それはどこにでもいる普通の少年が語り出すお話で、しかしそれは純情などこにでもありそうなラブコメをほのめかすお話だった。
週刊少年ジャ○プを愛読してる方々が読むのに適した小話です。コミックス派の人でも本誌のネタバレは含んでないので安心してよんでやってください。
「最近の少年漫画にはラブコメ作品が多すぎると思うな」
そう言いながら僕が座る席の前にある椅子に腰をかけたのは、いわゆる僕の幼馴染というやつだった。勿論――と言い切ってしまっていいのかどうかはわからないけれど、僕の方に椅子を向けたうえで、座りながら話しながら僕の方を見ることができるポジションを陣取って彼は座る。
「いきなりどうした、こんな時間に」
「こんな時間にっつったって、今は昼放課だろう。一人で弁当をもくもく食べてる奴に世間話をもちかけて何が悪いんだよ」
「さっきまでみんなでわいわいやってたよ。僕が食べるのが遅いだけだ」
「わかってるよそんなことは。見てたからな」少しため息をつきつつ、母親がつくってくれた弁当の中身であるから揚げをのろのろと食べる僕に幼馴染は尚も言う。「で、お前はどう思うよ?」
「どうって、何が」
「決まってんだろ。ラブコメの話だよ」
「……いや、知らない」
知らないというよりかは寧ろ興味すらないのでそもそもこの話事態を遠慮したいが為にわざとそっけない態度をとった僕だったのだけれども、対して幼馴染はそんなことなどつゆ知らず、「知らないわけねーだろ。ここんところすげーじゃねーか」と話し続ける。
「まずな、ラブコメっていうジャンルが少年漫画で必ず流行るのかっていうと、そうでもないんだよ。やれヒロインのパンツだやれヒロインの裸だやれヒロインの濡れ場だ、そういう単純な読者への媚だけでもう売れる時代じゃねえ。ヒロインがいくらかわいくてもその作品のストーリー自体がつまらなかったら話にならないってわけだ」
「…………」
「そう、つまり打ち切りだ。ラブコメは結構打ち切られやすい、と俺は思う」
僕の「これ以上そんなどうでもいい話すんな」という意思をこめた渾身の沈黙はどうやら全く届かなかったらしく、そうだよそうそうようやくお前もわかってきたじゃねーかと言わんばかりにドヤ顔で打ち切りの話につなげてきた。……そうだな、この話はBGMだ。悪質なBGMだ。ぶっとんだガキがむらむらする、の略にしよう。BGM。
「実際んところそんなに連載してるわけじゃないんだ。有名なラブコメは何作品かあるけれど、それも片手の指で数えられる程度。故に俺はこう思う。ラブコメが連載されるってことはそれ相応のレベルのラブコメになるっていう確信が編集者か編集長か誰かにあって、その確信のもと連載するんだと。だがな、最近のラブコメ漫画の数はおかしい。しかも、そのほとんどが打ち切りの危機に瀕しているといってもいいくらいの掲載順にたっている」
「…………」
「そう、つまりこれはラブコメ界の暴走だ。今まであんまり掲載してなかったラブコメを一気に連載させて、どれが生き残るかをみようっていう編集者か編集長か誰かの魂胆のもとなんだよ」
またのドヤ顔だった。
なんだお前、僕の心を読めているとでも思ってるのか。
超能力者かお前は。
ばーかばーか――ほら、読んでみろよ僕の心を。
「ま、ラブコメの新連載が多いっつっても、異色教師ものとか超能力者のコメディーとか面白いのも他にはあるっちゃあるんだがな」
「な、おま、今僕の心を読んだのか?」
「は? 何だそれ、何の話だ」
「いや……ばーかばーかって思ってたとかなんとかそういう話」
「どういう話だおいこら」
ふざけんなよおめー人が話してる最中に何考えてんだよもしかして今までの話横流しかよおめーおいまじか――といかにも憤慨する態度の幼馴染。そうそれ。そんな態度を今まで心の中でしてました。
「……ん? じゃあ、何か? ラブコメの話には興味がないってことか?」
「まあ、そうだね。ごめん」ようやく僕の心情を察知できたらしい幼馴染に、やさしく返答する。「ラブコメに興味がないっていうか、何でいきなりそんな話をし始めたのかがわからない」
「……いやいやいやいや」
すると友人は少し苦笑いをしてから、こう言った。「先週貸したじゃねーか、俺がおすすめの少年誌のラブコメ。なのにラブコメに興味がないってのはちょっときついぞ」
「あ」
言われて僕は気づいた。
確かに先週、貸してもらったような。
「あー、うん、あー、あれ、あれだよな、あれ、なんだっけ、幼馴染と鍵の約束して、十年後に再会して、あー、ピッキングしようねっていう漫画だよな」
「……ラブコメじゃねーじゃねーかそれ」
「んん、ち、ちがう、あれだ、お互いをピッキングし合おうねっていう……」
「ち、違う違う! そんな宇宙からやってきたヒロインが風呂場で裸になって登場するような漫画は貸してねーよ! やめろ、あの純粋なラブコメを汚すんじゃねえ!」
忘れてたんなら忘れてたでいいよ仕方ねえ! と叫びながら自らが座る椅子をがったんがったん揺らし始める幼馴染。「違うんだよー……ギャップとかさー赤面顔とかさー……そういうのが素晴らしいっていう漫画だってことを知ってほしかっただけなんだよー」
「ギャップ? そんなんあったか?」
「あったよ……いや、お前に貸したのは一巻だけだったっけか?」
「ああ。確か、うん」
「……じゃあギャップ云々でてこねーかもなあ……てか何巻に出てきたんだっけなあのキャラ……覚えてねーや……何やってんだか俺は」言いながら疲れたように再度ため息をつく幼馴染。それにつられるように先刻とは違うから揚げを口に放り込む僕。「あのラブコメがすごいのはさ……パンツとかそういうのをあんまり出さずに、ヒロイン同士のバトル漫画みたいになりたってるところなんだよなあ。主人公が鈍感で、なおかつ好きな女の子がいるんだけども、その周りの女の子達が出番をとっかえひっかえしながら主人公をじわじわ攻めていく――なおかつ俺ら読者も攻めていくっていうさ。そういうのがいいんだよ……これぞ少年漫画のラブコメっていう感じで。しかも幼馴染を主軸にしたラブコメ。幼馴染。これがいいんだ」
「ふーん。そうなのか」
「結局、読んでないんだよな?」
「ううん。読んだと思うよ。あれだろ? 主人公とヒロインの父親が両方ともヤクザで、あー、極悪非道なことを学校で繰り返すのを主人公とヒロインがなんとか防ごうとする話」
「ちょっと記憶がぼやけるとすぐ変な方向いくんだな……」
「あー、で、そんでもって」確かに幼馴染の言うとおりのようだけど、それもそのまま鵜呑みにしてうなずくという選択肢は僕にはないので、うーんうーんとうなりながら、右手に持つ箸をくるくると旋回させながら、僕は言った。「主人公が、幼馴染のことをもみくちゃにしちゃう話」
「……な」
「違うか?」
「だ、だからそんな、え、エロ漫画みたいなラブコメじゃねーっつの!」
そういうと幼馴染は「そろそろ昼放課も終わるから席に戻るわ」と、そそくさと僕の前の席から退散した。
昼放課……まだ十分くらいはあるよな?
さっきまであんなに意気揚々と語ってたくせに何をそんなに急ぐことがあるのだろう。
そもそも、なぜラブコメの話をまくしたてたのかが、やっぱりよく理解できない。結局のところ僕はいつあの漫画を返せばいいのかわからないし。
――全く。
昔はよく遊んでいた幼馴染とはいっても。
やっぱり男の子のことはよくわからないな――と、僕は思った。
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安○院さんと、千○と小○寺さんが大好きです。勿論他ヒロインも大好きです。
ジャン○プ最近面白くなってきてて、良いですね。そんなどうでもいい話でした。




