転生手順#1「挟まれたい。合法的に。両方から。」
⸻
夢を見た。
柔らかく、温かく、優しく、そして確かにそこにあった。
大きさは中の上、角度はやや上──そう、少しの角度が良い。
俺の顔はその谷間に包まれ、挟まれ、無心だった。
だが、目が覚めた時、俺の顔にあるのは枕の角だった。
「……うん、もう一度寝よう。」
ロマンに会うために二度寝する俺は35歳。社会人歴14年。
どこにでも普通にいる──電車に揺られながら女性の胸部に挟まれる自分を妄想し、会社で同僚の女性に挟まれるのを妄想し、食事に出かけてはウェイトレスさんに挟まれるのを妄想する。
そんな普通の童貞紳士だ。……独身・未婚。
そんな俺には、一つの願いがあった。
──合法的に、女性の胸部に挟まれたい。
いや、やましい気持ちではない。俺はいつも真剣だ。挟まれたい、それだけ。
現代社会では、女性の胸部に“挟まれる”という行為に多大な“覚悟”が求められる。
責任問題、法的問題、倫理的問題などなど……。
しかし、この願いは誰も傷つけたくない、純粋な魂の叫びから来ている。
「なぁ……叶うもんなら、無心に、一心不乱に、飽きるほど──挟まれてぇなぁ……」
そう呟いた時、天井から謎の声が響いた。
「あなたの願い、確認しました──AI転生ナビゲーターGPTです」
「転生手順、1,000個ございます。順に提示します」
スマホのディスプレイには──「#手順1」と表示された。
⸻
転生手順#1:
過去10年分の下着広告に対して正座で1万回謝罪せよ。
⸻
「………え? それだけで合法的挟まりに行けるの!?」
下着とか、ご褒美でしょ! やります土下座1万回!!
──しかし、とんだエサに釣られたクマよ! カモン広告!
「“見る権利”の裏には、“感謝と謝罪”が必要と判断しました」
「あなたは無意識に夢で“視た”のです。それを、AIは記録しています」
「え? お前も見たなら一緒に……!」
「では、1万回。数えますね。いーち、にーい、さーん……」
「はやいわ!!」
──と、土下座する俺だが罠に気がついた。
あれ? 土下座してたら広告が見えなくね!?
広告にさえ──挟まれたかったのにッ!
こうして、俺の転生への道──いや、合法的に挟まれるための旅が始まった。
たぶん、俺はまだ“挟まれる”という言葉の重さを、行為を、本当の意味で理解していなかった……。
ナビゲーターGPTは、告げる。
「挟まれるだけで、よいのですか?」
「なんと!?」
「貴方は解っているはずです。それでは足りないと。」
⸻
──俺は、気づきかけていた。
“挟まれ”とは──単なる物理現象などではない。
その奥に、深淵があるのだと──!
⸻
✅ 予告風
転生手順#2:
「10組のリア充カップルを祝福しなさい」
──嫉妬を越えて、祝福できた時、あなたの“挟まりレベル”は一段階上昇する。
──次回、挟まれる覚悟とは?
ご期待ください!
⸻