転生手順#5「女性の胸部と詩とオッサンと」
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「転生手順#5を提示します」
──それは、まさに新たなプレイスタイルの宣告だった。
ナビゲーターGPTの声は、なぜか嬉しそうだ。
その音色はまるで、Cカップくらいの小躍りだった。
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「自作ポエムを三編作成し、“女性の胸部” への敬意と愛を詩に込めて、近所の公園で朗読してください」
「……………お前、今、“公園” って言った?」
「はい。朗読とは、世界への宣言です。
あなたが “女性の胸部” と真剣に向き合う決意を、声にして発するのです」
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俺の魂が震えた。
この感覚は……まさかこの歳で覚醒したのか!?
新たなステージに立てと? 起てと言うのか!?
ここまで来たら──やるしかない!
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【当日:近所の公園】
ジャージ。キャップ。マスク。変装バッチリ。
手にはA4プリント三枚。
中身はすべて、俺が書いた “女性の胸部へ対する詩”。
時刻、午前9時。
老人たちがゲートボールをしている。
夫婦が犬と散歩している。
子供はいない──朗読にはギリギリのタイミング。
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女性胸部への詩 一編目:「はじめての高鳴り」
白シャツの中に揺れる命、
通学路の角、見えたのは偶然か、運命か。
その一瞬に、俺の人生がはじまった。
揺れて、跳ねて、包まれる未来。
あの時の躍動感は、今でも俺の脳裏に焼き付いている。
忘れることなど出来はしない! あの推定Gカップ!!
ありがとう。もし生まれ変わるなら──あなたの胸部に包まれたい。
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嗚呼……なんたる開放感。これが新世界か……。
「第一詩──完了。」
「新世界じゃねぇ! ……恥ずかしすぎるわ!!」
老夫婦の犬がこっち見てる。
飼い主は笑ってる。やめてくれ、そっとしてくれ。
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女性胸部への詩 二編目:「角度の神話」
38度──それは奇跡。
重力と構造、筋肉と脂肪が生んだ、偶然の角度。
ただの曲線ではない、人生の起伏。
その傾きに、俺は恋をした。
女性の胸部とは、もはや哲学だ。
あの時、あの瞬間のなんたる輝き!
全身を貫いた衝撃たるや!
嗚呼……生まれ変わるなら、手乗りインコならぬ “胸乗りインコ” になりたい。
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「哲学って言った俺、インコって言った俺……なんだよ! もう死にたい!」
でも、ここで止まったら──転生できない。
合法的に挟まれる転生という浪漫が……漢の夢が……遠ざかる!!
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女性胸部への詩 三編目:「ありがとうの詩」
あの日、俺を癒やしてくれたニット。
あの朝、俺の視線に微笑みくれたVネック。
君たちがいなければ、俺は今、
生きていないかもしれない。
本当にありがとう。
たとえ触れなくても、心で何度も触れた。
君たち二つ──二つで一つ。
揺蕩う谷間の記憶が、俺を前へと進ませた。
生まれ変わるなら、あなたの谷間の直上でキラリと光るペンダントになりたい。
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「……終わった…………キラリと光る涙が溢れそうだ……社会的に終わったくさい……」
空が青い。
ゲートボールのお爺さんが拍手している。
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「お兄さん、なんの朗読? おっぱ◯の話かい? 中々、熱い魂を感じたよ!」
「ありがとうございます! 通報はしないでくれると助かります!」
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その時、ナビゲーターGPTが告げた。
「合格です。あなたの詩には、敬意、感謝、欲望、そして恥じらいが詰まっていました。それこそが “本物の愛” です」
「そっか……俺、女性の胸部を愛してたのか……そうだよな……!」
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✅ 予告風
転生手順#6:
「“もし自分が女性の胸部だったら” という前提で、1日をシミュレーションしなさい」
──まさかの “女性胸部視点モード”!?
次回、“俺が女性の胸部だったなら”。
ついに始まる、自己再認識の旅!!
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