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【サザンの楽曲「勝手に小説化」シリーズ(2)】『メリケン情緒は涙のカラー ~ヨコハマに消えた女~』(原案:桑田佳祐)

掲載日:2026/06/18

私は、アメブロの、

「頑張れ!法政野球部」

で、私が大好きなサザンオールスターズや桑田佳祐の楽曲の歌詞を元にして、私が「短編小説」を書くという、

「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」

という物を、断続的に書いている。


既に、上記のブログで私は今まで、「約70本」の「サザン小説」を書いて来たが、この度、私は「小説家になろう」の方にも、私が今までに書いた「サザン小説」の中からチョイスして、多少のリライトを行なった上で、転載させて頂く事とする。


私が初めて、アメブロで「サザン小説」を書いたのは、2022(令和4)年のクリスマスの日だった。

その時に私が書いた「サザン小説」の「第1作」は、1985(昭和60)年にリリースされた、サザンのアルバム、

『KAMAKURA』

に収録されていた、

『死体置場でロマンスを』

という曲の歌詞を元にした小説だった。


『死体置場でロマンスを』

は、元々、歌詞が「ストーリー仕立て」になっているので、私としては、その歌詞を元に小説を書くのは、非常にやりやすかった。


そして、私が書いた「サザン小説」の「第2作」は、

1984(昭和59)年にリリースされたサザンのアルバム、

『人気者で行こう』

に収録されていた、

『メリケン情緒は涙のカラー』

という曲の歌詞を元にして書いた小説である。


『メリケン情緒は涙のカラー』

も、歌詞がストーリー仕立てになっており、しかもサスペンスの要素が満載の、とても面白い歌詞である。


という事で、

『メリケン情緒は涙のカラー ~ヨコハマに消えた女~』(原案:桑田佳祐)

を、ご覧頂こう。

(※なお、一応言っておくと、本作『メリケン情緒は涙のカラー』は、前作『死体置場でロマンスを』とは全く無関係である)



<第1章・『ニューヨークの女』>


私は、かつて外交官を務めていた。


1930年代、日本でいえば昭和初期の時代、私は仕事で、アメリカのニューヨークに滞在していた。


ニューヨークといえば、当時から既に「摩天楼」が立ち並ぶ、世界有数の大都市として知られていたが、ニューヨークには多種多様な人種の人達が居り、活気に満ち溢れていた。私も、そんなニューヨークの街の喧騒が大好きであった。


当時の私は、仕事柄、沢山の国の人達と出逢い、情報交換をしていたが、ある日の事、仕事で知り合った、さる上流階級の婦人から、私はニューヨーク州の南東に浮かぶ、ロングアイランド島の豪邸で開かれる、パーティーに招かれた。


正直言って、私はパーティーの場などは苦手だったが、

「これも仕事の内だ」

と割り切って、私はそのパーティーへと出掛けて行った。


そのパーティーには、上流階級の人だけではなく、様々な職種の人達も来ており、皆、それぞれ楽しそうに歓談していたが、それらの人達へ、いちいち挨拶回りをしていた私は、少し休むために、部屋の隅の椅子へ腰を下ろした。


そして、私が「あの女」と出逢ったのは、そんな時だった。


私が、椅子に腰掛けながら、ふとパーティー会場を見回してみると、ふと、1人の女に目が留まった。その女は、私から見ると、ハリウッド映画の大女優として知られた、メアリー・ピックフォードに、とても良く似ていた。


つまり、かなりの美人だったが、彼女もまた、私と同じく、所在なさそうに1人で佇み、右手にグラスを持ち、何処か退屈しているように見えた。


そして、私と彼女は、ふと目が合ったが、彼女は私を見て、ニッコリと微笑んで見せた。私も、いつも仕事でそうしているように、軽く会釈をして、愛想笑いを返した。


すると、その女は私の方に近付いて来て、

「こんばんは」

と、挨拶をして来たので、私も、

「こんばんは」

と挨拶を返した。


「こういうパーティーには、よくいらっしゃるのですか?」

私が尋ねると、彼女は首を振って、

「いいえ、初めてよ」

と答えた。

「ねえ、ここは暑いわ。少し外で休みましょう」

彼女は、そう言って、私を促したが、私も彼女に言われるまま、彼女と一緒に部屋の外へ出た。


その夜のロングアイランド島の空には、とても美しい月が出ていた。


私達は、邸の庭を歩きながら、こんな会話を交わした。


「貴方は、ああいうパーティーには、よくいらっしゃるの?」


「いいえ、私も初めて来ました」


「そうなの。貴方、お仕事は何をしていらっしゃるの?」


「外交官です。今日は、仕事で知り合った方に招かれまして…」


「そうだったのね」


そこで少し会話が途切れたが、彼女はふと、思い付いたように、


「ねえ。貴方はニューヨークに来て、どれぐらい経つの?」


と聞いてきたので、私は、


「半年ぐらいですね」


と答えた。


「そう。それじゃあ、ニューヨークの暮らしにも慣れたのかしら?」


「ええ、まあ…」


彼女に聞かれ、私はニューヨークでの暮らしにも、少しずつ慣れて来たと答えたが、そこで彼女は意外な事を口にした。


「貴方、お芝居には興味は有る?」


私は、そういう話題になるとは思っておらず、少しビックリしたが、


「芝居ですか?まあ、それなりには…」


と答えたところ、彼女は、


「そう。それなら、今度、私はブロードウェイの舞台に立つので、良かったら見に来ない?」


と言って来たのである。


どうやら、彼女は本当に「女優」だったらしい。


「ブロードウェイの舞台ですか!?それは凄いですね」


私は素直に感心し、


「そういう事なら、是非、見に行かせて頂きます」


と、答えていた。


その返事を聞いて、彼女は、パッと表情を輝かせ、とても嬉しそうな顔をした。


「有り難う!とても嬉しいわ」


こうして、トントン拍子に話は進み、私は彼女が出演するという、ブロードウェイの舞台を見に行く約束をしてしまったが、


彼女は、

「今度、舞台を見に来てくれたら、受付に言ってくれれば、タダで入っても良い」

とまで言ってくれたので、これは断るわけにもいかないと、私は思ったのである。


しかし、それよりも何よりも、彼女は私の「タイプ」だった、というのが、私が彼女の舞台を見に行くと約束してしまった、最大の要因である。


「それじゃあ、今度、劇場でね!」


私は、彼女から、舞台が行われる日付や、会場などの詳細を聞き、


「必ず、見に行きます」


と、約束した。


そして、私は彼女に、


「貴女の、お名前を聞いてませんでしたね」


と言ったところ、彼女は、


「あら、ごめんなさい。まだ言ってなかったわね。私の名前はエリーよ」


と、自分の名前を教えてくれた。


こうして、私はその女…「エリー」と出逢ったが、今にして思えば、この「エリー」という名前は、果たして本当の名前だったのかどうか…。


しかし、ともかく、彼女の名前は「エリー」という事で、話を進める事とする。




<第2章・『ブロードウェイの女』>


ロングアイランド島でのパーティーから少し経った頃、「エリー」が出演するという、ブロードウェイの舞台の日がやって来た。


普段、仕事が忙しく、私は芝居見物などをしている暇は無かったが、初めてブロードウェイを訪れた私は、その煌びやかさ、華やかさに圧倒されてしまった。


ブロードウェイは、昔も今も「芝居の街」だが、1930年代、ブロードウェイのミュージカルは、全盛期を迎えており、どの劇場も、連日、超満員の観客で埋め尽くされていた。


私は、彼女が出演する公演が行われる劇場を訪れ、受付で、

「エリーさんにお招き頂いている」

という旨を伝えた。


その時、私は実は、「エリー」に渡すために、赤い薔薇の花束を持っていた。


「これを、エリーさんに渡して頂けますか?」


私は、受付の人にそう伝えたところ、受付の人が、中の係員に一言二言、言葉を交わすと、


「楽屋にご案内しますので、エリーさんに直接お渡しして下さい」


と、私は係員に言われたのである。

私は驚いたが、せっかくの機会という事もあり、私は係員に導かれ、劇場の裏口から、楽屋の方へと通された。


「こちらに、いらっしゃいます」


係員にそう言われ、私は楽屋の部屋をノックすると、中から、


「どうぞ」


という返事が返って来たので、私はドアを開け、中へと入って行った。


楽屋では、「エリー」が大きな鏡を見ながら、舞台のためのメイクをしていたが、鏡の中に、花束を持った私の姿を見ると、パッと振り向き、


「来て下さったのね!とても嬉しいわ!!」


と、顔を輝かせた。


「舞台、頑張って下さい!!」


私は「エリー」に花束を渡すと、「エリー」は、


「有り難う!!」


と言って、とびっきりの笑顔を見せた。


彼女に喜んでもらえて、私としても、花束を持って行った甲斐が有ったというものである。


「舞台、頑張るから、見守っていてね」


「エリー」にそう言われた私は、楽屋を後にすると、客席に着いた。


客席は、既に超満員であり、皆、今か今かと開演を待っていた。


そして、「エリー」が出演する舞台が幕を開けたが、

「エリー」が出演していた舞台は、後に、映画『巨星ジーグフェルド』で描かれたような、絢爛豪華な物であり、歌あり、踊りありの、とても華やかなショーだった。


「エリー」の役どころは、「準主役」ぐらいの、重要な役であり、舞台上の「エリー」は、とても生き生きとした様子で、輝いていた。


私は、「エリー」の姿に、すっかり見惚れてしまったが、それと同時に、


「アメリカっていうのは、凄い国だな…」

と、思ったものである。

こんな絢爛豪華な舞台が、毎日、ブロードウェイの沢山の劇場で開かれているというのは、考えてみれば、本当に物凄い事である。


やがて、舞台の幕が閉じると、観客席からは万雷の拍手が起こった。

気が付くと、私も席から立ち上がり、力いっぱい拍手をしていたが、とても素晴らしい舞台に、私はとても感動していた。


カーテンコールで、出演者一同が姿を現した時、「エリー」は客席に私の姿を見付け、笑顔で私に手を振って来た。


この時、私は「エリー」の事を、すっかり好きになっている事に気付いていた。




<第3章・『白い恋人達』>


舞台が跳ねた後、私は再び、楽屋に「エリー」を訪ねた。


「今日は、来てくれて本当に有り難う!!」


「エリー」は頬を上気させ、私に笑顔を見せた。


「エリー、本当に素晴らしい舞台だったよ」


私は、心の底からそう思い、「エリー」の舞台がいかに素晴らしかったのか、そして私が如何に感動したのか…という事を、彼女に伝えた。


「エリー」は、大きな舞台を成功させ、幸せいっぱいの様子であった。


そして、この時、私は我ながら呆れるぐらいの大胆さ(?)で、


「エリー、舞台の成功を祝って、今度一緒に食事に行こう」

と、「エリー」を誘ってみたところ、「エリー」は少しビックリした顔をしていたが、

「いいわよ!」

と、返事をしてくれたのであった。


こうして、舞台を見に行った勢いに任せ(?)、私は「エリー」を誘い、それから暫くした後、私は彼女と一緒にディナーに行った。


「エリー」は、スターを夢見て、田舎からニューヨークに出て来て、日夜レッスンに励み、そして、この度、ようやく大きな役を得る事が出来たという事を、熱っぽく語っていた。私は、今まさに夢を叶えようとしている「エリー」の事が、とても眩しく見えた。


「貴方は、どうして外交官になったの?」


「エリー」にそう聞かれた私は、


「色々な国に行って、もっと広い世界を見たかったから」


と答えたが、


「そのお陰で、こうして君と知り合えたのだから、本当に良かった」


と、思わず言ってしまっていた。

その言葉を聞き、「エリー」は顔を赤らめた。


その後、私と「エリー」はデートを重ね、恋人同士となった。

その間、「エリー」は女優として活躍を続け、私も外交官として忙しく働いていたが、気が付くと、ニューヨークは冬になり、セントラルパークは雪景色となっていた。


思えば、私がニューヨークに来たのは、ちょうど1年前の冬であり、それから1年が経っていたのである。


そして、そんなある日の事、私に「辞令」が届いた。それは、


「ニューヨークでの勤務を終え、日本に戻って来るように」


との内容であった。


私は、「エリー」にその事を告げると、彼女はとても悲しそうな顔をした。


「そんな…。せっかく、こんなに親しくなれたのに…」

彼女は俯き、涙を堪えていた。

しかし、私としても、これはどうしようも無い事であった。


暫く考え込んだ後、「エリー」は、こんな事を言った。

「ねえ…。今度、私も日本に行ってみたいわ!!」

「エリー」にそう言われ、私は、

「わかった。日本に帰って、落ち着いたら、必ず手紙を書くから。そうしたら日本に来てくれないか」

と言うと、「エリー」は、

「わかったわ。必ず、日本に行くわ!!」

と、答えた。


こうして、私は後ろ髪を引かれる思いで、日本に帰ったが、

「エリー」との約束通り、私は一旦、落ち着くと、「エリー」に対し、

「迎えに行くから、横浜に来て欲しい」

という手紙を出した。


それから、程なくして、「エリー」から返事が来た。

「必ず行くから、横浜で待っていて欲しい」

手紙には、そう書いてあった。


こうして、私は横浜の港で、「エリー」を迎える事となった。




<第4章・『ヨコハマの女』>


ニューヨークで、一旦「エリー」と別れてから、暫くして後、


「エリー」は船に乗って、日本へとやって来た。


私は、横浜港で「エリー」を迎えたが、船上の「エリー」は私の姿を見付けると、力いっぱい、手を振って来た。


入国手続きを終え、「エリー」は日本に上陸し、私の方へ駆け寄って来た。


「逢いたかったわ!!」

「エリー」は、私に抱き着いて来たが、周りの日本人達が、その様子を見てビックリしていた。


その頃の日本では、人前で男女が抱き合うなど、考えられないような時代だったのだから、仕方が無い。


それはともかく、私は「エリー」の長旅の疲れを労い、


「宿を取ってあるから、案内するよ」

と言って、「エリー」を宿泊先のホテルへと連れて行った。


「エリー」の宿泊先は、当時、横浜に有った、

「BUND HOTELバンド・ホテル

という所だったが、「エリー」は、

「とても素敵な所ね」

と言っていた。

どうやら、彼女はこのホテルを気に入ってくれたようである。


「エリー、今日はゆっくり休んだら、明日、横浜の街を案内するよ。何処に行きたい?」

私がそう尋ねると、「エリー」は少し考えてから、

「チャイナ・タウンを見たいわ。それから、日本のお芝居を見てみたい!!」

と答えた。


「わかった。それじゃあ、明日、案内するからね」

私は「エリー」にそう約束した。

「エリー」は、流石は女優なだけあり、日本の芝居に興味が有るようだった。


翌日、私は「エリー」を案内し、横浜の「チャイナ・タウン」、即ち「中華街」に行った。

「エリー」は、物珍しそうに、キョロキョロと辺りを見回していたが、アメリカ人の彼女にとって、「中華街」はとても珍しいのだろうと、私は思った。


私と「エリー」は、「中華街」に有る、1つの店に入り、一緒に食事をした。


「エリーは、中華料理は初めてかい?」


「いいえ。前に食べた事が有るわ」


私達は、そんな会話を交わした。


私は、「エリー」を山下公園の「薔薇園」にも案内した。


「エリー」は、薔薇の花がとても好きな女性だった。


沢山の薔薇を見て、彼女はとても喜んでいたが、

「薔薇って、とても美しいけど、棘が有るから、気を付けないといけないわね」

と、「エリー」は唐突に、そんな事も言っていた。


今にして思えば、その時、「エリー」は何か私に伝えようとしていたのだろうか…。




<第5章・『芝居小屋にて』>


その後、私は「エリー」のたっての希望により、

当時、伊勢佐木町界隈に沢山有った、芝居小屋が立ち並ぶ辺りへと、彼女を連れて行った。


当時の伊勢佐木町は、東京・浅草と共に、沢山の映画館や芝居小屋が有る、「芝居の街」だった。


「ブロードウェイに比べたら、見劣りするかもしれないけど…」

私は、そんな事を言ったが、「エリー」は、

「そんな事ないわ。活気が有って、とても楽しい所ね」

と言って、その雰囲気を楽しんでいる様子だった。


私達は、伊勢佐木町の芝居小屋の1つに入った。

ちょうど、その日は、当時、浅草で大人気だった、エノケン(榎本健一)・ロッパ(古川ロッパ)の芝居が、横浜に「遠征」に来ていたのであった。


当代きっての人気者、エノケン・ロッパの「共演」という事も有り、芝居は大盛況だったが、私は「エリー」のために、あらかじめチケットを取っておいたのである。


私と「エリー」は、隣同士に座り、芝居見物をしたが、面白おかしいエノケン・ロッパの芝居を見て、「エリー」も大笑いしていた。


その後、芝居の幕間の時に、「エリー」は私に、


「ちょっと、化粧室に行ってくるわ…」


と告げて、席を立った。


「ああ。行っておいで」


私はそう答えた。


しかし、その後、「エリー」はいつまで経っても、戻っては来なかったのである。


舞台の後半が始まっても、「エリー」は、席に戻って来なかった。


「エリー、どうしちゃったんだろう…」


私は、「エリー」の事が気になり、その内、舞台の内容も頭に入らなくなってしまった。


やがて舞台が終わったが、とうとう「エリー」は席に戻らなかった。


「エリー、どうしたんだ?」

私は席を立ち、「エリー」を探しに行ったが、芝居小屋の何処にも、「エリー」の姿は無かった。


「すみません、さっき、外国人の女の人が、ここに来ませんでしたか?」

私は、入口の係員にそう聞くと、その係の人は、

「ええ。さっき、いらっしゃいましたよ。外に出て行かれました」

と答えたのである。


「何だって!?」

私は、ビックリしてしまった。

「エリー」は、私に何も告げず、芝居小屋から出て行ってしまったという。


「それで、彼女は何処へ行きました!?」


「さあ…」


係員に聞いても、それ以上は、サッパリ要領を得なかった。

私は、血相を変えて、外へ飛び出した。




<第6章・『夜霧のチャイナ・タウン』>


「エリー!!何処へ行ったんだ!?」


私は、突然、プッツリと姿を消してしまった「エリー」を、必死に探し回った。


彼女が何処へ行ってしまったのか、私には皆目、見当が付かなかったが、私は、先程「エリー」と共に訪れた、「中華街」に行ってみた。


「中華街」には夜霧が立ち込めていたが、私は「エリー」の名を呼び、駆け回っていた。


ふと気が付くと、中華街の中ほど辺りに、何とも怪しげな扉が有る建物が有った。

そこは、私も噂に聞いていたが、中は「アヘン窟」であると、囁かれている場所だった。


入口には、数人の中国人の男達がたむろしていたが、私は、彼らに、

「アメリカ人の女を見かけなかったか?」

と、聞いた。


最初は、

「さあ、知らねえな」

というような返事だったが、私が、なおも必死に食い下がり、


「メアリー・ピックフォードに良く似た美人の女だ。本当に見掛けなかったか!?」

と聞いてみたところ、中国人の内の1人が、

「ああ。さっき、ここを通ったぜ」

と答えた。


私は、

「本当か!?それで、彼女は何処へ向かった!?」

と、急き込んで聞くと、男は肩をすくめ、

「さあな」

と答えた。


どうやら、「エリー」はこの道を通ったらしい。

しかし、何故、彼女が、こんな怪しげな場所を通ったのだろうか…。

私は、なおも、腑に落ちなかった。




<第7章・『黒い薔薇』>


散々、辺りを探し回ったが、結局、「エリー」の行方は、手掛かりさえ掴めなかった。


疲れ切った私は、彼女が宿泊する「バンド・ホテル」の部屋へと帰って来た。

すると、私はそこで信じられない物を目にした。


部屋のバスタブを見ると、そこには一輪の黒い薔薇が置いてあったのである。


「何だ、これは…?」


さっきまで、こんな物は無かった筈である。

この黒い薔薇は、一体、何を意味するのであろうか?

それが意味する所が全くわからないだけに、なおの事、不気味であった。


ふと、ホテルの部屋の窓の外を見ると、国籍不明の巨大なタンカーの姿が、横浜の港の灯に揺れていた。


「あんな船、停まってたか…?」

私は、首を傾げた。


少なくとも、「エリー」を横浜に出迎えてからは、あんな船は確かに、港には無かった。

先程の黒い薔薇と言い、「エリー」が消えてしまった事と、何か関連が有るのであろうか?


私は考え込んでしまった。




<終章・『メリケン情緒は涙のカラー』>


それから、どれぐらい経った頃か…。

不意に、部屋の扉がノックされた。


私は、すぐに部屋の扉を開けると、そこにはホテルのボーイが立っていた。


「これを、お預かりしております…」

彼は、手に電報を持っていた。


私は、それを受け取ると、そこには、こう書かれていた。


「サンギョウドウロニテマテ…『産業道路にて待て』って事か!?」


横浜の近くに、「産業道路」という名で知られるバイパスが通っているが、このメッセージを書いた人物は、私をそこに呼び出したという事である。


「もしかしたら、エリーはそこに居るのか…?」

私は、そこに行くべきか、それとも、「エリー」の帰りを待つべきか、思い悩んでいた。


なお、この時、私は気が付いていなかったが、黒い薔薇の花言葉は、

「決して滅びる事の無い愛」

を意味するという。


果たして、これは「エリー」からのメッセージなのだろうか…。


「エリー…。君は一体、何処へ行ってしまったんだ…。そして、君は何者なんだ…?」

私は、急に「エリー」という女の正体がわからなくなってしまったような気がしていた。

そして、私は黒い薔薇を見ながら、いつまでも「エリー」の事だけを考えていた…。



『メリケン情緒は涙のカラー』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ


メリケン情緒は涙のColorカラーOh,no


翔びかう妙な叫びが Yokohamaに


エノケン・ロッパの芝居途中どうして Oh,no


彼女の姿が消える??



※夜霧のChina townを中ほど行くあたり


吐きだめ たなびく 魔の扉 Oh,oh,oh.


I belong to you, my life is SORA-MIYO


今ここにいない 打つ手も無い


悲しく Lonely man


BUND-HOTELバンド・ホテルのバスタブにゃ 黒い薔薇


殺意告げる message on the floor



漂うムードは 胸元 heavy, Oh no


行方も手がかりさえ見つからず


なぜか国籍不明の Big Tankerビッグ・タンカーOh, no


港の灯に揺れている



※山手の裏町 いばらの地の果てに


噂のシンジケート 謎の影 Oh, oh, oh.


I belong to you, my life is SORA-MIYO


頻闇惑う命まで


今宵も Lonely man


”産業道路にて待て"との連絡は


夢をつなぐ message from the man



※※良くない予感を脱ぎ捨てて


彼女の帰りを待つの



メリケン情緒は涙のColorカラーOh,no


彼女の姿が消える

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