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第17話 せっかくの料理



「じゃっ、俺こっちだから!」


「涼待って〜!結仁、じゃあねっ!」


住宅街の分かれ道。

涼と志穏は結仁に手を振ると振り返ってそれぞれの帰路についた。


結仁は二人を最後まで見送った。


陽が落ちかけ、辺りは茜色に染め上がっている。

不意に冷たい風が吹く。


「…今日も寒いな」


結仁は一人呟くと帰路についた。



空が暗くなり始める頃、結仁は家に着いた。


鍵を開け扉を開けるとそこにはエプロン姿の茉白が立っていた。


「上田くん。おかえりなさい」


するととびきりの笑顔を見せて出迎えた。


「ただいま。遅くなってすまないな」


結仁はそう言うと、玄関框に座り靴を脱いだ。


「いえいえ。今日はテストお疲れ様です」


茉白は結仁の頭を軽く撫でるとキッチンに向かって歩き出そうとしていた。


「…また撫でたな」


「だって、上田くんの髪の毛は、なんというか…サラサラで手触りがいいんですもんっ」


茉白は振り返り、悪戯っぽく笑った。


「…と言うか、なんでエプロン姿なんだ…?」


茉白は、ふふふと笑うと、


「…実は、今日のご飯は私が作りました!」


「…?作るんじゃなくて、作りました…?」


「はいっ!」


今にも褒めてほしそうな表情でガッツポーズを決め、結仁を見つめる。


「…それは、ありがたい。けどさ、東雲…?時間的にいつ作ったんだ…?」


「…えっと、20分くらい前でしょうか」


茉白はきょとんとした顔をする。


やっぱりだ。

今作り終わったのでは無い、作り終わって時間が経っている…。


保存状態も悪いだろう…。

茉白は食品ラップという物の存在を知っているのだろうか…。


結仁の心に心配が募る。


「20分前…。」


結仁は苦笑すると茉白に言った。


「…せっかく作ってくれた料理、冷めちゃってないか…?」


ハッと驚くと、段々と茉白の顔色が悪くなる。


「…あっ、確かに。せっかく作ったのに…」


そう言うと、茉白はしゅんとして小さくなった。


金色に光る目には涙が溜まっているの見えた。


(かなり頑張って作ったんだな。)


「まあまあ、せっかく作ってくれたんだ。それに、20分くらいどうったことないよ」


結仁は茉白に近づくと、頭に優しく手を乗せた。


「…ほんとですか?」


「本当。それで何を作ったんだ?」


すると次第に茉白の顔が明るくなり、自慢気に話し出した。


「今日はですね!カレーと、卵焼きは上手く巻けなかったので…スクランブルエッグに!」


(…卵焼き、出来なかったのか。それにその料理なら20分くらい置いといても大丈夫そうだな)


結仁はホッとして、胸を撫で下ろす。


「そうか。じゃあ、温め直して一緒に食べようか」


「はいっ!」


そう言うと二人はリビングに向かった。


リビングに入ると結仁はすぐにキッチンを確認した。


カレーが入っているであろう鍋には律儀に蓋が閉められ、思い切り散らかっている様子はなかった。


一方、スクランブルエッグの方はというと、


結仁の思っていた通り、何も被せずダイニングテーブルに放ったらかしのままだった。


やはり、茉白は食品ラップの存在は知らなかったのである。


ふいに茉白の方を見ると、にこにことした表情に可愛らしさを感じた。


(…東雲。ここまで来ると不器用じゃなくて、もうボケだぞ…。)


そんなことを心で思いながら微笑んだ。


結仁は寝室に荷物を置くと、茉白が作ってくれた料理を温め始めた。


カレーは火をかけて。

スクランブルエッグは電子レンジを使って。


「…東雲。作り置いてくれる時はな、この食品ラップってやつを料理の上に被せるんだ」


食品ラップの入った小箱を茉白に見せながら言った。


「…しょくひんらっぷ?」


「そう。食品ラップ。これを被せると料理の質が落ちずに、時間を置いといても美味しいまま保存出来るんだ」


茉白は、おぉーと感心したように頷く。


「この透明なフィルムに意味はあったんですね…!」


なんの効力もないと思って覚えていなかったのか…。


すると電子レンジの中で、ボンッと弾ける音がした。

茉白はそれに驚き、ピクっと体が動く。


「…今の、大丈夫です…??」


不安そうに聞く茉白。


それをなだめるように結仁は言った。


「あぁ、食品ラップをかけてると、膨張熱でよくなることだから気にしないで」


「そ、そうですか…」


そんなことを話しているうちに、電子レンジが鳴った。


茉白の作ったスクランブルエッグの完成だ。



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