卒業制作のトーテムポールから始まった学校史を辿る冒険
挿絵の画像を作成する際には、「Ainova AI」を使用させて頂きました。
堺市立土居川小学校に通う月石明花ちゃんには、ずっと気になっている事がありました。
それは校庭の片隅に佇む、奇妙な柱の事です。
不気味な顔みたいな模様が彫られ、オマケに塗料が落ちて斑になっているため、子供達は怖くて誰も近寄りません。
だからこそ、明花ちゃんは増々興味が湧いてくるのでした。
「乃紀ちゃん、千里ちゃん。あの不気味な柱の謎を私達で突き止めようよ。」
ある日の放課後、クラスの友達に切り出したのでした。
「賛成!」
「異議無し!」
友達二人も乗り気です。
何も知らないままでいる事に、二人とも我慢がならなかったんですね。
こうして三人の女子生徒達による、謎解き探検隊が結成されたのです。
手始めに三人は、先生達に聞いてみる事にしました。
だけど明花ちゃん達の小学校は市立なので、先生達もそう長く務めている訳ではありません。
「僕が赴任した頃には既にあったと思うよ。」
小学校で一番年上の校長先生も、首を傾げるばかりです。
行き詰まったかに思えた謎解き探検隊ですが、そこで乃紀ちゃんに良いアイデアが浮かびました。
「私には柱の凸凹が字に見えるんだよね。紙を当てて鉛筆で擦ったら、字が読めるんじゃない?」
図工の得意な猪地乃紀ちゃんは、石碑の字を写し取る「拓本」という技術を知っていたのです。
「字が出てきたよ、明花ちゃん!」
「へえ…『六年一組卒業制作・友情のトーテムポール』だって。」
しかし、それ以上の事を調べるのは難しそうです。
何しろトーテムポールに刻まれていた卒業年度は、今から何十年も昔なのですから。
市史や大昔の卒業アルバムを調べても、校庭のトーテムポールの情報なんて載ってません。
明花ちゃん達が諦めかけていた、その時でした。
「吹田栄喜穂…この人、私の御祖母ちゃんだ!」
昔の卒業文集を広げているのは、数世代前から堺に住んでいる吹田千里ちゃんです。
何と千里ちゃんの御祖母ちゃんも土居川小の生徒で、トーテムポールを卒業制作にしようと言い出した一人なのでした。
そうして千里ちゃんが御祖母ちゃんにトーテムポールの一件を伝えた事で、事態は大きく動きました。
「御祖母ちゃんが昔の同級生に呼び掛けてくれたお陰で、トーテムポールの補修と再塗装が行われる事になったんだ。私達も手伝わないとね。」
みんなの力で真新しく修理されたトーテムポールは、凄く嬉しそうです。
三人の女の子達の学校史を辿る冒険は、みんなにとっても素敵な思い出になったのでした。