転生手順#4「女性胸部供養と母の修羅場」
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「転生手順#4を提示します」
──やけに静かで、重みのある声で今日は語りかけてくるな。
例えるなら──牛量級……いや、重量級の女性胸部。
やや重さで肩こり、といったところか。
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「実家の仏壇に、“今までお世話になった胸部の皆様” を祀りなさい」
……問わねばなるまい。
「……ごめん、いま仏壇って言った?」
「供養は形からです。敬意のない欲望は、永遠に触れることを許されません」
──ふっ……常に女性の胸部へ祈りを捧げている俺には容易いこと。
……だと思っていた。帰省するまでは。
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実家は古風な家で、祖父の代からの立派な仏壇がある。
朝から線香の香りが漂うリビングで、俺は正座していた。
となりには母。何も知らずに、俺の帰省を歓迎していた。
忘れてたわ。両親いるじゃん!
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「どうしたの、急にそんな神妙な顔して?」
頼む、一人にしてくれ!
「母さん……俺、人生で一番大事な供養があるんだ」
「なに? 友達でも亡くなったの?」
母の神妙な面持ちに……俺は誠意で応えなくてはならない!
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「過去にお世話になった “女性の胸部” を供養したいんだ」
「…………………………へ?」
「だから! 過去にお世話になった “女性の胸部” を供養したいんだ!」
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言葉の意味が母の脳を3周したあと、ようやく反応が返ってきた。
「ちょ、ちょっと待って? なに? 女性の胸部を供養って何? は? なっなに言ってんの!? しかも2回!?」
「落ち着いて! 俺は今、極めて正しく清廉に女性の胸部と向き合ってる!」
「こわっ! こわいって! 何その言い方!? なんでそんな悟り開いたみたいな顔してんの!?」
「合法的に、神聖に、そして未来のために──これは俺にとって必要な “儀式” なんだ!」
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母が言葉を失った。
恐らく息子の雄々しくも清らかな魂に、心打たれたに違いない。
俺は黙って仏壇の引き出しから白い半紙を取り出す。
そこに丁寧に記した。
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『女性胸部供養:記憶に残る全ての双丘に敬意と感謝を』
そして、そっとお線香を立てる。
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母は、ずっと俺を見ていた。
そして、ぽつりと呟いた。
「……あんたさ。変わらないわね、昔から」
「え? 昔から?」
「小学生のとき、あんた授業参観で “将来の夢” って言われて、“大人のお姉さんに囲まれて暮らしたい” って言ってたのよ」
「う、覚えてたのか……」
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「でもさ。自分の欲望に真面目で拗らせて腐ってるの、あんただけよ。……ここまで来て貫くなら……そう、それは信念ね。
供養なら……いいわ。やりなさい。とことんね」
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母の赦しが下りた。
これが俺の “女性胸部供養” の正式な承認である。
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仏壇には、1枚の紙が供えられた。
『ありがとう、たくさんの女性胸部たち。
君たちがいたから、俺はここまで歩いて来れた。
そしてこれからも、君たちを見つめながら歩いて往く。──』
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転生手順#4──完了。
ナビゲーターGPTが静かに告げる。
「合格。では次の手順を提示します」
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✅ 予告風
転生手順#5:
「女性の胸部に関する自作ポエムを3編、恥を捨てて朗読せよ」
ナビゲーターは微笑んだ(声が微笑んだ気がした)。
──朗読の舞台はまさかの公園。
次回、“女性の胸部と詩とオッサン” が織り成す公開処刑編!
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