兵士としては最優、人間としては欠陥品
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
――兵士としては最優、人としては欠陥品。
俺を彼奴に宛がった彼はそう言った。物凄い皮肉を込めた一言の割に、一番傷付いているのはその言葉を吐いた本人だった。
そして俺は知る事になる。この言葉の意味を。
ベッドでくったりと横になり、そっぽを向いた其奴は不貞腐れた様に目を向けようとしない。前々から予定を組んでいた事が丸潰れになり、不機嫌になっているのだ。
……最もそれを止めたのは俺だが。空元気に出掛ける準備をし、でも時折しんどそうにビーズクッションに横たわるのを見て、断念させた。今の此奴はかなり無理をしている。
「元気なのに」
「俺からしてみると全然そんな風に見えない」
元気な奴は着替えの合間にソファに横にならないって。
「熱なかったもん。馬鹿は風邪ひかないもん」
「それだけ弱ってるんだよ。今は寝とけ」
馬鹿は風邪引いてても気が付かないの応用がそれだ。
「むぅ」
ああ言えばこう言う。けれども不毛な争いと感じたのか、結局は黙り込んだ。
腰掛けている羽毛布団が引き寄せられ、思わず腰を上げる。様子を伺うと、いじけた様に顔を埋めていた。休日最終日であるから楽しい事をしたいと言う気持ちも分からなくは無いが安静第一。
「皆……痛かったら、気持ち悪くなったら言うんだよ。って言ってくれるけど、なんか……まだ大丈夫って思ってて、何時も何処かを彷徨っちゃう。痛いと思うと、気持ち悪いと感じると、どんどん悪化して、枯れちゃうから、思わないようにしてた。そしたら、もう分からなくなっちゃった」
「……その結果がこれだろ」
自分の痛みに余りにも鈍感。正常と異常の境目が物凄く曖昧。それが良い事だと思っている奴に言ってやりたい。『死ぬぞ』と。
死なない為の制御装置として痛覚が存在しているのに、それが破損したら死ぬまで稼働し続ける。自分の限界まで超えて動き続けて、気が付いた時には故障している。自分じゃ異変に気が付かない。気が付いた時には倒れてる。
「お前見たいな奴が……戦場に真っ先に送られるんだろうな……」
あの人の言葉が分かった気がする。兵士は物言わずにただ戦うだけの存在。死ぬまで動けば最上品。けれども人間はそうじゃないだろ。そこまでして働く必要なんか無いだろ。程々に楽しく生きてこそだろ。だから欠陥品なんだ。人として。
此奴は漸く寝返りを打って、そっと俺の手の甲に自分の手を乗せた。目は灰色だった。
「違うよ。送られてた。見かねた先生が私の上司ぶん殴って、連れ戻してくれた。それから何度かカウンセリング受けて君に会った。暫く離れる事も多くなるからって」
「後悔しているか? 出会ったこと」
口には否定も肯定も無かった。でものっそりと起き上がって、ただ離れ難く無言で抱き締めてきた。……これがお前の答えか。
「寝てろ。馬鹿」
「うい」
彼女
戦地に送り込まれた元剣豪だと良い。
先生と出会った時には、路地裏で日本刀抱えていると嬉しい。
昔は目は死んでた。割とボロボロ。感情も痛覚も鈍ってた。
普通の生活に戻る為、リハビリ中。
主人公
普通の生活を送ってきた普通の子。洞察力高め。
目付きは悪そうだなー。
彼女のイカれた間隔を元に戻す為、延命させる為、先生が合わせた子。助手だと嬉しい。
先生
彼女ちゃんを拾ったカウンセラー。
捨て駒にされていた事を悟って、引き取ってそう。
この子がきっかけだけど、捨て駒にされて生存してた他の子も何人かカウンセリングして、連れてきてそう。
如何せん、この子が一番やべえ奴だったので、特例として主人公を宛がった。
とあるカウンセラーと酷似している。
なんと言うか、痛覚遮断のアンチテーゼな物語と言いますか、対になる小説がこれだと思ってます。
前にもお話した通り、逃げ道塞げば強くはなります。
(前を向くのはただの強がり でしたね)
そりゃもう、戦場で殴り合う兵士の如く。
でもそれしたら突然死するので、絶対止めましょうね。
我慢しなきゃ行けない時は、自己暗示。
(注射とか注射とか手術とか)
逃げられる時には、感覚あるうちに逃げましょう。