。
子供に見るな来るなと私は威厳を持ち言った
当然だろう私は父親なのだから僕は叫ぶように電話をかけて救急車を呼んだ。
何度も何度も仕事と妻と子供や周りに聞かれないように練習をしたセリフを繰り返した。
「妻が妻が銃で頭を撃って早く早く来てください」
これで全てが上手くいく。何故なら彼女が裏切ったから僕が罰せられる訳がないんだ。
子供を抱きしめてただ見ないように
ホワイトが基調のリビングに向かった。
子供はただどうしたのかどうだったのかを繰り返して僕に聞いた。
これが癇癪で行った行為であると彼は気がつかずただ掃除の行き届いた白いリビングの中潔白である事と信じていた
救急車がサイレンを鳴らしただ騒がしく当たりを蹴散らして担架をのせた救急隊が白い部屋をただ明るく騒がしく照らしていく。
彼の妻に心臓マッサージを施しながらガタガタと音が響き彼の子供は必死に彼の足元にしがみついているままに。
ママはどうなるのかどうしたのかただ彼の子供は繰り返して来る
ただ彼は慰めるように大丈夫だと栗色に見える子供の頭を撫で回した
救急車の後をただ子供を黒い座席に座らせた車で追いかけて行く。
ついた病院の待合室で妻の死亡を聞き酷く安堵を覚えていた彼。
白い布に顔を包まれた彼の妻は顔の面会はされずに体だけを見て彼の妻であることを示していた。
息子には見せない事に彼はした。
ただ子供には見せる事は辛かろうと考えたのだ。
ぼんやりと待合室でまつと警察官がゆっくりと歩いて来た。
「奥様が亡くなり心苦しいですがお話と現場を見させては頂けないでしょう」かと。
彼は頷き同時にまた自身の潔白を幾度と確信していた。
綺麗なベッドルームだった。警官は慌ただしくカメラを持ちベッドルームを写真にとり、粉を叩いてはテープを貼り付け指紋を何度も撮っていった。
彼女が使っていたパソコンも彼らが持ち帰りただ血の腐敗し始めた汚らしい香りだけがあたりを充満させていた。
全てを撮り、調べ終わるまでに2日かかった。
彼と息子はホテルで生活した。
彼はあの汚らしい部屋を早く業者を呼び元の部屋に戻そう、そうだ、今度はベッドルームは白にしようと考えた。
一週間が過ぎ業者を呼び寄せた
こびりついた血も肉片も業者によって壁紙も変えられ、ベッドは捨てられた。
彼は息子の部屋を白い壁紙に変え、新しいベッドを白い物にし息子と眠った。
しばらくは息子も自分も事情聴取があった。
警察官は彼が話した言葉をひたすらメモに書き入れて、気遣うように話しを聞いた。
これでこれで上手くいく。
ただそう考えた。
家の庭に車を停めて鮮やかなハイビスカスが咲く庭を過ぎて玄関を開けると息子が走ってきた。
「パパ!ママの部屋の壁紙が黒ずんでるよ!」
そう叫んで怯える息子に彼はただ何かに怯えた。
業者はよんで全てを変えさせたはずだ。
そう彼は考え続けて白いリビングに何もなくなったはずのベッドルームに急いだ。
点々と血が飛んだであろう箇所に黒い染みが浮かんでいた。
彼は考えた。業者は壁紙を剥がさずに貼り付けたのではないか。
今は夏だ。湿気で染み出したのではないかと。
彼はただ怒りのまま業者に電話をした。
業者はこちらではバイオ廃棄物としてしっかりと廃棄致しましたと丁寧に何度も彼が妻が亡くなりおかしくなったかのように繰り返して
奥様がなくなり取り乱していらっしゃるのでしょうと取り合ってはくれなかった妻がなくなり1月を超えた当たりだろうか、平和な日々が淡々と戻っていた。
警察官が2人訪ねて来た
「奥様の死体解剖の事でお話があります。少し署までご一緒頂きたいのですが」
そう話され警察署まで行き玄関まで歩いた。
彼女の自殺の事だろうと彼は心の中で嘲笑った。署の取り調べ室に入り椅子に座ると警官は切り出した
「奥様の殺害容疑で身柄を拘束させて頂きます」
頭が真っ白だいや真っ白だからこそ潔白なのだそうに違いない違いないと胸を激しく軋ませるように息をした。
新しく取り調べが始まった。
拳銃の握り方の不自然落ちた手は胸元に置かれた事
警官は繰り返した。
死んだ人間が拳銃を握ったまま胸元まで銃をずらせるだろうかと。
撃たれた位置は耳の後ろ側、普通の人間なら
こめかみか口の中耳と生え際の当たりに銃を構えないだろうかと。
銃を撃った反動で手は
下に落ちるか投げ出すように落ちる
なのに何故綺麗に胸元に手を置いているのかと
警官は3日間同じ事を繰り返した。
彼は違うそんな筈はないと繰り返した。
彼はしっかりと投げ出された手に銃を握らせた。そんな筈はないのだから彼の潔白な壊れて行った。
身柄を拘束されるまま時間が立ち進んで行った。
警官にまた取り調べ室に呼ばれ
あなたの発言は時に法廷での証拠として扱われます。また弁護士を雇う手続きが必要になります。との事だった。
彼の家族が面会に来た彼はひたすら僕のはずがないと母親に繰り返した。
弁護士は彼の母親が信頼する弁護士に決まった。
決まった先から新しい証拠が飛び出てくる。
僕は完璧だったはずななんの虫食いもない本のページと変わりなんてない程に。
取り調べ室にまた通される
彼は震えが止まらずに肩をガクリガクリと震わせるばかりだった。
警官はペンで彼の話した事を書き込み続ける。
話しを突きつける役目を負ったであろう警官は淡々と彼に拳銃の所有者の割り出しの話しをした。
隣街に住む男性所有であり盗難届等は出されておらず男性は護身用に人にやったと話をしたといっていた。
ふと警官はその男を取り調べした事を思い出した。
「まさかそんな。俺は貸しただけだぜ?なんで奥様がもってんだぁ?」
身振りも控えめに酷くそんな有り得ないと繰り返した驚きには闇の潜まないものがあった。
しかしどうだ、彼は、目の前の彼はどうだろうか彼の驚きは否定的すぎるのではないかとフとピアノ線に何かが触れ落ちる予感がする。
否定的過ぎるというのは語弊がある。
何か自分の箱にはまらない事や自分の間違え全てが無かったような。
否定なのだ。
自分が間違えを犯すはずがないと彼は確信している。
間違えない人間は居ない。
なのに彼は再三小声で僕が間違う筈はない。とつぶやく。
警官は何かを確信したように彼に質問を淡々と聞く。
興奮させ失言や警官の何を疑われたら困る、何をしても彼には有罪になってもらわなければならない気がしているのだ。
だから静かにコマをすすめ続けるそう警官は思った。
彼はただ留置場のなか頭を抱える。
完璧だったレール。
そのたった一つの違いから壊されて行くこんなのはまるで間違っている。
神に祈りを捧げて、僕は必ず潔白なはずなのだ。
そう祈り続けた。
神は潔白に勝者を決めていた。そう彼が気がつくまで時間がかかった。
それは法廷でだった。
潔白は自身でなかっただろうか。
そう潔白は最初に染みを作った部屋を片付けた彼には微笑まなかった。
潔白は処女で有ることに等しいのだ。なかった事に塗り替えは出来ないと。
現場証拠は妻の美しく整った死に様、不思議な拳銃の所有者、打ち込まれたパソコンについていたゴム手袋の粉。
ゴム手袋からは彼の手の毛が見つかり、気がつかずに微かに触ったであろう妻の血痕が証拠となっていたそれでも彼は信じ続けた神は罪を許さない。
ましてあの女を罰したに過ぎなかった自分に微笑まないはずがない。
覆る証拠の中で彼の隙間から全てが崩れる音がした。
立たされた心細い法廷の中でただガラガラと彼の積木は崩れていく
「奥様と浮気をしていたとされる人物ですが、まず奥様はコミュニティーサイトで偽装恋愛を主とする掲示板にて浮気にはならない中年女性と同意の上、自分は女性相手は男性と設定をしてやりとりを楽しんで居たと考えられます。
また相手にも確認をとりやりとりのメッセージを見させて頂きましたがやはり遊びであってどちらも本気であった訳ではないようです」
そう検事の声が良く通った。
物悲しいような呆然とした彼の心は風穴があいたようだ。
まるで妻のちりばめた脳みそのように彼の頭の中も積木が崩れ空白になるばかりだった。
どうしたらいい、神に祈ればいいのか、どうしたら僕は無実だと分かるのか
彼はただ繰り返しそれを思うだけだった。
判決が下される瞬間はただただカンカンとなるくだらない音の中だった。
被告人は妻が浮気をしたと勝手に逆上した上に妻に子供の親権を取られると勝手な考えを起こし
無抵抗の妻を後ろから近づき撃ち殺した。犯行に至る経緯や動機から見ても酌量の余地はないとする。
求刑は無期懲役とする。
そうして下った判決と共に彼の手にまた手錠がかけられた。
最後に通るのではないかと思うほど重く冷たい裁判所の渡り廊下を通り
警官が脇を固める中息子が走ってきた。
最後かもしれないそう思って警官に声を掛け息子を抱きしめた時
息子はぼそりと彼の胸の中で話したのだった。
「ママの手の位置を変えておいたよ。ママの事僕方が愛してたから。」
彼の潔白は頭の中で新しい空白を作り真っ白になったのだった。
orz私の文才では・・・・
読んでくださった方有難う御座います!
また誤字脱字と乱文ですが本当に読んでくださった方有難う御座います