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12話 勧誘 カーナリア・リベリウス


翌朝、澄み渡る青空の下、太陽は高く昇り、光は清らかで、まるで世界そのものが再出発を祝福してくれているかのようだった。


肌を撫でる風は心地よく、けれどその爽やかさとは裏腹に、少しだけ体が重い。

引きこもっていた数日間で、体力が落ちてしまったようだ。それでも、私の心には、新たな野望が燃え上がっていた。


「まずはメンバー集めですわ!」


作戦を実行に移すには、まずあの四人を集める必要がある。

そして、最も協力的になってくれそうなカーナリアから交渉を始めることにした。


彼女なら、私の提案を一番前向きに耳を傾けてくれるはずだ。


私は小さく呟くと、カーナリアの邸宅に足を向けた。彼女の住んでいる場所は首都の東北に位置しており、王宮区画の中でも陽光が豊かで緑に恵まれた地域だ。


カーナリアの家は、この都市の中でも一際目を引く豪邸だ。

白亜の壁に、蔦が絡みつく優雅な門。庭には色とりどりの花が咲き乱れ、甘い香りが辺りに漂っていた。

門扉に手をかけ、呼び鈴を鳴らす。


「はーい、どちら様でしょうか」


しばらく待っていると、扉の向こうからカーナリアの声が聞こえてきた。やがてドアが開く音がし、彼女の顔がひょっこりと現れる。金髪の髪が陽光にきらめく。


「――!」


彼女は、私を見るなり目を大きく見開いた。けれど、その驚きはすぐに笑みに変わる。


「おはようミシェル!」


カーナリアの顔に、ぱっと明るい光が灯った。彼女の笑みは、私の復帰を心から喜んでくれているのが、その表情から伝わってくる。


「もう大丈夫なの?」


カーナリアは私の顔をじっと見つめ、心配そうに問いかけてくる。


「ええ、心配かけましたわね。ご覧の通り元気になりましたわ!」


私は満面の笑みを浮かべ、元気な様子を見せた。心臓が少しばかり早鐘を打っているが、それを見破られないよう、努めて明るく振る舞う。

「ところで、前に言っていたダンジョン攻略のパーティ、もう決まっているんですの?」


私は探るように尋ねた。核心に触れる質問に、内心はドキドキしていたが、平静を装う。

顔には一切、感情を出さず、あくまで自然な会話を装った。


「ううん、まだ決まってないよ。まだ日にちもあるし、ゆっくり決めようかなって思ってたところ」


カーナリアは、少し首を傾げながら答えた。その言葉を聞いて、私の心臓が小さく跳ねる。

これは好機だ。まさに私が予想してた通りの展開だった。


「でしたら、私とパーティを組んでくださる?」


私がそう問いかけると、カーナリアは一瞬だけ目を丸くしたが、すぐに嬉しそうに破顔した。


「うん!もちろんそのつもりだったよ!ミシェルが誘ってくれるの、待ってたんだから!本当に嬉しい!また一緒に冒険できるなんて」


彼女は満面の笑みを浮かべ、私の手をぎゅっと握った。その温かい手に、私は安堵のため息を漏らす。これで一人確保だ。


「残りのメンバーはすでに目星をつけていますわ。わたくしが集めますわ」


「うん、任せたよ。……あ、ちょっとだけ待ってて。すぐに支度してくるから、一緒に登校しよう!」


カーナリアはそう言うと、ぱたぱたと家の中へと戻っていった。私は彼女が出てくるのを待ち、二人で連れ立って学園へ向かった。


◇◇◇◇◇◇◇


パタン、と扉が閉じる乾いた音が、静かな家の空気に響いた。

その音に反応するように、リビングから父が廊下に顔をのぞかせる。


「カーナリア、誰か来てたのかい?」


私はくるりと振り返り、父に向かって満面の笑みを浮かべる。


「うん、今、ミシェルが迎えに来てくれたんだ!準備しなきゃ!」


「そうか。気をつけて行っておいで」


「うんっ!」


勢いよく返事をしてから、くるりと踵を返すと自室へと駆け戻った。


ドアを閉めると、途端に胸がふわりと弾む。ベッドに身を投げ出し、顔を枕に埋めながら、思わず笑ってしまった。嬉しくて、少しだけ照れくさくて。


「楽しみだなぁ、ミシェルとのダンジョン探索……なんだか、小さい頃に戻ったみたい」


目を閉じると、懐かしい記憶がゆっくりと蘇ってくる。

まだミシェルが今よりずっと小さくて、怖がりで、人見知りで。私の背中に隠れてばかりのそんな子だった。


私のほうが先に生まれたから、彼女のことを、ずっと妹のように感じていた。


あの頃のミシェルは、ずっと私の手をぎゅっと握っていた。

……それが、いつの間にか。

中等部に上がる頃には、彼女の背もぐっと伸びて、魔術の腕も磨かれて。

少しだけ生意気になって、時には口喧嘩もするようになった。

けれど、私にとっての彼女は――ずっと、特別な親友。


彼女が学園を休んでいた間、私は心配していた。声に出すことはなかったけれど、戻ってくる日を、ただずっと待っていた。こうしてまた彼女が笑って、私の前に戻ってきてくれた。

それだけで、もう十分だった。


「よーしっ……準備して、行かなくちゃ!」


高鳴る鼓動をそのまま力に変えて、玄関へ向かう。扉を開けると、澄み切った空の下に、ミシェルの姿が見えた。

桃色の髪が朝の光に輝いていて、彼女がこちらに気づき、軽く手を振ってくれる。


その仕草に、胸の奥があたたかくなる。

私は足取りも軽く、彼女のもとへ駆けていった。

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